第八話 大丈夫なのかこれ!?
「――うーん、なーんか違うような……」
違うようなっていうか――
「――これ○ッチの服装じゃないすか!?」
「あー! それ言っちゃうフツー!?」
普通じゃないから! 何でこんな胸を強調するようなむっちりシャツにお尻が見えそうなくらいヤバ目のローライズを着なくちゃいけないの!?
「とにかくこれ身体が締め付けられるみたいできついんで別のやつでお願いします!」
「えー、これ結構可愛いのにー」
アバンギャルドなのはあまり好きじゃないっす……。
「じゃあマコちゃんは一体どういう服装が良いの?」
「どういうって……動きやすいならジャージでもいいんですけど――」
「それは私が許さないから!」
えぇー……。
「と、取りあえずあたし一人で探しに行ってもいいかな……?」
「大丈夫? 変な人に絡まれたらすぐに大声で助けを呼ぶんだよ?」
澄田さんはこっちの顔をしっかりと見つめて、まるで小さな子供に言い聞かせるように俺にそう注意してくる。
それにしても年が一つ下なだけでこれだけ心配されるのか……本当にお母さんみたいだ。緋山さんが言うのも分かる気がする。
「大丈夫ですって。いざという時は能力使えば何とかなりますから」
そう言って俺は澄田さんをおいて自分の足で服を探すことにした。
◆◆◆
独りで服を探し始めてから、十分ぐらいたったころ。
「うーん、このパーカーとかいいかも……」
黒だし地味だし、ちょっとぶかぶか気味だからおっぱいも目立たないし……。
「よし……後は――」
先に言い訳させてもらう。俺は痴女じゃない。断じて違う。
「――ス、スカートはいてみよっかな……」
繰り返す。断じて痴女では無い。
「え、えーと、取りあえずパンツ見えたらいやだからロングスカートかなー……?」
独りで言い訳しながら、俺はスカートのあるコーナーへと向かう。
そしてそこで見たものは――
「――やっべぇ。すっごい」
スカート見ているだけなのに興奮している自分がいる。あれ? 俺おかしくなってる? 長い間女の子になっているから?
そんな訳無いか。ただ俺の性癖が性転換したことによってこじれて――
「――こじれてない! しっかりしろ榊!」
俺は自分の両頬を叩いて正気を取り戻そうとした。
俺は女の子だ。だが女の子が好きだ。ん!? それがおかしくしているのか!?
「と、とにかくスカートを選ぼう……」
多分傍から見たら顔を真っ赤にした女の子がスカートに恐るおそる手を伸ばすとかいう訳の分からない光景が広がっているのかもしれない。
「……上が黒のパーカーだから、下はどうしよう……色の合わせ方とか分かんないし……」
かといって澄田さんのとこいったら着せ替え人形にされちゃうし……。
「……とりあえず、地味な色なら何とか」
この際髪の毛がピンクとかそういうのは無しで。
「……よし! これならいける!」
そして俺が手に取ったのは、一着のスカート。
これなら多分、大丈夫だろう。
そう思いながら俺は一人、試着室の中へとビビりながら入っていった。