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EX3話 Stormghost

「――よう、ここで凍っていたか」


 緋山励二は氷漬けにされた宿敵の前で、ただ一人立っていた。


「こうしてくたばってる間は、てめぇも俺もまだまだだってことだな」


 相手の方がどう思っているかは現時点では分からないものの、少なくとも既に緋山の内からは敵対心というものはほぼ消え去っていた。代わりにライバルに対する対抗心というべきものであろうか、殺意や憎しみとは違うものが胸中に湧き上がっている。


「……まずは溶かして、と」


 緋山は『冷血クルエル』の足元からマグマを発生させ、徐々に徐々に解ける筈の無い氷を溶かしていく。


「……そろそろか」


 氷が薄くなっていく中、緋山はマグマの発生を止めて相手と距離を取り始める。

 凄まじい水蒸気が立ち昇るが、それも外界の冷気によって雲となり、雨となって降り注ぐ。


「おい、もう自力で出られる筈だろ? さっさと出てこいよ」

「…………」


 大量の水蒸気の中をかき分けて、一つの人影が姿を現す。


「…………」

「どうした? またその仮面を引き剥がすところからやり直しか?」

「…………」

「チッ、何か言えってんだよ」


 『冷血』は無表情のまま、腰元の柄を抜いて、刀を生成し始める。


「……ああ、わりぃわりぃ。分かっていなかったのは俺の方だったわ」


 一度打ち負かした敵が、わざわざ自分を解凍してまで目の前に現れた。

 ならば語るに及ばず。もはや二人の間には言葉など不要だった。


「一応聞いておこう。てめぇの、名前の方だ」

「…………」


 相変わらず無言の『冷血』に対して、緋山は諦めたかのようにため息を漏らして戦う姿勢を見せて返す。


「……ゲオルグ」

「あぁ?」


 すると意外にも緋山の問いかけに答えが返ってくる。


「ゲオルグ=イェーガー……」

「それがてめぇの名か」

「…………」


 ゲオルグはそれ以上何も言う事もなく、ただ静かに氷の刃を構えている。


「……じゃあゲオルグ、俺達の喧嘩を始めようか」


 ――緋山励二はこの時初めて、自分の身体に熔岩を宿らせることができた。

 これでこの編のEX話は終わりです。後は一回ちょっとした一発ネタの番外編を挟んで次の編に移る予定です。ここまで読んでいただきありがとうございます。

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