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第七話 これなんて羞恥プレイ?

 俺達は今、都市の中心部に位置する第三区画――いわゆる商業地区に足を運んでいた。そしてその中でも、特に品揃えがいいと評判の巨大ショッピングモールにいる。そしてショッピングモールにもランクがあるらしく、ここは集客力がAランクあるのだとか。


「ねぇねぇ励二、この服どう?」


 そう言って澄田さんが試着室のカーテンを開けるとパステルカラーのカーディガンにスカートの組み合わせがそこにある。カーテンの向こうには確かに、女子力の塊のような、かといって過度な媚びは見えない絶妙なバランスを持った少女がいる。

 それに対して緋山さんはというと――


「ん? 良いんじゃねぇの?」

「もぉー! 適当ばっか言って!」

「お前の場合そんなに気にする必要ねぇだろ。何でも似合うって意味だよ」


 あーあ、あんなにのろけちゃってまあ。まあこっちはこっちでのんびりと試着できるからいいかな――


「マコさん!」

「な、なんでしょう……?」


 違った。栖原がさっきから「女の子らしい服装を教えてください!」って詰め寄ってきているのを忘れていたわ。


「どうでしょう!? このスカート、ふりふりしていて可愛くないですか!?」


 さっきまでのズボンとは違ってふりふりのスカートのおかげか、確かに女子っぽくて女装男子っぽくて……ごめん、やっぱ人には似合う似合わないがあると思うの。


「う、うーん、もうちょっとスタイリッシュな感じがいいかなーなんて……具体的にはジーンズとか」

「ぐすっ、どうせボクなんて男物しか似合わないですよ……」

「いやいやいや! そういう意味じゃなくてね!」


 もう少しほら、スカートにするにしても無駄な装飾が無いシンプルな奴を選ぶとかさ!


「ふっふーん、やっぱり男女は男女でしたね!」


 そう言って澄田さんの隣の試着室から現れたのは……どこの映画スターですか?


「時代はセレブです! 服も高いものを着こなせれる人こそがおしゃれなのです! そして緋山のカードさえあれば、こんな高い服でも――」

「今すぐ戻して来い」

「えぇっ!? どうしてですか!?」

「似合わないから」


 まあ確かにその年齢でサングラスに毛皮のコートは似合わないかな……。


「……ちぇー……」


 守矢はそう言って頬を膨らませながらも、カーテンを再び閉じる。緋山さんはいつものこととでも言わんばかりに吐息を漏らし、呆れた表情をカーテンの方へと向けている。


「……で? 肝心のお前はどうするんだ?」

「ど、どうするって、俺ですか?」

「……ちょっと来い」


 そう言って緋山さんは俺の首に腕を回し、他の皆に背を向けさせるような形でしかめっ顔を近づける。


「な、なんですか?」

「お前、一応今のところ女だよな?」

「そうですけど」

「だったら同じ男の俺に対しても女っぽく振る舞っとけ。適当でいいから。俺に対して素になり過ぎだ」


 だってそりゃこの場で唯一の男の人だし、俺だって素で話しかけちゃうよ。


「分かった……わ」

「……女言葉は女言葉で気持ち悪いな」


 じゃあどうしろってんだっつーの!


「……おい、詩乃」

「なーにー?」

「こいつに……榊に似合う服を選んでやれよ」

「あっ! そういえばそうだったね!」


 とりあえず澄田さんのセンスなら任せられそう。

 そう思って意気揚々と澄田さんの後を追って店の奥へと足を踏み入れたが、俺はこの時想像だにしていなかった問題に直面することとなる。



          ◆◆◆



「――これどうやってつけるんですか?」

「あぁっ!! そういえば元々男の子だったからブラの付け方わかんないんだったよね!」


 別に女性用衣服売り場で大声で言わなくてもいいんですけど!? 周りから奇異の目で見られかねないからやめてくださいよ!


「とりあえず、試着室で教えるから……今は女の子だし、大丈夫だよね?」

「……何がです?」

「私がきみの裸を見てもってこと」


 どっちかっていうと逆に「詩乃に汚ぇ裸を見せつけやがった」とかいって緋山さんが俺をぶっ殺しに来そうな気がしなくもないんですけど……。


「別に、俺は大丈夫ですけど……男なら下さえ見られなければ――」

「でも、今は下もついていないよね?」


 あれー? この人意外とぶっこんでくるぞー?


「パンツの穿き方ぐらいは分かるだろうし、問題はブラだけだからとにかく試着室にいこ!」


 なんかもう嫌な予感しかしないんですけど!?



          ◆◆◆



「――試着室って二人で入ると狭いんだね」


 そりゃ元々は一人だけで着替えることを想定されていますから……。


「じゃあ、早速脱いでみよっか」


 俺は澄田さんに言われるがままに、自分の制服の上着に手をかける。


「そうそう、ボタンを外して……こうして改めて見てみると、上学ジョーガクの制服って意外とおしゃれだよねー」


 そうこう言われている内に下着一丁となってしまった。な、なんか新手のマニアックなプレイみたいになっている気がする……。


「えっ? スポーツブラつけているの? 窮屈にならない?」


 多分それ俺が男の時にボクサーパンツつけているのが原因かと。下着まで想像していなかったけど、衣服ワンセットで反転させたらこんなことになるのね。


「とりあえずホックを外して……これは後ろについているから、次から自分で外してね」


 なんかすっげーヤバいコトしている気分。ってかブラが外れたせいで一気に重力に従ってあわわわ――


「? どうして両手で隠しているの?」

「一応、元男としての恥じらいくらいは持たせてください……」


 澄田さんは首を傾げながらも、俺のブラジャーをじろじろと見ては大きさを確認している。


「マコちゃんって私と同じでカップ数大きいから、オシャレしようにも下着の種類が減っちゃうんだよねー」

「別におしゃれには気を使っていないんで、取りあえず着られる物を――」

「ダメだよマコちゃん!」


 急に迫真の表情をした澄田さんの顔が間近に迫る。って顔近っ!


「もし好きな人ができたらどうするの!? マコちゃんいざという時にげんなりされるよ!」

「いやいや俺元々は男ですし……」

「もしかしたらがあるかもよ!」


 ないです。

 とりあえずそのまま完璧に澄田さんのペースにのせられた状態で、俺の衣服探しが始まる事となった。

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