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第二十四話 ほぼイキかけました(二つの意味で)

「――さて、どうしてあげましょうか」


 なんか自信満々に某ガキ大将がするような拳を手で包んでぐりぐりとやる動作をしているけど、パキパキ音が一切なっていないぞ守矢。


「カンフースターが暗器を使う……なんてかっこいいんだ!」


 そのカッコよさの前に死ぬ寸前だったことの方に何か感想を持とうか。


「というか、ツッコみがあたし一人なんですけど! 澄田さんは――」

「あっ、ゴメン! 日向さんからお使いのメールが来ていたからつい……」

「いやどんだけリラックスしているんですかって話ですよ! 仮にもあたし達の目の前にいるのは殺し屋ですよ!?」


 確かにあたしがいる限り皆が死ぬことはほぼないけどさ、もうちょっと緊張感を持ってもらわないとこっちが参っちゃうんですけど。


「……どうやらこの場で一番ワタシをリスペクトしてくれているのはおまえだけのようだね」

「この場で一番強いのもあたしだけどね」


 花郎は大きなため息をひとつつくと、栖原との組手の時とは打って変わって先ほどまでが遊びだったと言わんばかりに鋭い殺気を放ち始める。


「スバラアカネ……確かに格闘試合だったら負けを認めるレベルネ……くる歳には勝てないってトコロもあるけど、正直格闘センスだけならワタシに勝るかもネ」


 先ほど殺意を込めた割には異様に時間稼ぎをするかのようなゆっくりとした花郎の喋り方に、俺は違和感を覚えた。

 視線の送り方からして、恐らく栖原が狙いと見た。


「……念の為に仕込んでおくか」


 全員死ぬところを死なないように……っと。けどこれじゃ痛いのは免れないんだよね。死にはしないけどのた打ち回る事になりそうだし。

 そういえば、苦痛を反転させたらどうなる――


「……あっ!? 榊!」

「へっ?」

「もう遅いネ!!」


 俺に向かって、あらゆる角度から光の反射が襲い掛かる。

 ここになってようやく分かった。どうして花郎が袖の長い中華服を着ているか。それは手首のスナップによるトラップワイヤーの投擲を見られないためだという事に。

 そしてこの場において一番強いと宣言した俺を最初にダウンさせるべく、そして俺にばれないようにわざと栖原のみに視線を送って俺の方に色々と仕掛けを仕込んでいたという訳か!


「食べられないけどミンチの出来上がりネ!」


 そうしてあっという間に俺の手足は糸に絡め取られ、中空で磔にされようとしている。

 これはまずい!


「マコちゃん!」

「榊!」

「マコさん!」

习惯了散了(バラバラになれ)!!」

「だから今縛りあげるのはマジでやめてぇええええええ!!」


 ――次の瞬間、俺の嬌声ひめいが第六区画に響き渡った……のかもしれない。



          ◆◆◆



「――なっ!? どういうことネ!? 何故バラバラにならない!?」


 花郎の予測だと俺は今頃ミンチの予定だったらしい。だが現実は俺の身体にワイヤーが食い込むんで宙吊りになるだけで、一向に死ぬ気配がしない。


「フ、フフ……」

「それより榊、今変な声が出ませんでしたか?」


 ……はて? 何のことやら。記憶にございません。


「マコちゃん大丈夫!? 顔が真っ赤だし息も荒いよ!?」


 大丈夫です。大丈夫ですから花郎があっけにとられている今のうちに早く倒して、早く俺を降ろしてください。このままだといつまでも公開処刑状態が続くことになるんですけど。


「おのれぇー! 榊に何をしたんですか!?」


 守矢は熱くならなくていいから! むしろ熱いのはコッチの方だから!


「こうなったら直接仕留めるネ!」


 死なないとはいえ動けなくなった俺に直接止めを刺すべく、花郎が俺に向かって接近してくる。だが今の俺にそういう痛い事をされたら困る!


「――解放せよ(リベレイト)ッ!!」


 全身体能力を反転、一般人の身体能力から超人的な力へ!!

 俺は絡まっていた糸を細腕で引き千切り、そしてそのまま逆に相手の方へと突進した。


「何ッ!?」

「ちょーっと二人っきりでお話でもしよっかぁ!?」


 俺はそのままダッシュで花郎の襟首を掴み、そのままその場から走り去っていく。


「なっ!? どこにそんな、力が――」


 最後まで物を言わせる前に、俺は有無を言わさず花郎をビルの壁面へと叩きつける。

 作用反作用。本来ならビルに叩きつけた時の衝撃が俺にも返ってくるはずだが、それも反転させて花郎の肉体へと伝達させる。つまり単純な破壊力は二倍となる。


「ごはぁっ!?」

「とりあえず寝てなよ、あんた」


 その場にがっくりとうなだれる花郎に背を向けて、俺はその場を去っていく。


「……あんたが悪いんだよ。俺がまだ試行錯誤している時に攻撃を仕掛けてくるなんて」


 全く……苦痛を反転させたら快楽になるなんて、考えなければよかった。

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