第二十一話 第一村人ならぬ第一警備員発見!
第六区画は別名学生の街と呼ばれるほどに、学校とそれに付随する施設や学生狙いの店舗が立ち並ぶ区画である。
だが学生だけの区画というだけあって警備レベルも他より高めで、他の区画と隣接する場所には必ず検問所が置かれており、そこでは学生証もしくは許可証を提示しなければ決して通ることはできない。
もちろん能力者の襲撃も加味して、最低限Bランクの者の手からは守れるようにと均衡警備隊の中でも銃を扱える者が主にここの検問所の警備担当になっているとの話だ。
「そんなワケで普通なら入れないはずなんだけど」
俺はニヤニヤとしながらSランクを示す榊マコのランクカードを検問所へと提出する。
「Sランクの連れなら許可証とか関係なしに入れるでしょ? しかもおまけにちゃんと上学の学生証もっているんだし、友達の一人くらい――」
「ダメだ」
えっ、ちょ――
「聞いていなかったのか? 先ほど内部に侵入者が入っていると区画内の学校生徒には通達が来ているはずだ」
「何の?」
「Sランククラスの戦いが行われているわけじゃないが、ここも直に封鎖される。侵入者はどうやら力帝都市外部から来ているようで、市長からの指示があってここで押さえるとのことだ」
「どうやって押さえるんですか?」
澄田さんの言う通りで、均衡警備隊がするくらいならどうせ押さえるならSランクの俺がやった方がマシに思えなくもない。
「そこは心配ない。Aランクの『能力者』に協力をこぎつけられたからにはもう安心だ」
「『能力者』? Aランクの能力者に頼るくらいならSランクに――」
「馬鹿を言うな。Sランクはそれこそ協力を得るなど不可能な問題だ。奴等は常にどこにいるのか分からないからな。例外としてあの『粉化』くらいだろうが、あいにく連絡がつかない状況だ。だから今は能力そのままが検体名の『能力者』という、『全ての能力の原点』と言われる青年に任せるしかない状況だ」
な、なんかすっげーカッコいい二つ名を持っていらっしゃいますね……とまあそれは置いておいて。
「あのさぁ、だったら聞くけど目の前でランクカードを提示している人のランクを見てどうとも思わないわけ?」
「だから、いくらSランクであろうが――Sランク!?」
一周回って何だよこのノリ突っ込みっぷりは。本当に大丈夫なのか?
俺は半ばあきれながらも、侵入者退治に手を貸そうとしていることを伝える。
「Sランクのあたしなら、侵入者なんてあっという間に捕まえられるでしょ?」
「確かにそうかもしれないな……よし、分かった。『能力者』とはどう連絡をつければいいんだ?」
「邪魔だから撤退しといてってあたしが言ってたことにしていいよ」
「しかし、Aランクの者も増援としていた方がいいのではないか?」
「増援なら、あたしの後ろにいるじゃん」
そう言ってあたしが親指で後ろを指さすと、そこに澄田さんと守矢、そして栖原が立っている。
「あたしが最も信頼できるメンツを連れてきたから、事態を納めるのに十分だと思うけど」
「そうか、分かった。だが気をつけた方がいい。外部の者には力帝都市のルールなど通用しないからな」
それはもう今までの襲撃で十二分に分かっているのでご安心を。それよりも敵がどれくらいなのかを一応確認しておいた方がよさそう。
「それより敵の情報があったら教えてくれない? あたしも一回見た事があるんだけど、念の為に」
「Sランクならば我々でもアクセスできない情報を持っていそうなものだが……まあいい。区画内で確認できた敵は全部で四人。いずれも殺しの手練れのようで、均衡警備隊内でも被害が出てきている。そして、そいつだけは俺も視認できた」
「どんな奴?」
俺は薄々嫌な予感がしながらも、念の為にそいつの特徴を聞いておくことにした。
「明らかにこの場に合わないメイド服の女で、両手に馬鹿でかい散弾銃を一挺ずつ所持していた。幸い死人は出なかったが、散弾銃の炸裂範囲にかすっただけで脇腹を抉られた隊員がいる。それだけ奴のもっている銃の殺傷能力は高いってことだ」
俺の予想は見事に的中した。俺は早速ラウラと遭遇するために、ラウラがどこで発見されたかなど詳しい情報を聞き出すことにした。
「そいつがどっち方面にいったかとか分かる?」
「奴を知っているのか?」
「えっ、榊の知り合いなんですか? もしかして急用ってそういう事だったんですか?」
「まあ、知っているっていうより……ちょっとね」
「……もしかして元彼を傷つけられた因縁の相手だったりとか?」
「そもそも元彼いませんけど」
とまあ適当にはぐらかせられたところで、俺は改めて警備員に居場所を聞き出す。
すると上等学院高校近くにある憩いの広場にて、隊を揃えていたところで襲撃にあったと聞きだすことができたので、俺達は急いでそこへと向かう事に。
「――それより殺しの手練れと聞いて、少し安心しました」
「どうして?」
守矢は今回の騒動に自信ありといった様子で鼻をフフンと鳴らし、右腕をぶんぶんと振り回す。
「言っておきますが、うち等はそういう輩も取り仕切っている姉妹ですよ? 今更外部の殺し屋程度でうちらを止められるはずがありません!」