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EX1話 新たな刺客

この編も序盤を過ぎて来たので、そろそろ本格的に動かします。その前に榊側の視点から一話だけ敵側の視点としてEX話を挟ませてもらいます。(三人称視点です)

 緋山励二、澄田詩乃、そして――


「――榊マコ。これが今回の殺害目標ターゲットだ」


 眼鏡の奥で笑みを浮かべながら、カルロスは三人の人影の前で写真を並べる。

 力帝都市の何処か―――暗い一室に置かれた円卓に提示された写真は全部で三枚。いずれも未成年の少年少女の写真だった。


「これで全部ネ? ちと物足りないヨ。それに全員餓鬼(ガキ)、容易い仕事ネ」


 カルロスの提示した写真に最初に口を開いたのは。手元が隠れるほどに長い袖と口元を隠すようにキッチリと上まで閉められたチャイナ服を着込んだ少し小柄な男だった。


「依頼に対して異論を唱えるな花郎ファラン。自分の目の前で人が一人消されたのをもう忘れたのか?」

「殺し屋が殺されるなんて冗談きついネ。あいつは弱かった、それだけヨ」


 小柄な男の名前を呼んで忠告を促しているのは、OLスーツに身を包んだ金髪の女性。そして彼女の腰元にはホルスターには彼の相棒と呼べるリボルバーが息をひそめている。

 名前はエルザ・メルディ。先に力帝都市に来ていたラウラ・ケイとは顔見知りである。

 そして最後の一人はというと――


「あの胡散臭い魔人とかいう奴曰く、力帝都市に住む側の助っ人らしいが……ああも寡黙だと何も話せやしないな」

「全くネ。得物を見せろ言っても柄だけの日本刀に、それを納めるにはただ長ったらしいだけの鞘を見せられたら、こっちが困惑するネ」

「…………」


 花郎の視線の先には、ロングコートにフード目深にかぶった一人の男の姿が映っていた。

 男はひたすらに寡黙だった。壁際にもたれかかって座り込むだけで、ただひたすらに寡黙で、 そしてひたすらにべったりと背筋を凍らせるような陰鬱な殺気を辺りにまき散らしていた。


「ゲオルグ=イェーガー……こっちじゃ『冷血クルエル』という通り名で怖れられているらしい」

「狂える……ネ。全然狂ってないヨ」

「そういう意味じゃない。冷徹とか冷血という意味だ」

「なんだ、そうカ。日本語は難しいネ。どうせなら北京語マンダリンにするべきだと思うケド」


 クスクスと笑いながら花郎は日課ともいえる瞑想をするために、一人この部屋を去ろうとする。


「どこへ行く!?」

「ちょっとお昼寝するだけネ。どうせ明日にはサクッと殺して中国帰ル。それにしても力ある者が集う都市、力帝都市……噂話は聞いていたから少しは楽しみにしていたんだけド、この分だと退屈して終わりそうだネ」


 花郎が去ろうとすると、それまで大人しく座っていたゲオルグが静かに立ち上がる。


「ン?」

「ちょっと待て! お前までどこに行く?」

「…………」


 ゲオルグが部屋のドアに手をかけたところでエルザが声をかける。するとゲオルグは有無を言わさず、静かに腰元の刀の柄に手をかける。

「……おい、一体何をし――」

「――ッ!」


 振り向きざまの居合。そして抜かれた刃の無い筈の刀にはうっすらとした薄氷の刃が模られており、その長い刀身の切っ先をエルザの喉元へと向けている。


「っ……邪魔するなってことかよ……」

「…………」


 ゲオルグが何も答える事無く刃を目の前で砕くと、地面に氷の欠片が突き刺さる。

 答えを間違えれば、突き刺さっていたのは地面ではなく己の喉元だとでも言いたいのであろうか、ゲオルグはそれ以上は何もせずまたも刃の無くなった刀を腰元へと納刀し、静かにその場を立ち去る。


「……カルロスの旦那ァ! こんなのでまとまりつくのかよ!」


 エルザは花郎とゲオルグの身勝手ぶりにいら立ちを隠せずにいたが、カルロスとしてはむしろ上々といった様子である。


「外の世界で『最強の殺し屋』と言われる花郎と、力帝都市において氷結最強と謳われるSランク、ゲオルグ=イェーガー……両者が揃ったうえで、更に私にはこれがある」


 カルロスはそう言って手元のスーツケースを開き、一つの注射器を取り出す。


「この魔人から貰った黒血こくけつさえあれば、我々に勝てる者など存在しない……!」

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