第十四話 仲直り?
「――まったく、とんでもないことになるとはねぇ」
「…………」
とにかく一息つくためにいつものねこやまで来たんだけど……あれー? 俺の独り言みたいになってるぞー? ってか独り言でもいいんだけど。
今現在、俺と詩乃さんと向かい合うようにして、守矢と栖原はソファに座っている。守矢と栖原はあれ以来テンション駄々下がりだし、澄田さんに至ってはあれ以降口を開かなくなっちゃったし。今もこうして微妙な距離感が出来ちゃっているしで、まったくあの魔人が出てくるとろくなことにならない。
そうして俺の独り言がむなしく流れていく中、澄田さんはようやく口を開く。
「……ごめん、私もう帰るね」
「えっ?」
「? どうかしましたんですか?」
あー、なんか気まずいよね。今回巻き込まれた犯人が指名して来たのが自分で、しかもその後の惨劇を引き起こした魔人の知り合いだって知られちゃったワケだし。まあ俺としてはそんなことで気を使う必要はないと思うけど。
……だいぶ感覚が一般人離れして麻痺してきていることは無しで。
「茜ちゃんも、ごめんね? 私の知り合いに、実はああいう人もいるんだ」
百歩譲って守矢は魔人を知っていたとして、まったく知らない人間がいきなりあんな惨殺ショーをしでかした人と知り合いでしたーなんて普通ドン引きするよなぁ。
「……正直に言わせてもらいます。ボクはあの魔人とかいう人は嫌いです」
「…………うん」
あっ、まずい。これ仲たがいするフラグじゃない? 俺がなんとかするべき? でも元々そういうの出来ないんですけど俺!? どうする!?
アイスココアのストロー片手におろおろし始める俺。そうこうしている間にも、栖原は厳しい顔つきで澄田さんに問いをつきつける。
「詩乃さんはそういう事をしないんですよね?」
「えーと、その辺にしておこう――」
「私が、そんなことできる訳無いじゃない!」
俺の制止なんて無かったようです。澄田さんは栖原の問いにだけは、キッチリと答えを返していた。
「そうですか……だったら、ちょこっとだけ安心しました」
俺の心配をよそにして、栖原は澄田さんの答えにニッコリと笑うと拳を前に突き出して更にこう言った。
「もし詩乃さんが悪い人だったら、僕がぶっ飛ばして更生させてやる! って思っていましたよ!」
「……クスッ、そうだね」
「あっ、でもあの魔人さんとはあまり付き合わない方がいいですよ。いずれ本当にヤバい事に巻き込まれるってこの栖原レーダーが反応していますから!」
残念ながらラグナロクの件が終わってから早速厄介ごとに巻き込まれていますー、なんて言える雰囲気じゃないですね……。
「栖原の言う通り、詩乃さんは良い人です! 詩乃さんはただ笑っていればいいんです! 悩んでいるなんて詩乃さんらしくないです!」
守矢もフォローに入っているけどそれ絶妙に澄田さんがニコニコしているだけのアホだということを意味しているようにも思えるぞ。
「ごめん、みんな。ありがとう」
よかったよかった。あれだけのことがあっても栖原はこれからも友達としていてくれるみたいだ。それにしても魔人から澄田さんは友達がいないからって聞いていたけど、原因あんたにありそうな気がしてきたぞ。
俺が勝手に解決したと思っていたところで、全員の視線が俺へと向けられる。
「……えっ、何? あたし何かした?」
「……マコちゃんは、どう思っているの?」
「あー、あたしは別に元々気にしていないんで、今まで通り友達ですよ」
「っ、ありがとうっ!」
嬉しさのあまり人目をはばからず俺に抱きついてくるが――やばい、おっぱいとおっぱいが押し合って俺的には胸が苦しい。
「……こうしてみると見事にうちら蚊帳の外ですね」
「やっぱり女の子と見られるためには、胸が大きくないといけないのかな……」




