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第八話 まずは勝利!

「即席タッグで行くぞ」

「Sランク二人を相手に勝てる算段でもあるんですかね」

「ほう、まさかSランク二人とは……実績を上げるにはもってこいですね」

「どうでもいい……さっさと終わらせるぞ」


 三者三様ならぬ四者四様といった感じで、俺達は道路を挟んで向かい合って相対する。

 当然ながら俺達Sランクが戦う事になるため、この区画を隔離するために壁が立ち昇り始める。が、ラウラとカルロスはそんな事など初めてだったようで、取り囲む壁の方に注意が行くと共に、これが俺達の力なのかと警戒を強め始める。


「なるほど……こうして行く手を阻むのが貴方達のうちどちらかの力という訳ですか」

「ハッ、聞いたかよ榊。こいつ等分かってねぇぞ」

「聞いて安心しました」


 マクレガーの無知っぷりにホッとした俺。だがそれに苛立ちを覚え、噛みついてきたのはラウラの方だった。


「……どういう意味か説明しろ。雌犬ビッチ

雌犬(ビッチ)ってひどくないですかね?」


 どっちにしろ説明してあげないと先に進まない感じだし、どうせなら知っておいてもいいのか。


「えーと、この都市ではAランク同士かSランクが混じった戦いになるとこうして周りに被害が出ないように隔離されるんすよ」

「……つまり貴様等の能力ではないという事だな」

「そうですね」


 ラウラは納得した様子で改めて散弾銃二挺を持つ手を大きく広げ、独特の構えを取り始める。


「さて……ラウラの方は戦闘態勢に入っているようだが、貴方達二人は一向に戦う気配が見えないようで」


 カルロスは苦笑を漏らしつつこちらがいまだに戦う姿勢すら見せないことに苦言を呈してきたが、俺も緋山さんも戦う際に構えがあるワケなど無い。何故なら――


「お前等今まで身体強化フィジカルチューン型としか戦っていないのかよ」

「ん? なんだいそれは」

「本当に勉強不足ですね」


 今度はこちらが苦笑する番。身体強化フィジカルチューン空間影響エリアエフェクトも知らない力帝都市のド素人に対し、特別にレッスンを施すことになりそうだ。


「この際だから教えておいてやるよ。俺達空間影響(エリアエフェクト)型は――」


 ――構えがなくとも、てめぇの足元からマグマをぶちまけることくらいできるんだよ。


「ッ!? カルロス!!」

「くっ!」


 ――次の瞬間、ラウラとカルロスの足元は一瞬にして焦土と化していた。もちろん緋山さんはノーモーションで能力を発動。相手は足元がいきなり噴火したことに混乱を隠しきれずにいる。


「くっ、事前に調べていたとはいえ、ここまでとは……」

「どうした? さっきみたいに銃で撃ってきたらどうだ」

「ならば、お望みどおり!!」


 カルロスは背中に背負っていたグレネードランチャーに手を伸ばし、その大きな銃口を俺達の方へと向けてくる。


「いくら砂になろうが、爆風でバラバラに吹き飛ばせば意味がない筈!!」


 独特の発射音と共に、一発の榴弾が緋山さんの方へと飛んでいくが――


「そうは問屋がおろさないって」


 俺は即座に間に割って入り、榴弾の飛んでいく方向を反転させる。


「うおっ!?」


 榴弾はカルロスのすぐそばを通り過ぎてゆき、そのまま背後のカフェへと着弾する。


「あー! あそこの喫茶店お気に入りだったのにー!」

「今は戦闘中だ! 榊のミス位で喚くな!」


 いや別に俺がミスして壊したみたいな雰囲気にするのはやめてもらえませんかね。


「マコちゃん気をつけてよね!」

「気をつけるも何もないでしょ……」

「余所見をしていていいのか?」


 俺と澄田さんの間に跳躍して割って入ってきたのはメイド服姿のラウラ・ケイ。大口径の散弾銃を俺と澄田さんの顔面へと向け、そのまま引き金を引こうとしている。


「弾けて死ね」

「それは勘弁」


 銃がジャムっていない状態からジャムった状態へと反転。ラウラがいくら引き金を引こうが銃弾が飛び出る気配はしない。


「何故だ!? メンテナンスしていたはず!」

「じゃあ運が悪かったんじゃない?」


 俺はそのまま追撃を加えようとしたが、ラウラはとっさに機転を利かせたのか、足元に閃光手榴弾フラッシュバンを炸裂させて俺達の視界を奪う。


「こうなったら!」


 俺と澄田さんに向かってくるものの方向を全て反転させる!

 閃光が晴れていく中でサブマシンガンの銃声が響き渡るが、そのうち一発も俺と澄田さんには当たっていない。


「どういう事だ!?」

「あたしについての情報収集は怠けてたって感じ?」


 そのまま俺はラウラの声のする方へと向かい、今度こそ蹴りの一発でもくれてやろうと考えた。

 だが――


「――だったらこれはどうだ!!」


 44口径、リボルバーマグナム。拳銃の中でも最大の殺傷力、破壊力を持った銃の発射口が、俺の眉間へと向けられる。


「今度こそ、死ね」

「無駄だってば」


 俺は少し脅しのつもりでマグナムの弾丸の方向を反転させると共に、本来ならそのままだとラウラにあたるはずの銃弾も当たらない方向に反転をして脅かすことを試してみた。

 俺の仕込みを終えた後に、ラウラは俺の思った通りに銃の引き金を強く引き、そして銃弾を反対の方向へと発射させた。

 だが――


「ぐっ!?」

「あっ!」


 弾丸は確かに当たらない方向――足元へと飛んで行った。だがラウラの予想外の足運びにより弾丸はそれ以降の方向を変える事無くラウラの右足を貫く。


「ぐ、ああぁっ!!」


 ラウラはその場に転げ、大量の血を膝から流す。俺はやってしまったと思いとっさに駆け付けようとしたが、元軍人がその程度の傷で闘争心を折る事はない。


「死ね! 死ねぇ!!」

「あぶなっ!」


 一旦は全ての反転を解除したが、立ち上がる事もできずその場に座り込んでいるラウラはそれを知ってか知らずか闇雲にマグナム銃をぶっ放し続けている。


「ううううあああああぁぁッ!!」


 やべーよさっきより殺気だってて余計危険な状態にしてしまったよ。

 俺と澄田さんはしばらく物陰に隠れるとともに、緋山さんの様子をうかがう。緋山さんはというと、カルロスを生かさず殺さずといったことに苦戦している様子。

 相手は全力で殺しにかかっているというのに、自分は手を抜かねばならないという事に悪戦苦闘しているようだ。


「向こうは頑張っているみたいなんで、あたし達はあたし達でラウラをとっ捕まえ――ってアレ?」


 気づけばラウラは近くで適当に路上駐車されている車を漁り、車を動ける状態へとするために色々といじっている。


「ちょ、待て!」

「悪いがこれ以上は相手にできない。時間だ」

 サブマシンガンを片手にこちらを牽制しつつ、ラウラは懐中時計で時間を確認しながら盗難した車に乗ってその場を去っていく。


「……いっちゃった」

「時間だと? ならば仕方がない」


 カルロスはグレネードランチャーに込めていた弾を今度は全て俺や澄田さんに放ちながら、路地裏へと消えていく。


「――チッ、俺に効かないからって土壇場で狙いを変えやがったか」


 砂から元の人の形を模りながら、緋山さんは悪態をつく。


「今回の戦闘で俺の能力は完全に割れちまった。榊、お前はそこまで派手に能力は使っていないよな」

「バレない程度の反転ぐらいはさせてもらいましたけど」

「ならいいが。それにしてもいきなり撤退を始めたようだが、奴等は何か掴んだとでも言うのか?」


 そういえば時計を気にしていたような……あっ。


「……原因わかりました」


 俺も自分の時計を見て分かった。今は休日の午後三時。そして俺が事前に聞いていた情報によれば――


「――ラウラのやつ、律儀にあたしが頼んだ買い物のお願いを覚えていたみたいです」

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