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EX1話 その後の女子会

ここから二つ三つくらい後日談と次の編への導入を兼ねてEX話を書いていきます。EX話は全て一人称ではなく三人称視点での文章となります。

 全てを終えた後の、ある日の出来事。


「今日は珍しく遅かったね」

「よっしゃ! ドベの人が奢るルールを今ここで発動します!!」

「それって明らかにカードの特性を知ってて言っているよね?」


 この日、第八区画のねこやというカフェにて、いつものメンバーが勢ぞろいする。


「取り調べ大変だったね、マコちゃん」

「それほどでもなかったですけどね」


 ラグナロクが引き起こした事件からちょうど一週間。あの一件で力帝都市は一時騒然としたにもかかわらず、榊マコは面倒事に絡まれた程度だと言わんばかりの態度で席に座ろうとしていた。


「さて今回は榊の奢りらしいですし、メニューの端から端まで頼みやすぜ!」

「要ちゃん、そんなことしちゃダメだよ」

「どうせ榊は使わないですし、うち等で使ってあげるに限ります! それにあの一件以来どうなっているのかを聞くのに時間が結構かかりそうですし!」


 確かに均衡警備隊バランサーだけでは取り押さえられなかった裏の組織を取り押さえた事は、今でもテレビをにぎわす話題となっている。

 だがそこに真実などほんの少ししか語られていないことを、この都市に住む大多数の人間は知ることはないだろう。

 テレビでは件のカプセルと絡めた報道だが、ラグナロクを製薬会社と偽った上で能力を得ることが出来るカプセルが実は大変危険なものだったと報道している。カプセルについては大方間違っていないが、ラグナロクを単なる製薬会社で片づけるのはいささかおかしな話である。

 全ての者に力をもたらす、偽りの均衡を望む組織。一歩間違えれば、さらなる混沌が待ち受けていたであろう。

 そしてオルテガという一人の魔導師が自らの掲げる夢に酔いしれて歪んだ道を歩み、そして破滅したということは、誰にも知られることはないだろう。


「マスコミでは語られない真実! それを今うちらは耳にすることができるんですからね! 期待に胸が高まります!」

「とは言ってもあそこで起きたことをそのまま整理しただけなんだけどね」


 この一件についての最終的な情報クリアランスランクはA。つまり榊が最初に聞いていたランクを維持する重要な情報となる。

 そして榊はというとそんな重要な情報を、榊喫茶店での雑談のネタとして話そうとしているのだ。


「そもそもラグナロクって何ですか? 単なる製薬会社じゃないってことは直感で分かりますけど」

「あれは製薬会社というより、研究機関の方が近いと思う。現にあたしと緋山さん達とで行った時にはDランクの人達を使った人体実験を見せられたし」

「えっ!? ……思っていたよりへヴィなお話始まりましたね……」


 興味本位で聞いていた要の口が絶句により一瞬紡がれる。しかし榊はまだ序の口だと言わんばかりに平然とした様子で更にラグナロクの首謀者であるオルテガのことについて話を続ける。


「表向けには製薬会社の行き過ぎた実験とか言われているけど、行き過ぎってレベルじゃないんだよね。小さい子二人を実験台にしたりしていたし。それに目的は商品化とか言っていたみたいだけどもっと規模というか野望が凄かったよ。具体的には何も分かんなかったけど」

「そうだったんだ……ボク、今回の戦いで自信なくなっちゃった」


 元々Cランクで、かつ何の能力も持っていない栖原は、今回の戦いを見てCランクという自分の弱さを思い知る事に。


「茜ちゃん、別に私達は強い人で集まろうって会じゃないんだし気にしなくていいよー」

「でも、皆に比べたら……要だってBランクなんでしょ?」

「そりゃそうですよ! 無能力者と一緒にしないでください!」


 要は自信満々にそういった時、榊は「あっ、そうか。だからそうなるのか」と小さく呟いた。


「マコちゃん? 今何か言わなかった?」

「いや……今の要みたいに、強いのをわざわざ誇示するからラグナロクみたいな組織ができたんだなって」

「どういう意味ですか?」


 要の無意識の言葉の中に、隠された答えがある。榊は更に言葉を続ける。


「今みたいに言われたら、栖原としては何とかして見返してやろうとか思ったりするじゃん?」

「んー、まあそうなるね」

「だからそこで出てくるのがカプセルだったり、Dランクの一般人を改造する計画だったりするってこと」

「あっ……」


 要はようやく自分が言ったことを理解したのか、しばらく黙りこくった後に、静かに栖原にごめんなさい、と小さく謝った。


「確かにそのままだとラグナロクみたいな組織が出来ちゃうけど、今の要ちゃんみたいにすぐに謝ったりできるならそんな事は起きないと思うなぁ」

「世界中がそうだったらいいんですけどね」


 榊はそう言って注文しておいたメロンソーダに口をつけ、中身を全て飲み干す。


「あれ? 榊飲み干すのがやけに早くないですか――」

「見つけたぞ榊マコ!!」

「今日こそはぶっ飛ばしてやるから覚悟しとけッ!!」


 そしてあの一件で明るみに出たのは何もラグナロクやカプセルだけでは無い。


「……さかきー、またファンが来ましたよー」

「ファンって言い方やめて。鳥肌立つから」

「いってらっしゃーいマコちゃん」


 謎の美少女からSランクの実力者、榊マコへと見事にばらされてしまった今では、こうして向かってくる輩を片っ端から倒す羽目になっている。


「はぁ、いつになったら諦めるような雰囲気になるのやら」


 事件が起きる前、あの緋山励二の様に平穏だった日々を取り戻したいと思いつつ、店の外へと出ていく榊マコであった。

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