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第三十七話 まさかの……?

「能力をエサに……ああ、だからさっきから大きくなっていっているんですね」

「察しがいいようでなにより。下で暴れまわっているダストの分でも回収しようと思っていましたら、まさか緋山励二くんに……貴方のような強大な能力者の力をおこぼれに授かれるとは」


 もしかして俺達の力自体が奪われているってこと? それってちょっとっていうかかなり嫌なんだが。


「能力の発動による事象の発生。その一部をエネルギーとして頂くのがこの『パンドラ』の特性。つまり貴方達が能力を使ってこの世界に何かしらの影響を与えれば与えるほど、このパンドラはより強大なものとなれるのですよ! ……とはいってもまだ成長段階なのでこの第三区画からしかエネルギーは吸収できませんが、それでも十分です」

「……それはよかった」


 能力自体は遠慮なく使えるって事ね。


「じゃあまずは小手調べ」


 反転――重力から斥力。


「んんっ!?」


 俺は指をパチンと鳴らすとオルテガにかかる重力を斥力へと変え、地球外へと吹き飛ばそうとした。

 だがオルテガはすぐに対応したようで、魔法でもって宙に浮いた状態へと移行する。


「まさか重力を操ってくるとは……」

「別に操るのは重力だけじゃないんで」


 あれからも、反転するのに仕えそうなものはいっぱい調べてきた。

 それで知った事の一つとして、宇宙から見れば今の地球上の温度は低温に当たるらしいということ。まあ、五千度六千度が当たり前の世界じゃ当然か。


「つまりオルテガの周囲の気温を反転――超高温に」

「ッ!?」


 オルテガが一瞬にして炎に包まれる。いきなり五千度の世界に突っ込まれれば、並大抵の衣服は火をつけなくとも自ら自然発火を起こす。


「これで終わり――」

「中々どうして、面白いことをしますね。これで魔法使いではない、と?」

「……うそ? 今のでノーダメ?」


 いや、ノーダメージでは無い。


「――よもや警戒するべきは緋山励二よりも、こちらの女性の方でしたか」


 オルテガは全身を守りきった訳では無かった。顔の一部、手の一部――それ以外にも各所に凄惨な火傷の痕を残しながらも、宙へと浮かんでいる。

 そしてその表情に、もはや余裕や友好的な態度などみじんもなかった。


「……すげぇな、榊」

「んー、まあ今だから言えますが、あの魔人から緋山さんのお目付け役負かされていますし」

「ハッ……なら強ぇはずだ……」


 しかしそれにしてもこれでダメなのか。ならばどうしようか……。


「――産めよ増やせよ怨念を。産めよ増やせよ執念を!! ――負現連鎖マイナスパワーチェーンッ!!」

「ッ! 避けろ榊!」

「へっ?」

「もう遅いです!!」


 ニヤリと笑うオルテガの袖から、何本もの禍々しい鎖が伸びる。そしてそれら鎖はまるで意志を持っているかのように俺に向かって真っすぐ飛んできて、手足に絡みつく。


「くっ、何だこれ!?」

「避けろって言った筈だろうが!」

「いやそんな急に言われても……痛たたたっ」


 くっ、殺せ! とは言わないけど地味に体にも巻きつき始めて――って、力が抜けていく……。

 腰砕けになるかのような崩れ落ち方で俺がその場にへたり込むと、緋山さんは悔しそうな視線でオルテガの方を睨みつける。


「何この鎖……急に力が抜けてっ……」

「フフフフフ……悔しいですか? 貴方は今から、何もできずにその場に倒れている緋山励二と同じ道をたどるのです」


 力が抜けるなら、それを反転させればッ!!


「力がみなぎる……ッ!」

「っ! どうして立てるのです!?」

「えっ……教えないけど?」


 俺はニコリと笑い、その場に立ちあがる。そして更に熱エネルギー平衡を反転させ、目の前に熱エネルギーが溜まった球体を生成し始める。


「熱力学の法則、だっけ? 熱平衡で普通ならエネルギーは分散される筈なんだけど、この通り」

「ッ、さっきから何なのですか貴方は!? まさか緋山励二を超える炎熱系の能力を――」

「さぁて、それはどうだか」


 ここでもうひとつ面白い技を思いついちゃった。


「とりあえずこれでも喰らえ!!」

「ッ!」


 オルテガは鎖と繋がっているため、そうそうに回避することはできない。もちろん、この高エネルギー体の球体を真正面から受けることになる。


「ぐはぁっ!?」

「そしてその高熱エネルギー体を――反転」


 球体がオルテガに熱を伝えると同時に温度を反転。

 すると空中に浮かんでいるのは巨大な氷に閉じ込められたオルテガの姿。

 名前を付けるとしたら……鳳仙花みたいに氷が弾ける所から雹仙花ひょうせんかとか……無いか。

 そのまま何も抵抗もなくごとりと屋上に転がる氷塊を見て、俺はようやく全て終わったのだと確信した。


「ふぅ……あの球体どうします? 緋山さん」

「……さぁな。お前がぶっ壊せるならぶっ壊してもいいし、魔人に任せてもいいかもな」

「励二、大丈夫?」

「ああ、少しは回復できた」


 あの球体は状況証拠という事で念の為残しておいたほうがよさそう。今のところエネルギーを吸収するだけって話だし、他のアクションも今のところ見受けられないし。


「後は下にいるカプセル持ちのDランク(バカ)どもと、科方の野郎がどこにいきやがったのか――」

「お呼びですか?」


 その瞬間、俺と緋山さんそして澄田さん達が一斉にして上を向く。そしてそこにいた者とは――


「流石に真正面から戦うのは不利だと思いまして、少しでも体力を消費していただければとオルテガさんとの戦いを見守らせてもらいましたが……まさか余力が有り余る状態で買ってしまうとはねぇ……」


 俺は科方が今立っている場所を見て目を疑った。


「だがよぉ、てめえがチンタラチンタラ戦ってくれたおかげで、こいつを使った面白い事を思いつくことができたぜ」


 そう言って科方が足で今踏みつけているのは、何を隠そうあの『パンドラ』。そして科方は今、右手をパンドラへと沈めようとしている。


「ククククク、ははははははっ!!」


 その時起こった出来事を、俺は具体的には理解できていない。だけど直感的にオレはこう思った。


「クククク、はははははっ!! 俺の中に、『パンドラ』がみなぎってくる!! 力が、みなぎってくるッ!!」


 ――科方藤坐は、『パンドラ』のエネルギーを吸収したのだと。

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