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第三十六話 そろそろ大詰めに入っていく感じ?

「クッソ! 補正を間違えたか!」


 補正を間違えた……? という事は補正にも種類があるという事か。


「そういえば、変異種スポアの力は感情に左右されるって緋山さんが言っていたような――」


 さっきから態度を豹変させていることと、それが二種類であることから恐らく補正は二種類。そして今までの傾向から改めて推理するとすれば――


「何をゴチャゴチャとしていやがるんだ!! かかってこいよ!」

「じゃあそうする」


 言われたのなら仕方がない、試しに攻勢に出てみよう。

 とりあえず引力を斥力に変えて、どこかに吹っ飛んでもらおうか。


「ッ! おっと、危ないですね!」


 一瞬だけ浮いたかと思いきや、すぐに地上に足をつけて冷や汗をかく科方。そしてその時の科方の態度はとても礼儀正しい口調であり、髪の毛も全て逆立たずに下に降りている。


「……へぇ、どうやら世界から愛されるためにはいい子ちゃんじゃないといけないってことかな?」

「…………半分だけ当たり、とだけ言っておきましょうか」


 ならばもう半分も当てるとしますか。


「言っておくけど今は常に能力発動させておいているから、少しでも態度を変えた途端に宇宙の藻屑デブリ確定だからね」

「くっ、それは困りましたね……」


 このまま直接倒してもいいんだろうけど、能力が通用しないまま倒すのは面倒だしなぁ……。


「ここは一旦引かせていただきます」

「ッ! 逃がすわけないでしょうが!!」


 かといって世界から庇われる存在を簡単に終えるはずもなく、俺が後を追おうとした矢先に今度は新しく建てられたビルですら目の前で倒壊して俺の道を阻む。


「逃がしたッ!? ってか仕方がない、澄田さんの方に合流しよう」


 行き先は伝えている通りのはずだし、それに加えて恐らく科方も――


「…………」


 俺は銀ビルの方を向き直し、そして空に浮かぶ黒い球体を見上げる。


「また大きくなっている……?」


 先を急いだほうがよさそうだ。



          ◆◆◆



 ――倒壊していたはずの銀ビルは綺麗に建て直されていた。まあオルテガならできなくもないんだろうけど。


「――もう一度、今度はあの黒い球ごと破壊するしかない、か」

「待ちやがれ!!」

「見つけたぞ! てめえを捕まえればあの魔導師から賞金を貰えるって話だからな!!」


 あー、忘れてた。


「道中ダストに見つかっていたことをシカトしていたツケが回ってきた感じ?」

「たかがガキ一匹、しかも女だ! さっさと終わらせるぞ!!」


 それはこっちのセリフ。

 とりあえず俺の視界から消えてもらおうか。


「――重力を反転」


 斥力に。


「へっ? あっ――」

「上へ参りまーす」

 地球からさようなら(フライアウェイ)。これで雑魚はしばらくご退場。念の為重力反転の後に、落下ダメージを反転させて無効化しておこう。そうすれば落下死することはないだろう……多分。


「さて、堂々と入らせてもらいますか」


 内部に入ればもっと苛烈な歓迎が――


「――ってあれ?」


 誰もいない。人っ子一人。緋山さんや要が戦ったような痕跡もない。


「となると屋上に絞られる訳だけど……」


 妙なざわつきを感じる。この違和感は何?


「……エレベーターを使おうか」


 いやそれよりも、一階と屋上を反転させた方が早いか。

 俺が指をパチンと鳴らすと、視界が一瞬真っ白になる。


「ッ、屋上に着いた――って、緋山さん!?」

「おやおや、少し遅かったみたいですね」

「榊……遅かったじゃねぇか……」

 『パンドラ』を背景に余裕のオルテガとは対照的に、口の端から血を流して地面に横たわる緋山さんの姿が俺の目の前に広がる。


「すいません、途中澄田さんに捕まってしまって……」

「詩乃は……置いてきたんだろうな……?」


 それがねー……。


「実は――」

「励二!!」

「何ですかこのザマは! 緋山の癖に!」

「わりぃ、ちょっと横になりたい気分だったからよ……それより詩乃、お前ついてくるなって言った筈だろ……」

「話は全部マコちゃんから聞いたんだから! また一人で勝手に背負い込んで、一人で全部何とかしようとして!!」

「榊……」


 ごめんなさい。


「……オルテガはどうでもいい、あの後ろの黒い球体に気をつけろ」

「まあ緋山さんがダウンしているくらいなんで想像はできますけど」

「そうか……じゃあ、交代だな」


 俺は伏せたままの緋山さんの手をタッチし、選手交代をしてオルテガの前に立つ。


「おやおや、貴方は先ほど下で随分と能力を発揮して来たようで」

「だから何?」

「榊、気をつけろ……その黒い球は――」


 ――能力をエサに強くなっていっている。

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