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第三十四話 さて、仕返しの時間がやってまいりました

 壁を透過していった先――そこに広がっていたのは、正に戦場と呼ぶにふさわしい光景だった。


「何、これ……」


 第三区画の中央に浮かんでいるのはあの黒い月。昨日とは比べ物にならないほどの大きさで、この区画を押しつぶさんばかりに空を埋め尽くそうと更に巨大化していっている。


「これは流石に洒落にならないと思いますぜ……」

「ボクですら一目見ただけでヤバいやつだって分かるよ……」


 それまでやる気満々だった要も、予想以上の事の大きさに直面したとたんに自信を無くしたような言葉を漏らす。そして栖原はCランクの自分が来るべきでは無かったと、改めて後悔している様子。


「ねえ、マコちゃん……」

「分かっていますよ」


 異常なのは球体だけでは無い。地面の一部がまるで、あのカプセルを飲んだ能力者でも通ったかのように一部ふわふわと宙に浮かび、そしてはるか上空にすらその破片が見える。

 その異様な光景に声を震わせながらも、澄田さんは俺に一言だけ問いかける。


「これって、あのカプセルを使ったダストと同じ――」

「その通りですよ澄田さん。カプセルの件、オルテガ、そしてあの黒い球体は全て一つの組織が原因です」

「そんな!」


 今から緋山さんを助け出すんだ、今更隠す必要もないよね。


「本当なら情報クリアランスAらしいんですけど……あのカプセルはDランクの能力を持たない一般人の脳を改造して、むりやり能力を付与するカプセルらしいんです」

「そうだったの!?」

「そしてそれと同じ効果を持っているのが、あの黒い球体……もっと凄いらしいですが」

「一体誰がそんな事を……? まさか!」

「そのまさか、ですよ」


 澄田さんもここまできて全てを理解したようだった。そして緋山さんが何故一人で突っ走ったのか、その理由も分かった様子だった。

 オルテガという男、そしてラグナロク。それらが今回の事件の全ての原因だったということを。


「だから励二は、一人で勝手に……もうっ! 世話が焼けるんだから!」


 真実を聞いた澄田さんはそれまで震えていた声の調子からいつものしっかり者の声色へと戻っていく。


「行くよマコちゃん! 励二を助けなきゃ!」

「もとよりそのつもりで来たんじゃないですか」

「ちょっと! 置いてかないでくださいよ!」

「ボクも!」


 俺と澄田さんに続いて、要と栖原も走り出す。目標はもちろん、あの黒い球の真下にある建物、銀ビル。


「マコちゃん、場所は分かっているよね!?」

「多分あそこしか考えられないんで!」

「ッ! 詩乃さん! 榊も!」


 アスファルトの道路が引き剥がされ、建物が崩壊していく第三区画。そんな中でも不貞を働く輩はいまだにいる。


「ハッ! まだいやがったぞ!」

「しかも女四人じゃん! 当たりじゃね?」


 どう考えてもただ女に目を血走らせているだけじゃなくて、カプセルを飲用しているとしか思えないダストの連中が道を阻む。


「早速身に付けた能力を使って――」

「邪魔なんですよ!!」


 要が即座に岩の塊を地面から突き出し、連中を宙に舞わせる。いかに能力を持っているとはいえ、付け焼刃の能力が本物の能力に勝てるはずがない。


「いたぞ!! あのハゲ男が言っていた奴だ!」

「ああ! あのピンク髪巨乳の女だろ!」


 ええー……俺の評価ってそんなものなの……。


「――だったら別の意味でこの姿を刻み込ませるしかないか」


 俺は指をパチンと鳴らし、それまで無風だった空間に強烈な突風を吹かせる。


「うわぁーっ!?」


 突然の暴風になすすべもなく、ダストは吹き飛ばされる。


「さて、先を行きましょう」

「榊って一体いくつ能力持っているんですか……どんだけ複数能力マルチタスクなんですか……」

「あたしの能力は一つだけだよ」

「嘘です!」


 本当のことなんだよねぇ。


「さて、先を急ぐ――ッ!?」

「おやおや、奇遇ですね。こんなところで貴方達と出会うなんて」

「科方……藤坐……!」

「あぁん? ちっ、なんだ巨乳女も一緒かよ」


 さっきから俺の呼び方酷過ぎませんかね……?


「あんたのことは既に皆知っているからね」

「ハッ! だったらどうするよ? 緋山励二はとっくにオルテガのジジイに潰されてるがなぁ!」

「そんなこと無い! 励二が負けるはずがない!」


 科方の挑発に近い文言に即座に反応したのは澄田さんだった。科方はその反応に愉悦を感じたのか、更に煽る様に言葉を続ける。

「本当だぜ? 何せオルテガもSランクだからなぁ!」

「は?」


 それに異議を唱えたのは、何を隠そう俺だった。


「本人がAランクだって言っていたけど?」

「は、ちょ、お前!? 何で知ってんだよ!」

「だから本人が言っていたってば」


 調子に乗りかけていた科方の出鼻をくじいてやってしてやったりと思っていたが、それはあいつの無駄に高いプライドを刺激したようだ。


「この俺に恥をかかせやがって……てめぇだけは滅茶苦茶にしてやるよぉ!!」

「何いってんだか。あんたがあたしに勝てる訳ないじゃん」


 ひえーっ!? 勢いで口から思いっきりでまかせ行っちゃったけど大丈夫なのかな!?

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