第三十二話 まさかの乗り遅れ
「明朝を楽しみにって、嫌な予感しかしないんだけど……」
とか思いつついつでも戦えるように女の子の状態で布団でくるまる俺。はい、正直ビビっておりますとも。
相手がどうしかけてくるかなんて全くもって予想すらつかないし、あの黒い球の事だって実際よく分かっていないわけだし……。
「絶対に能力注入以外にもなんか力があるはずでしょ……あれだけのためにあるとは思えないんだけど」
とか思いながら、時計の針が十二時を過ぎようとしている。
「……明日は、早起きをしないと――」
そこで俺の意識は徐々に薄れてゆき、眠気が意識を上回っていき視界が澱んでいくのを感じながら、俺は眠りにつくこととなった。
◆◆◆
――翌日、俺は目覚ましの音ではなく、VPのけたたましい着信音で目を覚ますことになる。
「んぅ……一体何だっていうの……」
着信画面を見ると、そこに映っている名前は何と――
「げぇっ!? 緋山さん!?」
俺は急いで着信を取って恐るおそるVPを耳にあてると、VP越しにはハァハァという乱れた息が聞こえる。
「……変態ですか?」
「違うわ!! 例のラグナロクが、第三区画を中心におっ始めやがったんだよ!!」
「……何を?」
寝起きで思考回路がまだ完全に目覚めていない俺にとって、緋山さんの話など理解できるはずがなかった。
「だからとにかく、今すぐ第三区画に――」
――ブツッ。
「……切れた」
通話途中、最後らへんなんか爆発音が聞こえた気がする。
「……とりあえず行ってみよう」
そういえば女の子のままだった。とりあえず部屋を出る前に男子に戻って、それから道々見えないところで反転するとしよう。
「それにしてもSランクの緋山さんが、あれだけ必死って珍しいなあ」
もしかして本格的にヤバいんじゃ――
「――あ」
ここでようやく頭が冴えてきた俺は、必死で俺を呼びつけようとする緋山さんの声や、途中で切れた通話からある一つの答えを導き出す。
「……もしかして、明朝のやつがもう始まっちゃってるの!?」
俺は急いで支度を済ませると、自室から飛び出すようにして外へと出ていった。
次からまた女子会グループと合流して話が進みだします。