第三十話 要約すると大体こいつ等が悪い
「なんだよこれは……」
「『パンドラ』。私達にとっての希望であり、唯一絶対の答えです」
部屋の中心に浮かぶ黒い球体はただ静かに、無機質にそこにいる。それは生命体には見えず、ただの物質としか思えない。
「えーと、この黒い球が一番大事ってこと?」
「ええ、そうですとも」
どう考えてもさっきの『究極の力』がどうのこうのの方がヤバそうに思えるのは気のせいなんですかね? って思えるくらいにただの巨大な黒豆にしか見えないぞこれ。
「それで? これが何をするんだ?」
「これは簡単に言えば……エネルギーの集合体といえます」
「エネルギーの集合体?」
といいますと?
「緋山くんに……そこのお嬢さんが戦った相手である科方藤坐くんは、元々Dランクでした――といったら、貴方達は信じますか?」
「……何が言いてぇ」
「あ、あたし分かったかも……」
「ほう。そちらのお嬢さんの方が察しが良いみたいで」
いや今までの見た後のその発言だとなんとなく察することができるでしょ。
そこから先は予測通りその『パンドラ』というものがいかに凄いものなのか、まるで深夜遅くに行われる胡散臭い通販番組のような説明を俺達に向かって始める。
「このパンドラ、我々が魔法の髄を集めて作った真の永久機関。そしてこれと被験者の脳を科学の力で結合させることで様々な能力を得られるという、まさに魔法と科学のコラボ!!」
つまり脳に強い刺激を与えることで脳に能力ができるように刻み込めるという事か……あれ? それってもしかして――
「……もしかしてラグナロクって、それの簡易版とか作っていたりするの?」
「おや? よく御存じですね。その通り、今はまだダストの連中を使って実験段階程度に落とし込んでありますが、いずれ実用化はさせるつもりです」
「ハッ、気に入らねぇな」
そう言って緋山さんは能力を発動させようと、床の一部をマグマへと変貌させようとしたが――
「おっとそれはご勘弁を」
そういうとオルテガは俺達に向かって右手を向け、魔法陣を展開させる。それを見た緋山さんは相手が何を仕掛けてくるのか、一旦能力を中止させて相手の出方をうかがう。
「そうです、それでいいのです。そのまま大人しくしていれば、私も貴方を原子レベルまで分解させずに済みますから」
「んだと……やはりてめぇはSランクの魔導王――」
「いえいえ、まだまだしがないAランクの魔導師ですよ」
しかしそれにしても原子レベルまで分解ってヤバくないか? って思っていたところで後ろからぞろぞろと全身黒の特殊部隊っぽい武装をした輩がはいってくる。
「貴方達は取り敢えず拘束させていただきます。いくらSランクとはいえど、残り二人を庇いながら戦えますか?」
「片方は違うし之喜原は別に死んでも構わねぇが……チッ」
とか口でいいながら手を出さない緋山さんはツンデレか何か? って後頭部に銃口つきつけるの止めてくださいまだ死にたくないです。
「という事で、全員別室に連れて行くように」
「……之喜原」
「分かっていますよ」
何か俺の知らないところで二人が合図を送り合っているけど、俺はどうなるの!? 薄い本的な展開とか嫌なんだけど!?