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第三話 反転? 性転換!?

「さあ、存分に力をふるってみてよ!」


 そう言って澄田さんの方は腰に手を当てて堂々と仁王立ちで立つけど――


「いや、だからどうしようにも見当がつかないんですけど……」

「えぇー……ちょっともう一度思い出してみてよ。能力が発動して女の子になった時、自分は何を思っていたのかとか」

「後はその時の感情だな。俺達異能力を使える人間――変異種スポアの多くは感情が能力発動の最初の引き金になる」


 あの時は……確か――


「――とにかく、怖かった……穂村に、殺されるかと思った……」

「なるほどな……だとすれば、防御系の能力か……? しかし防御系代表ともいえる守矢四姉妹は元々女の上に、そんな性転換なんて馬鹿げたことは起きていないはず」

「うーん……性転換……転換……はっ! もしかして!」


 澄田は何かを思いついたみたいで、緋山の方を向いて自信満々にこう言った。


「もしかして、反転する能力なのかも!」

「何だそりゃ? 聞いたこと無いぞ」


 そもそもDランクの人間には全くもって意味不明です。


「反転するから、自分の性別を反転させちゃった……おかしいかな?」

「いや、そもそもの発想がおかしいと思うが……」

「俺も、緋山さんの言う通りだと思いますけど……」


 俺と緋山の意見が一致している中、澄田は不満そうに頬を膨らませている。


「で、でもやってみなきゃわからないじゃん!」


 そう言って澄田さんは俺から離れて、改めて仁王立ちを行う。


「さっ! 何でもいいから反転させてみてよ!」


 何でもって……そもそも能力の使い方すら――


「俺達は力帝都市で能力として定義されるまで、全て原理不明の『超能力者』として扱われてきた。だがここは力帝都市、能力発動の定義は既にできている」


 そう言って緋山は俺の細腕に手を添えて――って何をする気!?


「怯えるな。力の出し方を教えるだけだ」

「あー! ちょっと励二! そんなにその子がいいわけー!?」


 いや、俺男ですけど……。


「お前男に嫉妬してどうするんだよ」

「でも今は女の子だよ?」

「こいつを男に戻すのも能力発動の練習になるだろ」


 澄田さんの方はいまだに不満げのようだが、緋山は相変わらず俺の右腕に手を添えている。


「わざわざ手を向ける必要はないが、イメージは重要だ。後は簡単だ、“そうであれ”と念じればいい」

「念じるだけ?」

「そうだ。手足を動かすように簡単だろ?」


 どうも簡単とは思えないが……。


「どうした? 後はお前でやるんだ」

「分かったよ……」


 反転……反転……何を反転させればいいんだ……?


「……重力とか?」

「え? 今何か言っ――うわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 俺がそう小さく呟いたとたん、澄田の身体は周りに落ちている石ころや地面に突き刺さっていた標識ごといきなり空高く飛んでいくことに。


「ッ!? 詩乃! 今すぐ透過しろ!」

「ひゃっ! う、うん!」


 すると俺の目の前で空まで飛んで行っていたはずの澄田の姿が忽然と消える。別に遠くに飛んで行って消えて行った訳じゃない。ただいきなりその場でパッと消えた。


「チッ! 今のうちに発動している能力を今すぐ消せ!」

「どどど、どうやって!?」

「さっきと逆だ!」


 俺は急いでさっきと逆で能力を消すと、空からいくつも小石やら標識やらが落ちてくる。

 しかしそこに澄田さんの姿はない。

 そう思っていたその時。


「――ぅぁあああああ!!」

「あれは!?」

「詩乃!」


 またもパッと現れた澄田の姿を見て、緋山は真っ先に地面を蹴って爆風を引き起こし、空から落ちてくる澄田の身体を空中で抱き留める。

 そして緋山はそのまま爆風で落下の衝撃を相殺し、澄田に配慮しながら安全に着地をした。


「大丈夫か!?」

「な、何とかね……透化していなかったらもっと飛んでっていたかも……」

「ったく……おい」

「あ、ひゃい!?」

「今のは何を反転させたんだ……」

「じ、重力です……」


 俺は思い付きで反転させたことを、そのまま緋山に話した。すると緋山は唖然とした表情でこちらにもう一度問い直してくる。


「重力だと!? お前まさか『グラビティムーブ』と同じ――」


 いや、今ので分かった。反転できるのは重力だけじゃない。


「そうじゃなくて、じ、実はそれ以外にもできるみたいです……」


 そう言って俺は恐るおそる自分の服を右手で触れて、そっと念じる。すると男用の制服が見事に女性用の制服へと切り替わる。


「……これ、何でも反転できるみたいです」

「……マジかよ」

「えぇー!? それって励二より強いんじゃ――」

「馬鹿抜かすな! 俺の方がまだ実戦経験が上な分だけ強いわ!」


 それにしても、制服のスカートって本当にスースーするんだな。それに俺の足ってこんなにきれいだったっけ?


「……で、お前のかかりつけの研究者は?」

「確か、グレゴリオ=バルゴードさんだったと思います」


 俺がかかりつけの研究者の名前を言った途端、緋山は訝しげな表情を浮かべる。


「そうか……とりあえず報告するべきだろうが、お前今度からあいつの前に行く時は女になっておいた方がいいぞ」

「どうしてですか?」


 緋山はどうやらグレゴリオのことを知っていたみたいで、俺の耳元でこうささやいた。


「あいつ、そっちの気があるらしいから気をつけたほうがいい」

「あっ……」


 確かに言われてみれば妙にボディタッチが多い気がしなくもないような……。


「うわっ……とりあえず気をつけとこ」

「そうしておけ」


 重要な情報を得ることが出来た俺は、ひとまず自分の能力を使いこなすためにも自分を男に戻すことにした。


「――よし」


 これで男に戻ったはず。確かに肩にかかる重みも無くなったし、これで――


「……お前服戻ってねぇぞ」

「なんか女装しているみたい」


 …………。


「――これで戻ったでしょ……はぁ……」

「本当に榊真琴だったんだな」

「そりゃ、ちゃんとした男ですから」


 一瞬とはいえ、女装した自分を見せつけることになったことが情けない。

 俺はひとまず上下共に元の男の制服に戻したのち、何も言わずにその場を去ろうとした。

 すると――


「――ちょっと待て」

「な、なんですか」


 緋山は右手に携帯端末を持ったまま、こちらを引き留める。


「お前のVP出せ」


 VPというのは正式名称Variable Phoneと呼ばれる機械のことで、その名の通り進化した携帯端末のことを指す。

 並大抵のパソコンが行える処理能力以上のスペックを持ち得ていながら、既存の携帯端末と同じサイズの通信ツールという便利なものだ。正直言ってこの都市に住む一般人なら、これ一つあればパソコンなんていらない。


「な、なんでVPを……?」

「お前俺と同じ上学ジョーガクだろ? 別に敵対するつもりはねぇし、互いに何かあった時に連絡が取れた方が便利だろ?」

「ま、まあそうですね……」


 俺が緋山とアドレスを交換していると、「私も交換しておいた方がいいかな?」といった感じで澄田さんが話しかけてきたが――


「別にする必要はないだろ」

「なんで?」

「なんでって……」

「分かった! 嫉妬しているんでしょ!」

「違うわアホ! 俺とこいつが連絡取れればお前はいつも俺のそばにいるし、別に必要ないだろ!」


 あー、頭痛えー。一つ上の先輩にこんなこと思っちゃいけないんだろうけど、いちいち惚気ている所見せつけられたら壁ドンも辞さない勢いなんだが。


「あ、後もう一つ」

「何ですか?」

「お前がもしこの先平穏に暮らしたいのであれば、Dランクの男であるお前と、能力者である女であるお前が結び付くような行動は止めておけ」


 どういうことなんだ? 言っている意味がよく分からない。


「どういう意味っすか?」

「……お前の今の力を見る限りだと、はっきり言って詩乃と同じAランク、もしくは俺と同じSランクがつけられても何らおかしくはない。だからこそ、平穏にこの都市で過ごしたいのであれば力を隠しておいた方が得だという事だ」

「……よく分からないけど、忠告どうも」


 そこで俺と緋山さん達はようやく別れることとなった。日もすっかり落ちきって、辺りも独特の夜景が広がる。

 俺はこの時、このまま大人しく帰れると思っていた。そう、Dランクだからこそ、簡単に帰れると思っていた。

 自分の家の近くを考慮しなければ。

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