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第二十七話 一体どこまで知っているんですかねこのストーカーもどきは

「いやレクチャーとかいう前に脇腹に蹴り刺さっているのをどうにかした方がいいんじゃないんすか?」

「おい、言葉使いを……もういいか。じゃあまず万能ヴァリアブル型から教えてやるよ」


 そういうと緋山さんは足先から全てを砂に変え、熱風に乗ってどこかへと飛んでいく。


「ちっ! どこ行きやがった」

「後ろだ後ろ」


 そうやって科方が振り返った先に、再び砂から体を形成する緋山さんの姿が。


「さて、これで何がわかる?」

「何がわかるって……あっ」


 そういえばグレゴリオは緋山さんの能力は空間影響エリアエフェクト型って言っていたけど、今のは体を変化させていたから――


「緋山さんって、身体強化フィジカルチューン型でもあるってことですか……?」

「正解だ。つまり身体強化と空間影響、両方を扱えるから万能ヴァリアブル型ってことだ」


 じゃあもしかして俺もそうなるのか……? だって弱い脚力も反転できたし、さっきみたいに熱風も反転できたし。


「それともう一つ。実は俺は能力を二つ持っている」


 緋山さんは周囲の大火事を見るなり口の端から息を漏らし、地面に膝をつく。


「――とりあえず、この惨状を一旦収めさせてもらおうか」


 そう言って緋山さんは地面に右手を当て、そして右手の先から全てを砂に変え、地面と同化し始める。


「アスファルトも、ビルも、標識も!! ――全部砂になれ」


 全部って――やばっ!!


「――D(デザート).D(デストラクション)!!」


 次の瞬間――緋山さんを中心に巨大な砂嵐が発生し、ビルや路肩に止められている車など全てを飲み込み、頽廃させていった。



          ◆◆◆



「――あ、危なかった……」


 詩乃さんの能力を事前に見ておいて正解だったわ……本来なら透過しない大きさのものでも全て体を透過する様に反転させてたおかげで、砂嵐が通り過ぎてもなんとかノーダメージですんだよ……。

 そうして強大な砂嵐が通り過ぎた後、俺の目の前に広がっていたのは壮絶な光景だった。


「……おう、生きてたか」

「っ、緋山さん! 流石に俺もろ共殺そうとするとか正気の沙汰じゃないですよ!」

「お前の能力なら、逃げ切れると信じていた」

「信じていたって……もう!」


 四方に立ちふさがる壁もいつの間に消え去ったのか、そこにあるのは月夜に浮かぶ巨大な砂丘。そしてその上に一人、立つ男がいる。

 ――『粉化イラプション』、緋山励二。そしてこれが、Sランクの力なのだろう。


「一つ目の能力は噴火する能力。そしてもう一つが、自身とそれに伝うもの全てを紛体にする能力……これが第一能力プライマリ第二能力セカンダリだ」

「イヤ勉強にはなりましたけど……そういえば科方は?」

「あいつか? あいつは……」


 あっ、これ何にも考えていなかった顔だ。とりあえず自分の力を見せつけるためだったのにまとめて砂にしちゃったパターンだ。


「ひーやーまーさーん? もしかして一緒に砂にしちゃったってパターンじゃ――」

「は、はぁ!? ち、ちげーし! ちゃんと生きているし!」

「じゃあどうやって探すんですか。この巨大な砂山を全部掘り返します?」

「ぐ……」

「その必要はありませんよ」

「ッ!?」


 聞き覚えのある声がする方に、俺と緋山さんはすぐに振り返る。するとそこには宙に浮かぶあの丸サングラスの老人と、お付の大男に小脇に抱えられる科方の姿が。


「……そうか。科方を送りつけたのはてめぇらか」

「その言い方は心外ですね。我々はむしろ勝手な行動に出た科方藤坐クンを回収しに来ただけですよ?」


 オルテガはそう言って笑うだけで、こちらに危害を加える様子は一切見せない。科方をあそこまでボロ雑巾にしたのに何のお咎めも無し?


「そうかい、だったらさっさとそのクズを回収してとっとと失せろ」


 緋山さんはそう言ってその場から背を向け、立ち去ろうとする。

 しかし――


「おやおや、ここで合ったのも何かの縁。もう少しだけお話しできませんか?」

「……別にお前等と話す用事なんざ無いが」

「そう言わずに。もしかすれば澄田詩乃さんの『発作』も止められるかもしれませんよ?」

「ッ!?」


 発作? 澄田さんの?

 澄田さんの件については俺も気になったが、それ以上に過剰な反応を見せたのは緋山さんだった。


「――てめぇマジでどこまで知っていやがるってんだ!!」

「何、少しばかりこの力帝都市のメインコンピュータから履歴を覗き見させていただいただけですよ」

「っ、力帝都市が何でその情報まで持っているのか気になるが、それより……!」


 緋山さんは再び地面を熔岩へと変化させ、砂の粒を熱で結合させて巨大な火山弾を生み出し始める。


「てめぇが踏み入っていい案件じゃねぇことは、そこから読み取れなかったみてぇだな……ッ!!」


 火山弾は鮮烈な赫を内に秘め、緋山さんの手によって射出先を定められる。


「てめぇはここで死ね!」

「おっと、それは御免被ります」


 オルテガは即座に俺達の前から姿を消し、まるで伝言でも残すかのように言葉だけをその場に残していく。


「もっと頭が冷えた状態で話し合いをしたいものですね」

「チッ! どこ行きやがった!?」

「もし気が向きましたら、第三区画にある銀ビルを訪れてください。そこでゆっくりとラグナロクについて、澄田さんの発作の治療についてお話し合いをしましょう」


 その場に澱みきった空気だけを残して、オルテガと科方、そして大男は姿を完全に消得ていた。


「……榊」

「はい?」

「確か、第三区画の銀ビルって言っていたよな?」

「まあ、そう言っていましたね」

「……明日、放課後集まれ」

「……はい」

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