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第十九話 十八歳未満禁止!

 いる筈がないのは分かっているが、それでも賞金稼ぎと、穂村の知り合いだと名乗る少女をあの歩く火薬庫みたいなやつと会わせに向かうのはどうも気が進まない。とはいえまずは本人がいるはずのない空の部屋を見せれば穏便に済むだろう。


「いやー、遂に『首取屋ネックハンガー』の絶頂期が到来しましたよ!」

「だったら後は楽に転がり落ちるだけね」

「ちょっとなるさん!? そんなこと言うのは無しですよ!?」


 ――後ろで騒いでいる二人組の賞金稼ぎ次第では、部屋が荒らされる事態になってもおかしくはないだろうが。いや本当に知らないうちに女子から部屋を漁られるとか何かが出てこようものなら目も当てられない。


「…………」

「……あのー、もう少しで穂村の家につくからね。区画が違うから、ちょっと時間がかかっちゃったけど」


 それにさっきから隣を静かにおしとやかに歩くこの少女、あの荒々しい穂村とはまるで正反対なまでに大人しい。ある意味ではゲオルグとも似ているかのような、炎に対する氷といった印象だ。

 都市の外の制服を見に纏って歩く姿は他の者の目にもとまるが、その不干渉とも感じさせるかのような感情の遮断に、すぐに目を逸らして足早に去っていく。まさに絶対零度といった感じに思える。


「……あのー、あんたはどうして穂村に――」

「子乃坂です」

「へ?」


 言われてみれば名前を聞きそびれていたが、それにしてもこのタイミングで名乗り出られると調子が狂う。それにその感情の籠っていない笑みをあまりこちらに向けないで欲しいですぶっちゃけ怖いです。


「子乃坂ちとせっていいます。名前です」

「あ、そう……あたし、榊マコっていうんだ」

「榊さん、ですか……こうして家まで送って貰っちゃって、どうお礼をすればいいのかな……」


 お礼なんかよりこのメンバーで無事に帰れることの方が一番なんだけど、それは伏せざるを得ない。とにかくお礼はいらないと言葉を返すと、子乃坂はただ一言「優しい人なんですね」とだけ言って、再び前を向き直しては先ほどよりも足早に足を進めていく。


「って、どこに行くか分かるの!?」

「何処って……なんと言えばいいんでしょうか? 多分ですけど、穂村君に近づいているって分かると、お腹のあたりがぽかぽかしてくるんです」


 ちょっと待った穂村正太郎! あんたこの子に何したんだ!? 普通人間って人に会うからってそんな機能付いていないはずだけど!? しかもうっすら顔赤いし! ある意味さっきよりかは感情的だけれども!


「と、とりあえずそっちの方向であってるといえばあってるけど……」

「やっぱりそうですか? ふふっ、よかった」


 そうしてニッコリと笑う姿はまたしても感情の籠っていないものであったが……一体あいつは何をしでかしたんだよ……。


「そういえば、子乃坂は穂村とどういった関係なの?」

「私ですか? ……そうですね。ここでは言えないです」


 口元に人差し指を当てつつ言えないってますます怪しい関係なんですけど!? えっ、何もうそんな大人の階段をスキップ感覚で登っちゃってるワケ!? 何なんだよあの不良少年は! きっちり不良ヤっちゃってる感じかよ!!


「はぁ……まあいいけど」

「?」


 不思議そうに首を傾げているが、穂村がしでかした事を考えたら俺の反応が正しいと思うぞ。

 そして後ろは後ろで子乃坂を人質にとれば穂村に対して有利に立ち回れるとか話しているけど、多分そんなことしたらあいつのことだとその辺一帯が火の海に沈むことになりそうな気がする。多分これ触ったらダメな系の知り合いだけど――って、冷静に考えたらこうして一緒に歩いている時点で巻き込まれるリスクがあるってことかよなんてこったい。


「仕方がない。適当に置いていっておさらばしよう」


 多分この子も、しばらく家が空いていると気がついたら帰るだろうし。



          ◆◆◆



「やっぱりいないよねー」

「ちっ! この場でとっ捕まえれば賞金ゲットだったのに! ギルサバに出ていたといっても所詮Bランクなんですから、掛け金も大穴レベルだったというのに!」

「それ喋って大丈夫なのぉ? 目の前に参加者いるのに」

「どうせSランクですから、知った上での参加でしょう」


 やっぱり今のところ守矢姉妹のところに身を寄せているよね――って、ちょっと待て。ギルサバ? 賭け事?

「とにかく、この部屋で待っていれば多分あいつが帰ってくると思うから心配しないで。それと――」


 さっきから後ろの話を黙って聞いていたが、Sランクの俺ですら知らない情報を一般人の前で軽くばら撒いてどうするんだよこの賞金稼ぎ。


「二人とも、後でちょっといい?」

「えっ? 私達ですか? 私達もここで穂村を待って闇討ちをしようと思ってるんですけど」

「いいからこっちに来なさい! あぁーっと、子乃坂はここで待ってて」

「えっ、あっ――」


 俺はそのまま子乃坂という不思議な少女を置いて、賞金稼ぎ二人とギルティサバイバルの裏について問い詰めるために、場所を移すことにした。

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