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第二十四話 Sランクの証明

「とうとう俺もSランクかー」


 とはいえまだ手元には緋山さんが持っているようなあの黒いランクカードは無く、いまだに黄色のDランクのカードだが。

 帰り道、もちろん俺はあの科方とかいう男に気づかれないように見た目を男の状態にして、更に時間を遅らせて研究所を離れていったから、帰り道にあいつの姿を見ることはなかった。


「でもなーんか実感わかないんだよなぁ」


 やっぱりものとしてカードとかがあった方がそれっぽいんだよねぇ。でもまあ、研究所のお墨付きをもらったことだし、これで晴れてSランクだ。

 それにしても俺の能力が空間影響エリアエフェクト型とは……って、あれ?


「じゃあなんであのカプセルのやつを蹴った時に、蹴る力を反転して強化することができたんだ?」


 それって身体強化フィジカルチューンにならないのか?


「……よく分かんないなぁ」


 男となって少し太くなった指を見つめて、俺は一人呟く。まあとにかく今日のところは大人しく帰って――


「――榊真琴さんですね?」


 俺は声のする方へとバッと振り向く。するとそこにはオルテガのようにハット帽を目深にかぶり、銀縁眼鏡に長髪でスーツ姿の男が立っていた。


「……誰ですか?」

「安心してください。わたくしと貴方は初対面ですから、誰? と聞かれて答える義務があります」

「はぁ、そうですか……」


 そういうと男はスーツケースを開き、中にあるたった一枚だけのカードを俺の手へと丁寧に渡す。


「私の名は黒烏頭くろうずミナキ。能力者界隈では『メジャー』といえばピンとくるでしょうが……貴方は分からなくて当然です」

「『メジャー』ですか……」

「はい。この力帝都市におけるランク管理の総責任者です」


 そんなに凄い人がどうして俺に――って、俺の手に渡されたSランクのカードで分かるか。


「そんな人が直々に私に来たって訳ですか」

「ええもちろん。Sランクになる方などそうそうにいませんので、こうして敬意も込めて直々にお渡しさせていただいている次第です」


 敬意を込めてって、そんなに凄い事なんだ。能力が発覚した本人にはそんな自覚なんてこれっぽっちも無いんだけどね。

 ひとまず俺の男の時の名前がそこに刻印――


「――あれ!? これSAKAKI MAKOになっているんだけど!?」

「おや? 諸事情により男の時の名前ではなく、性転換した際の偽名で登録させていただきましたが、お気に召しませんでしたか?」

「あ、いやそういう訳じゃないですけど……」


 むしろ都合がいいのでこのまま使わせていただきます。ええ、本当に。


「今は貴方と榊マコが別々と世間は考えておりますのでそのままカードを使い分けていただいてよろしいですが、万が一、榊真琴=榊マコとなってしまった場合はDランクの方のカードを没収させていただきます。そうしなければけじめがつかないので」

「分かりました」


 そういうと俺は受け取るために反転しようとしたが、その前に周りを確認した。しかし辺りには人もおらず、黒烏頭という男からも「貴方一人の所をお伺いさせていただきました」と言われたので、俺は改めて目の前で自信を転換させた。


「おや? 貴方はValtubeで一躍有名になった方でしたか」

「その件については触れないでください」

「まあわざわざ名前を分けて取得する理由は何となくお察しできますが、それにしてもお気の毒に」

「何となくお察ししてくれるだけでもありがたいです」


 黒烏頭は苦笑を浮かべた後に一礼をすると、静かにその場に背を向ける。


「ではまた。貴方がランクを所持している限り、いずれどこかで会うでしょう」


 この時の俺の直感として、この人に会う時は面倒事に巻き込まれるときになるのだという事を感じ取ることができた。



          ◆◆◆



「――カードを貰ったとはいえ、普段はこっちを持ち歩くしかないような気が……」


 俺は言えのベッドでゴロゴロしながら、手元にある二つのカードを比べ見つめる。


「こっちのDランクのカードは安っぽいけど、Sランクのカードは何となく高級感がある気がする」


 ……あっ、でも普段のカードも反転させると――


「……Sランクのカードが二枚に増えちゃったよ」


 どうするんだよこれ……片方また反転し直すべきなんだろうけど。


「よし、元に戻った」


 でもこれでいつでも片方をDランクやSランクに変えられることが分かったし、普段はSランクのカードを反転させてDランクに偽装しておいて、いざという時に元に戻してSランクだって証明してみせよう。


「これで一応ランクに関する問題は解決したし、後は――」


 ――例の動画をどうするか、だ。

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