第十一話 Sランクも歩けばSランクにあたる
買い物に付き合う――なんか澄田さんの時と同じような、いやな予感しかしない気がするのは俺の気のせいだろうか。
「というか守矢さんも第八区画とか時々来る感じなんですね」
「ふふ、小晴でいいですよ。要ちゃんと呼び方重なりますでしょうし」
確かに四姉妹いて守矢呼びしたら四人とも振り返りそうな気がする。とまあさておき、ツインテールが良く似合う清純派な見た目の小晴さんがこんなピンク髪と一緒にいて目立たないはずがない。というよりそもそもSランクが並んでいて目立たないという方がおかしいだろう。
「……さっきから道が妙に広々としてますね」
「歩きやすくてよろしいではないでしょうか」
明らかにSランク二人が仲良く歩いている光景が異質すぎるからという事に他ならないだろう。ただでさえ今の力帝都市は何でもアリのバトル解禁となっているのだから、俺達が何かの間違いで争おうものなら第八区画の封鎖は間違いない。
しかし俺と小晴さんが戦ったとしても、多分俺が勝つだろう。物体を投影するにしても俺の能力でもできない訳じゃないし。それに――
――“ま、ボクもいるからね”
「だから、最近『アンタ』は出てき過ぎだっての」
「? どうかされましたか?」
「いや別に、何もないよ」
「……そうですか」
何かお察ししたかのような憐れみの視線を向けるのは止めて貰えませんかね。とはいえど確かに横でいきなり誰かと話をしているような喋り方をしていたらそう思われても仕方がない。
それにしても買い物で女性ものの服を買うのをつき合わされることまでは予想の範疇であるが、それにしても服のサイズが少々大き目のような気がするのは気のせいか?
「これ全部小晴さんか和美さんが着るんですか?」
「確かに私よりも和美の方が少しだけ身長が高いけれど、こんなに大きなものは着ないですよ」
確かに身長がもう少し高ければサイズ的には合うだろうし、すらっとしたような服だから小晴さんや和美さんみたいな出るところは出ている人が着るにしても今度は細すぎるかもしれない。
「一体誰が着るんですか?」
「今度第十四区画に新しく住人として迎え入れる人用です。その人はランクカードを持っていないので、こうして私が代わりに買っているのです」
確かに小晴さんがSランクな分無料で調達できるだろうしその方がいいんだろうけど――
「――ダストの親玉がこんなところにいて大丈夫なんですかね」
「あら、一体誰が狙ってくるのでしょうか?」
Sランクだから早々狙われないのはいいんだろうけど、ダスト関連の時点である意味恨みを買っていてもおかしくはないと思う。とはいえこんな人がまさか第十四区画を仕切っているとは想像できるだろうか。
「……言われてみたら狙って来ないですよね」
「でしょ? 仮に今第十四区画に攻め込まれたとしても、そこには和美と正太郎さんがいるから大丈夫よ」
確かに定点防衛能力最強の盾といえる『監視者』こと和美さんがいれば強いだろうし、今だと最強の矛であるあの怪人もいるだろうし、心配するだけ徒労か。
「さて、買い物も済ませましたしそろそろ帰りましょう――」
「あ……」
「……あ」
ここでまさかの事態が発生。
「あんた、何の用でここに?」
「そっくりそのままお返しさせて貰うわ。榊マコ」
目の前にいるのはこちらと同様、ウインドウショッピングを楽しんでいる一人のゴスロリ少女。
「あんた一人なの?」
「は、はぁっ!? 別に一人でもいいじゃない!」
「マコさん、この人は?」
「今回の依頼で、あたしの競争相手にあたる人……かな」
そしてまさかこの場に――
――Sランクが三人そろうとは思いもよらなかった。
今回の話の服が誰にいきわたるかは、別途書いていくパワーオブワールドの方を見ていただければ分かるようにしていきたいと思います。




