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第二話 深夜徘徊禁止ルールって……そういえば市長が全部撤廃したのかチクショー!

 ――夕方になり、俺は自室でラウラとアクセラと共に夕飯を囲んでいた。テーブルの上には最近にして日本食を覚えたラウラが挑戦したというざるそばが並んでいるが……何にしろ元軍人の癖に料理もこなせる超有能なメイドだと俺は感嘆の息を漏らさざるを得ない。一応Sランクの俺が買出しに行けば何でもそろうが、それでもまともな料理人がいなければまともな料理にはありつけない。


「一日だけとはいえサバイバルで腹を空かせた時にはラウラのありがたみがよく分かるわ」

「まあ、そこまで言われなくても」


 こうして眼鏡越しに上品に微笑んでいるが、ひとたび戦闘になれば超人的な身体能力を発揮しつつ、弾数無限の散弾銃ショットガンをぶちまける殺戮マシーンと化すことを忘れてはいけない。というより能力使って改造した俺本人が一番忘れてはいけない。


「そういえばお兄ちゃん、お昼に燃えるお兄ちゃんが遊びに来てたよ」

「緋山さんが? なんて言ってた?」

「ううん、お兄ちゃんがほうしかつどー? をやってるって聞いたらまたくるって」

「そっか……」


 そしてもう一人の居候、この世界の裏側――界世に所属していた少女。俺の裏にいる『アイツ』曰く界世のキーパーソンらしいのだが……そもそも界世なんて、世界の裏側にある別世界程度の認識しかないのだが。後は澄田さんが連れ去られたせいでどえらいことになったぐらいかな。そんな少女を俺は特に訳もなく預かっている。


「さて、と……ごちそうさまでした」


 食べ終わったからにはさっさと片付けをしようと、俺はテーブルから立ち上がろうとした。

 その時、丁度玄関から呼び鈴の音が部屋に響き渡る。

 ……この時間帯のチャイムにいい思い出が全くないんだが。


「また狼男に追われている幼女とか、そういうのじゃなかったらいいんだけど」


 それかもしくは、面倒事を抱えた緋山さんらへんが転がり込んでくるパターンなのか。

 プラスのイメージが全く湧かないままに玄関の戸に手をかける。するとやはりといったところか、面倒そうな輩がこれまた面倒事を抱えてやってくる。


「やっほー、迎えにきたよーって、あれ? おにーさん誰?」


 誰って……ああ、そうだった。

 状況整理。今現在玄関前に立っているのは例の双子エクスキューショナーズ。二人は恐らく榊真琴おれを訪ねて来たのではなく榊マコを訪ねてきたのだろうが、現実として俺は反転せずに榊真琴のままドアを開けてしまっている。


「おにーさん誰?」

「……いや、そっちこそ誰だよ」


 あくまで平静を装い、二人とは初対面といった素振りを見せる俺だが、果たして騙せているだろうか。


「……えぇー、住所間違えた?」

「でも確か……あっ! 榊真琴って弟なんだ! 初めて知った!」


 どうやら俺の目の前で個人情報を探しているらしい。というよりもDランクの個人情報なんて均衡警備隊には筒抜けですかそうですか。まあ俺も監視カメラ撤去をお願いした過去があるからその辺の筒抜け具合を知らないわけでは無いが。


「ねえおにーさん、榊マコって人知らない?」

「姉貴か? 姉貴なら出掛けるって言ったっきり帰って来てないぞ?」

「あれ? もしかして昼間のあれ冗談だって思われてたのかな?」

「エムがふざけるからそう思われちゃったんじゃん」

「姉さんだってそんな感じだったじゃん!」


 頼むから玄関前でAランク同士の兄弟げんかは止めてくれよ。家が壊れようものなら俺の後ろで待機しているメイドのショットガンが火を噴くことになるのは間違いないから。さっきから背後から飛んでくる殺気からしてまちがいないから!


「もういいや! おにーさんに付き合ってもらおうよ」


 えっ、なんでエスの方はオレの袖を引っ張っているんですかね。そしてフードの奥からにこやかな笑みが可愛い――ってそんな手には載せられる訳にはいかないんだが。


「だって姉の不始末は弟の役割でしょ? 僕だってそれで苦労したんだし……」

「何か言った?」

「いや何も」


 エムエムで何か悟りを開いたような顔をして俺の手を握るな。二人して俺を引っ張るな!


「大丈夫だってば。Dランク一人くらいなら守れるし」

「そうそう。最悪両手足を失うくらいで済むから――」


 それで済んだら警察とかいらないんだよ! というか警察の役割のお前達がそんな事を率先していうんじゃねぇ!!


「まあまあ、ちょっとだけ第三者的視点から考えをもらうだけだから」

「おにーさんも楽しいよ? 情報クリアランスAの事件に関われるなんて、Dランクではめったに味わえないからさ」

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