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第十一話 Kagemusha

「おっとまさかの乱入者か!? しかしサバイバルは中止されません!! なんといってもこのサバイバル、ルールはたったの一つだけ!! それは――」


 ――三日間生き残れば勝利、って分かっているけどこれは流石に色々と問題と思うんだが。


「覚悟ッ!」


 いや覚悟って言われても俺としては全然殺されるつもりなんてないんだけどね!


「ひとまずお手並み拝見!」


 ――反転・天地無用リバースワールド


「むぅ!?」


 相手の感覚を反転、前後左右そして上下全てが反転したこの世界でまともに前に歩くことができると思ってる?


「もちろん無理だよね!」


 俺は真正面から足元に転がる小石を蹴り飛ばし、大岩へと反転させて忍者に直撃させようとした。無論、反転した世界においてこの攻撃は前方ではなく後方から飛んでくる攻撃と感じ取ってしまうので、普通ならば防がれる筈もないのだが――


旋風輪せんぷうりん!!」

「ちょっ!?」


 その場で一回転して全方位を斬りつけるのは予想外の攻略法――ってか俺が考え付かなかっただけで普通に対処されちゃってるんですけど!?


「後方から向かい来る巨岩に、前方から飛んでくる殺意……実体のあるものと無いもの、両方を防ぐならばこの手しかあるまい」

「ふ、ふふふ……中々やるじゃん」


 とか言いつつも次の手段を考えなければいけない訳でして。


「だったらこれはどうよ!」


 拡散する光を反転して収縮、そしてバラバラになった方向性を反転して一点へと集中!!


収束励起線レーザービーム!!」


 威力はエムの放ったものの倍以上の威力を保証するくらいに、俺は右手から収束させた光り輝くレーザーを忍者に向けて発射した。


「むぅ!?」


 レーザーは見事忍者の身体を貫いたかのように思えた。しかしどうやら俺が撃ち抜いたのは偽物だったようで、忍者の身体はその場に霧散し消滅し、本隊はまた別の場所へと現れた。


「……どうやら最近Sランクと認定されたばかりと聞いていたが、中々の手練れのようだな」

「そりゃいきなりSランクになるからにはそれなりの理由ってもんがあるでしょ」


 ダストに混ざって穂村に追い掛け回されたことがきっかけですなんて言える雰囲気じゃないよねー……。


「ならばこちらも本気を出させてもらおう……!」


 本気って、今までのは本気じゃなかったってこと?


「随分と舐めてかかってるみたいね」


 とはいっても、こっちもまだ全然本気じゃないんだけどね。


「…………」


 互いに間合いを測り合い、沈黙がその場の空気を満たしていく。


「ッ! 斬鍔ざんがく――」

「残念。もうその技は見飽きたわ」


 俺の元来鈍い運動神経――反応速度を反転し、最速でもって相手の攻撃を受け止める。そして――


「じゃ、しっかりつかまっていなさいよー!」

「なっ、がはぁっ!?」


 俺は自分の身体能力を反転した状態で忍者の顔面を掴み上げ、そのまま崩れかけたビルの側面へと走り寄り次々と叩きつけていく。


「――七、八、九、ラスト!!」


 忍者を掴んだまま合計十棟ものビルをなぎ倒した俺は、手元にある感触を確認した。するとそこには変わり身の術によって握らされていた時限式の爆弾が。


「げっ!?」


 よく爆発しなかったものだと思いながら俺は遠くへと放り投げ、遠くでの爆発を背後に斬りかかってきた忍者の攻撃を回避する。


「ねぇ、そっちばかり武器でズルいと思わない?」

「死合に卑怯も何もあるまい!」


 確かに死合サバイバルに卑怯も何もない。だったら――


時間停止ストップウォッチ!」


 流れる時間を止められない。ならば止めてしまえばいい。


「さぁて、さっきのお返し」


 強化した脚力で地面を踏み抜き、宙に舞う爆発するはずの無いアスファルトの破片全てを――


「――反転・不発炸裂スマートボム


 不発するただの破片を全て爆発する小型爆弾へと反転。それが忍者の周囲の宙を舞う。


「……では、次回まで御機嫌ようって感じ?」


 時間停止ストップウォッチ、解除。そして――


「――さ・よ・う・な・ら!」


 爆炎を前に、俺は背中を向けて去っていく。相手が追ってくる様子は無い。

 だが決してこれで終わる訳が無い。Sランクを相手にする刺客が、この程度で終わるはずがないと、俺はここから先の戦いの警戒を怠ることは無かった。

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