第五話 宴
「それではさっそくこの第一区画の解説およびルール説明の方をさせてもらおうと思います!!」
場内アナウンスが鳴り響き、俺の胸の奥底にこれから始まる出来事への恐れと、どうしてだろうか――何故なのかは分からないが、少しだけ何かに期待をしているような自分がいることに嫌気がさす。
「まずは知らない人もいるであろうこの第一区画! 普段はAランクを超える猛者達がその持ち得る力を日々切磋琢磨する場でありますが、今回こうしてサバイバルを行うにあたって場所を貸し切っております!! その広さ、なんと市長の力により本来ならばこの力帝都市全部の区画を合わせてもそれ以上の広さを持っておきながら圧縮空間により一区画に収まっているような区画であります!! 全力を尽くせるように、世界が壊れるほどの力を行使しても大丈夫なようにとの市長の粋な計らいであります!!」
世界が壊れても大丈夫って、そもそも普段からそんなレベルの戦いがこの中で繰り広げられていたという事実の方が俺を驚かせる。
「そしてこのギルティサバイバルのルールは至ってシンプル!! 三日間! 時間にして七十二時間生き残りさえすれば全ての罪は免除される、あるいはこのサバイバルを生き残ったことという称号、ある意味Sランクを超える誉れを手に入れることが出来るでしょう!!」
随分と雑な説明のようだが、ある意味それが力帝都市らしいのか? そう思いながら俺は背伸びをして身体をほぐし、これからいつ来てもおかしくはない敵襲に備えて浮ついた心を沈めにはいる。
「それでは年に一度の大決算!! 贖罪を掛けたサバイバル、ギルティサバイバルの開幕を前に、最後に市長からお言葉を頂きたいと思います!!」
その時それまで騒がしく思えた場内アナウンスが一瞬にして静かになり、それに伴って辺りの空気も徐々にではあるものの、戦いが始まる前のあの独特の張りつめた空気が支配していく。
そんな中凛とした声がスピーカー越しに響き渡り、張りつめた空気を鮮明にして全ての者へ届けていく。
「全参加者に告ぐ!! この場において、貴様等が罪を犯した罪人だなど、罪びとを狩る狩人などと区別する気は一切ない!! ただ一つの命に従って、極限の戦いを我に見せて欲しい!! オーダーはたった一つ!! 生き残るだけだ!!」
「勝利条件は一つ、生き残るだけ……だったら他のメンツと手を組んで均衡警備隊だけを追い払えば終わりじゃない?」
そう考えていた俺だったが、ここである一つの真逆の考えが思い浮かぶ。
「ちょっと待て。ここで普通に生き残れば罪を帳消しになるけど、他の賞金首を倒した場合その賞金でその時点でご破算? あるいはそのまま手元に残る?」
となれば手を組むのも考えものだな。俺の首にかかっている賞金がいくらなのか分からないままに連れてこられたが、金額次第じゃ逆に後ろからバッサリやられてもおかしくはない。
「くっ……となると一番の理想は緋山さん達と合流することなんだろうけど、その前に面倒な奴と出会わないことを祈るしかないって感じか……」
そうはいっても既に辺りからは殺気が蔓延っており、戦闘開始の合図が今か今かと様子を伺っている様にも思える。
そしてついに、戦いの火蓋が切って落とされる。
「――今ここに!! 断罪の宴、ギルティサバイバルの開始を宣言するッ!!」
「……勝利条件“の”一つは三日間生き残るだけ……てことは、三日以内に出るだけの賞金を稼いでとっととこの場を抜け出すのもありなのか? 場所までは指定されていないワケだし……」
普通に考えれば力帝都市よりも広い空間を与えられているのは単に互いの戦闘に支障が無いようにという意味だろうが、この場合脱出するにあたっても単に広いだけで外側まで抜け出すことが出来ないようにという意味も含まれているのだろうか。
「……無駄な気がする」
となればいち早く緋山さんの元に向かって、四人で生き残ることさえできれば――
「――って、そんなに簡単に上手くいくワケないか」
物陰からぞろぞろと雑魚敵登場。とりあえず全員犯罪者なんだしぶっ飛ばしても問題ないよね?




