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第三話 全選手、入場!!

今回は榊視点の一人称の文章となります。なお、この後は主にひなた荘にて澄田詩乃と藁墨神住のテレビ実況を通した緋山側の視点と、一人称の榊視点の構成となる予定です。

「――って、ここはどこ?」


 この俺、榊真琴が拉致されたその先に広がっている光景は、第十四区画が一番近いといえる光景だった。ただ一つだけ違うと分かるのは、それが時間の経過による頽廃たいはいではなく、長年続いているとしか思えない争いの残骸だということだろう。


「どういうことですか」

「なんだ、招待状を見たのではなかったのか?」


 既に内容は把握していて当然と言わんばかりだが、こっちとしては全くもって状況がつかめないでいる。

 ただ一つ分かるのはこの区画から、あるいはこの場所から一刻も離れるべきだと本能が告げている。


「……震えているのか?」

「そりゃいくらあたし達が知ってる市長だからってこんなところにいきなり押し込まれちゃね」

「招待状に目を通していないのは百歩譲るとして……まさか貴様、バウンサーによるデモンストレーション番組、ギルティサバイバルを知らないのか?」


 ギルティサバイバル……えっ?


「……うっそでしょぉおおおおおお!?」


 あれあまりにも力のインフレが凄まじすぎるせいで日曜番組が幼稚化した一番の原因だし、しかもあれに出場しているのってほぼ全員犯罪者だし俺犯罪やってないし!


「見ての通りここは第十四区画と似ているが、力帝都市選りすぐりの猛者が集う本来の意味での楽園ヴァルハラ、第一区画だ」


 そしてこの市長の言葉が、よりにもよって最強最悪の区画に最悪のイベント参加者として放り込まれてしまったことを決定づけてしまう。


「あたし何もしてないんですけどぉ!?」

「貴様の罪状は既にある。レッドキャップらと結託し、第十二区画で無関係の企業ビルを破壊した行為、見過ごすわけにはいかない」

「だっ、あれは――」

「問答無用だ。我が人民を避難させていなければ、どれだけの死者がでていたか」


 確かに言われてみればそうだが……でも主犯はあの赤帽子バカ名稗閖威科なびえゆりいかじゃん!


「心配せずとも、その二人も呼びつけてある。存分に生き残るがいい」


 ――って人の話を聞く前に既に消えちゃったんですけど……といったところで、区画いっぱいにアナウンスが鳴り響き、こういう番組に疎い俺ですら聞き覚えのあるあの声で実況が始まる。


「ついに始まりましたギルティサバイバル!! 司会はこの私力帝都市のご意見番こと新舘あらたち一子いちこでお送りいたしまぁす!!」


 あー! 何か聞いたことがあると思ったら以前インタビューしてきたあいつかよ! 


「もしかしてあの時点で色々と市長に向かってまずいこと言ったのが原因か……? いやいや、器物損壊が理由っていってたしそんなことないよネ☆」


 もしそうだとしたら緋山さんもここにいる可能性がある……? いやまさかね。

 そんな感じで聞き流していると、空から巨大なモニターとそれに付随したスピーカーが四方についた巨大な飛行物体が姿を現した。そしてそこには女の子の姿となっている俺の姿が映されるとともに、今回のサバイバル参加メンバーの紹介を司会ある新舘が熱を持った声で話し始める。


「まず最初に我等が『全能』たる市長に連れられてきたのはさかきマコ!! 持ち前の能力である『反転リバース』はあらゆる事象を反転させるという、まさにSランクに相応しい能力者!! その妙なエロチックな雰囲気から密かなファンクラブまであるとされる彼女ですが、一体どんな罪を犯したというのでしょうか!? はたまた単にSランクの中から無作為に選ばれただけなのか!? 個人的には同じ女性としてエロ――ゴホン! 美人すぎるという理由つみで選ばれて欲しいです!」


 おい。どうせなら無作為に選んだってことにしておいてくれよ市長――ってそれより今なんて言ったんだこの司会者は!? 


「続いてこの人!! Sランク界隈では恐らくトップクラスに有名、かつリア充死ねという重い罪を背負ったこの少年!! 緋山ひやま励二れいじだぁー!!」

「やっぱり……リア充死ねってのには同意だけど」


 多分生死をかけたサバイバルでツッコミにまわってる俺の心持ちがおかしいだけなんだろうけど、モニターには思いつめたような表情の緋山さんの姿が映っている。

 多分今回は市長に陰口叩いた輩が集められたんじゃないかと思い始めたところで、俺が最も予測できなかった人物の名前が読み上げられる。


「連続して二人の登場!! なんと!! あの伝説の『破壊者デストロイヤー日向ひゅうが久須美くずみと、元最強の低温能力者である『冷血漢ストーンコールド』ヨハン=エイブラムスの登場だぁー!! これはまた想像を絶する、今までにないサバイバルとなりそうです!!」


 俺は耳を疑った。あの二人が、ひなた荘の大家と穀潰しの二人がサバイバルに参加させられていることなど想像すらできずにいた。


「続いて現れたのは現低温能力者最強の『冷血クルエル』ことゲオルグ=イェーガー!! あぁーっと!? まさかまさかの超展開!? 『創生者クリエイター』TOHRUこと弥代やしろ通司とおるサマまでぇー!?」


 もはや残りの面子メンツの事など言葉半分の理解しか進んでいなかった。今の俺の思考を支配しているのは、どうして日向さんとヨハンさんがこの場に呼び出されたかということだ。無作為にしては妙に面子が固まり過ぎている。何か市長の意図があるかのように感じられる。

 そうやって考え事をしている間にも招かれた客人せんしゅが集まってきたところで、唐突に実況の声がより大きくなると共にその声色が憎しみに染まっていくのを耳にする。


「そして、遂に来ました……! 我らが力帝都市市民の敵、否!! 全ての世界の敵!! 彼の名を読み上げることすら嗚咽おえつと苦痛と感じさせるほどの極悪!! 誰も彼のことを、いや、奴のことを好きな者などいるはずがない!! しかし、毎年毎年奴が死ぬことだけを願っているのは、誰しもが思っているはずです!!」


 今までとは随分とうって変わった熱い紹介だが、普段サバイバルを見ない俺ですら、噂程度には聞いたことがある。

 ――『この世で最もつよい暴君』という異名を。


「『暴君の心(ブロークンハート)』!! ここはいつものごとく、敢えて検体名だけでそう呼ぶことにしましょう!! 一刻も早い死が訪れることを願って!!」


 モニターにすら移されないということは、よほどの人間なのだろうか。いやそもそも人間なのか……?


「……深く考えておくのは止めておこう。何かイライラしてきたし」


 そんな感じで考えるのをやめると、続いてモニターには真っ黒な布でぐるぐる巻きにされたミイラのような人影が映しだされる。


「――そしてもう一人。誰かが手を下さなければ、あの危険人物は今宵も誰かを血祭りに上げるでしょう! 『苦労人G(クローリング)』オズワルド=ツィートリヒが、獲物を求めて這いまわります!」


 一見して最初に沸いたイメージは、鎖を破って檻を出た猛獣だった。モニター越しに見える、ぐるぐる巻きの黒の包帯の隙間から見える口は、まさに獲物を求めて這いまわる肉食獣の口元という表現がぴったりだった。


「……ひとまず、関わらない方がいいのは分かった」


 これで全ての参加者が出そろったかと思いきや――突如として場面が切り替わり、たった今異空間をこじ開けて『全能』たる市長と一人の少年が姿を現す。


「そしてなんとぉ!! 今回初のサプライズゲスト! まさかまさかのAランクの関門、穂村ほむら正太郎しょうたろうの登場だぁー!! 彼もまたこのサバイバルをより一層熱く、燃え上がらせてくれることでしょう!!」


 確かにそこに映っているのは、その場を立ち去ろうとする市長を睨みつける、あのよく知った顔が映っている。


「……なんであいつもでてるのよ」


 俺が知っているもう一人の炎熱系能力者――紅蓮の炎をあやつる男、穂村正太郎がこのサバイバルに急遽参戦することとなった。

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