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第四十四話 bombshell

「御託はいいからさっさときなさいよ」

「いっくぞー! 電磁加速エレキックスタート!」


 俺が想像していたイメージを上回った朧木の動きは、それこそ不意に動かれた時点で俺の反応は遅れざるを得なかった。


「それってまさかローラースケート!?」

「よく気がついたね!」


 というより能力発動と同時に靴がスッと浮いたことには気が付いたんだけど、まさか生体電流で起動するとは考えていなかったこっちにとって、余計な加速要素は完全に脅威となっている。


「女の子を蹴るなんて本当はいけないんだけど……鉄球蹴速オンラインロケーター!!」


 靴の裏のローラーに電気を纏わせ、高速回転させる。するとそれはまさに一種のチェーンソーといっても過言ではない。


「っとおぉ!?」

「うわっと!? 予想外にやり過ぎた感じかな……?」


 しゃがんで朧木の後ろに回り込んだところで、俺は壁に刻まれた傷跡に空いた口がふさがらなかった。そして朧木としても威嚇のつもりで軽く回し蹴りをしたつもりなのであろう、しかし壁には見事に高圧電流で焼き切ったかのような黒い線が一本入っている。


「……ちょ、ちょっとやりすぎたかな?」

「“いいぞ! 素晴らしい! それほどの電力ショックがあればきっと彼女も目を覚ますはずだ!”」


 目を覚ます前に永眠しそうな威力なのは気のせいか。いや、気のせいじゃないな。

 電気といえばプラスとマイナス……これが反転に仕えそうだな。


「でもやっぱりこれは危険だから、直接電撃(ショック)を与えた方がいいと思うんだ!」


 そう言って朧木は再び両手に電流を纏ってその間を通電させ始めるが、俺にとってもむしろそっちの方が都合がいい。


「プラスかマイナスか……あっ、電流と電子の流れる向きって逆だったっけ」


 だとしたら――


「ちょっと強めの電流を流すけど勘弁してよね!」

「だったらそれを受け流すまで……!」


 朧木は両手の電気を右手へと集約し、俺に向かって振りかぶり始める。


短絡通電ショートショック!」

「ッ! 反転リバース電子化エレクトロニカ!!」


 ――その瞬間に俺は自分のすぐ横の何もない空間に左手を伸ばし、空間にあるプラスの電荷をすべてマイナスへと反転させる。これにより朧木から放たれた電流は俺に向かうことなく俺のすぐそばの電子だらけの空間へと吸い込まれ、そのまま空中で放電しきってしまう。


「えっ!? 今何したの!?」

「だから無意味だっていってるじゃん」

「“くっ、何らかの方法で自分のすぐそばに電子で充填された空間を生成し、電流を逸らしたか!?”」

「ご名答」


 とはいっても朧木はまだまだやる気満々のようで、両手足に電流を纏わせて更には髪の毛まで静電気で逆立てている。


「せっかく手に入れたこの力、僕はみんなのために使うんだ!!」

「だーかーら、その皆の為に使う力は間違ってるんだって!」


 四肢から放たれる電撃を全て受け流しては何とか説得しようとしているのだが、それが余計に朧木の考えを凝り固まらせてしまう。


「むっ、やはりマコさんは操られているに違いない! 僕を助けてくれたマコさんはそんなことを言うはずがない!」


 そのマコさんが言ってるんだから大人しく従えっての! 


「電気……確か初心者マニュアルには、地面は絶縁体だから電気を地を這うって言ってたような……」


 えっ? そうなの? ていうかそもそもマニュアルって何!?


「でも地面を通っている内に放電されて弱くなるから……最初から最大電力フルチャージで!!」


 そういうと朧木は両手足に散らばしていた電気を全て右手に集約させ、そして――


大放電エレキバースト!!」


 名稗の電撃ショックにも勝るとも劣らない威力の電撃波が床を疾走すると共に、その影響が強すぎるのか、床の表面にヒビが同時に走り始める。


「なっ!?」

「これが僕の力、『衝撃ショック』だ!!」


 名稗の下位互換ともいえる能力。さっきから身体からしか電撃を出していないところから身体強化型フィジカルチューンだと予測できて、しかも第一能力プライマリが電気系の操作、そして第二能力セカンダリは文字通り衝撃を与える力。


「てことは、どこかから名稗の能力が流用されたか、もしかして――」


 『最初期の能力者達プロトタイプナンバーズ』が何かと関係している……?


「――って、落ちるってば!?」

「うわぁあああああッ!?」


 俺はともかく朧木、あんた自分でしかけといて自爆するってバカじゃないの!?

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