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第四十二話 集結

 前半一人称、後半三人称視点になっています。

「ちょっとその能力どうやって手に入れたの?」

「手に入れた? 違うよー、ちゃんと能力開発してもらったんだってば」


 そう言って朧木はもう一度同じように両手の間に電流を発生させるが、問題は能力を持ったことじゃなくて、会得した方法だ。もし前回と同じようにカプセルを使ったとしたらって――


「――鼻血を出していない?」

「鼻血? あ、ま、まあ本人を前にしてそんな典型的な反応をするとは流石にしないよ!」


 いや違うそっちじゃない。前回はカプセルを使っていた場合、能力を酷使すればするほど脳にダメージが入っていってるのか何か知らないけど、鼻血を垂らしていた事を俺は覚えている。

 だが普通に能力を振るえているようなこの調子だと鼻血を出したことは無いか、あるいは別のインチキ能力開発を仕組んだのか。


「どっちにしても、痛い目に合ってから没収しないといけないかな!」

「没収!? 一体何の話を――」

「“この放送が聞こえているかな? 朧木アルフレッドくん”」


 突如として掛かる館内放送。その声に聞き覚えはなく、どうやらオルテガに台頭して新たにリーダーとなった奴がいるようだ。


「あんた、誰?」

「おや、その声はもしや巷で噂の『反転リバース』じゃないか?」

「あたしの事はどうでもいいでしょ。あんた、ラグナロクを再建してどうするつもり?」


 まさか俺の口から潰れた筈の組織ラグナロクという単語が出てくるとは思っていなかったのか、あるいは一瞬にして素性がバレた事に焦っているのか、放送から次の言葉が出てこない。


「……なーんだ、図星って感じ――」

「“朧木くん! 丁度いい、恐らく目の前にいるであろう『反転リバース』と戦ってみなさい”」

「なっ!? あたしと戦えって――」

「そんな! マコさんと戦うだなんて!」


 どうやら俺と朧木とでは違った意味で戦いたくないという一つの解答を持っているようだ。俺は都合がいいと思い、このままゴタゴタの内に不意打ちで朧木を一撃で静めようとしたが――


「“しかし相手は洗脳され、我々のことの方を悪党だと思っているようだぞ”」

「えぇっ!?」

「……はぁ?」


 洗脳しているのはあんたらの方でしょうが。

 俺は間の抜けた声で呆れたが、朧木の純粋な心にさらに頭を抱えることになる。


「そうだったんですか博士!?」

「“そうだ。だから君の手で彼女を救って欲しいんだ”」


 まさかの展開であるが朧木の方はやる気満々のようであり、俺を前にして勇ましく両手の火花をバチバチと鳴らしている。


「待っててねマコさん! この朧木アルフレッドが目を覚まさせてあげるから!」

「ハァ……ったく」


 電気って反転するとどうなるんだっけ……あれ、思いつかないや。


「じゃあ普通にやらせてもらうけど、ちょっとばかり痛いの位は我慢できるよね?」

「マコさんこそ、ビリビリしますけど頑張って耐えてくださいね!」


 えっ、ちょっと待ってそれどんなプレイ? って、そんな余裕かましている雰囲気じゃなさそう。


「いくよ! 僕の力を見せてやる!」

「御託はいいからさっさとかかってきなさいよ――」



          ◆◆◆



「――あっれぇ? おかしいなぁ」


 第十二区画。鏡面の様な壁面のビルの一階にて、一人の長身の女性が首を傾げる。左手であやとりをしながら長い髪をかき分けつつこの状況を整理しようと、名稗なびえ閖威科ゆりいかは思案を巡らせていた。

 一階には沢山のロボットの残骸と、戦闘が行われていたような形跡クレーターが残っているだけで、人影など一切なかった。

 一階の外の道路はというとまるでこの中の惨状など露知らずといった様子なのか、第十二区画の住人がゆうゆうと歩いている。


「確かここにいるって調べがついたはずなんだけどなぁ」


 情報機器の捜査が得意な相方の調べにより、名稗はこの場にいるはずの第十四区画から急に消え去ったとされる一人の少女を探していた。


「確かに所属しているって調べがついている筈なんだけど――ん?」

「なっ!? お前は!」


 気配がすると共に聞こえてきた声に対し、名稗は心底面倒くさそうに振り返りその姿を確認する。


「あぁったく、なぁんであんたがここにいるんですかねぇ?」

「逆に聞かせてもらおうか。どうして犯罪者の君がここにいるんだい? やっぱりここが悪の中枢だから?」


 赤いニット帽を目深にかぶったヒーロー、レッドキャップが名稗の姿を見るなり戦闘態勢を取っている。


「あー、別にお姉さんはあんたと戦う予定なんてないんだけどぉ?」

「一体何が目的だ! 僕は匿名で受けた電話から、この場所が違法な手段で能力開花を薦め、更に洗脳装置を使って私兵にしていると聞いている……君もそれに手を貸して――」

「なぁんであたしがそんなくっだらねぇ事に手を貸さなくちゃいけねぇんだよぉ!!」


 名稗にとっては逆鱗に触れられることに等しかった。まさにその洗脳装置によって、かつての同僚が行方不明となっているからだ。


「ッ、まーずはあんたに少し黙ってもらう方から優先すべきかぁ?」


 名稗が周囲にピアノ線レベルの細い糸を展開すると、レッドキャップは更に険しい視線でもって名稗を見据える。


「まずは君を捕まえ、罪を償わせる!!」

「償うってなんだよ!? あたし達が、『最初期の能力者達プロトタイプナンバーズ』が今の能力社会を作り上げる礎となってしまったことが罪だってかぁ!?」

「っ、それはどういう――」

「“おやおや、まさか『最初期の能力者達プロトタイプナンバーズ』の一人がこんなところまで、もしや能力開発の手伝いにでも来てくれたのかな”」


 名稗たちがいる一階に、館内放送がかかる。その内容は到底友好的とは思えないどころか、むしろ挑発を仕掛けているとしか思えない。


「能力開発ぅ? 友達ダチを洗脳しちゃった組織にわざわざ協力するバカっていると思う?」

「“っくく、まあいい。協力してもらえないのであれば、無理矢理にでもしてもらうまで!!”」


 一階の受け付けの床が抜け、下から何かがせり上がってくる。


「……なんだそりゃ」

「どういうことだ!?」

「あたしに訊くなよバーカ。あたしもこの組織を潰しに来てんだから」


 一時休戦。名稗とレッドキャップは床からせり上がってくる何かに向けて、改めて構えを取る。そうして上がってきた床の上にあるのは、一台の巨大なロボット。


「“フハハハッ! どうだ、恐ろしいだろ――”」

「さーて、短絡ショートさせて解体バラすのに何秒かかることやらぁ」

「お願いだから、まとめて解体するのはやめてよね」

「だったら死ぬ気でよければぁ?」


 ここに善と悪(?)による即席タッグが組まれることとなった。


 

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