EX2話 力帝都市インフォメーション その2
「ほな、メインディッシュいってみよかー!」
張り付いた作り笑顔ではあるものの、それの上からでも喜んでいる様子を伽賀は表に出していた。
「さてさてトップバッターはー……むむむっ!?」
伽賀は早速一人の人物の名前の前でカーソルを止めて顔を近づける。
「これはこれは、穂村クンのライバルというか、超えるべき壁と言うべき存在がいるじゃないの!」
氏 名:緋山 励二
能力検体名『粉化』
力帝都市ランク S
万能型の能力者であり、現状トップクラスの炎熱系能力者と言っても差し支えはないであろう。しかしながらに第一能力は身体強化型の身体の粉末化も捨て置くことはできない。身体を砂と化すことで大抵の物理攻撃は全て回避可能な上、身体に接触した部分もまた同様に砂漠化させることで、大規模な流砂や砂嵐を生み出すことができる。
そして彼の代名詞である『猛り狂う炎』、それは第二能力による空間影響型によるいたるところからの噴火によるものが大きい。相手の足元、背後、更にその規模も内に潜む『■■』を上手く扱えさえできればイエローストーン級の噴火すらも容易く行えるであろうことは間違いない。
『全能』の方も彼の能力には興味があるようであり、『■■』とは別に彼を手元に置いておきたいという意向もあるようである。
「なんや、えらいけったいな能力やな……それにしてもイエローストーンって、あのイエローストーン国立公園のことやろか? 一度噴火すれば地球が崩壊するっていわれとるけど……まさに世界を動かすSランクにふさわしいかもしれへんな」
おお、怖い怖いと言いながらも笑顔を決して崩すことなく、伽賀は更にカーソルを動かす手を止める事無く次の人物へとページを進めていく。
氏 名:守矢 小晴
能力検体名『投影』
力帝都市ランク S
万能型の能力者であり、第一能力は空間影響型の物質投影。第二能力は自身に降りかかる物理的接触を全て跳ね除ける能力であり、第一能力の規模や質は『創生者』のように生物を生成できないという点から劣るものの、第二能力により今まで誰も彼女に物理的に触れた事が無いとされているが、唯一穂村正太郎が触れた事があるという記録が残っている。
守矢四姉妹の長女であり、第十四区画を実質的に治めている存在ともいえる少女。一見すると平和的な性格に見えるが、その裏に潜んでいる殺人衝動には気をつけなければならない。とはいえ『■■』には到底足元にも及ばない取るに足らないものである上、捨て置いた第十四区画にいる限り、我々にはあまり縁がない人物ともいえる。
「その割には三女をよく見かけるで市長はーん。てか穂村の奴まーたフラグを立てとんのか、あの鈍感アホめ」
氏 名:尸 劫肆郎
能力検体名『屍±4』
力帝都市ランク S
身体能力型の能力者であり、即死属性を持つ黒い霧を発生させ、それをあらゆる形に変化させ、死を模らせる力。発動者は触れた者に対する生死与奪権を持つこととなり、その場で即死させる、あるいは死体から生き返らせるといった事が可能となる。
本人の性格は至って温厚であり、普通に接していればまず殺される心配はないとされる。ただし死人として生死与奪権を握られないといった意味では無い。
「噂じゃ第十区画の人間は全員死人になっとるっちゅう話やろ? けったいな奴やなぁ。次いこ次」
氏 名:ヴァーナード=アルシュトルム
能力検体名『吸収』
力帝都市ランク S
身体強化型の能力者であり、第一能力は瞬間移動に近い形で即座に相手の死角へと移動できる能力であり、彼の職業である均衡警備隊の最高責任者として、立てこもっている犯罪者の死角に即座に転移しては捕まえるといった偉業の支えとなっている能力である。
そして第二能力であるが、これは相手の能力や事象を文字通り吸収してしまうという能力であり、そのキャパシティも■■■■ほどあることから大抵の能力者に対して天敵ともいえる能力だろう。
「うへぇ、けったいな能力やでぇ……ん?」
ここで伽賀の手が一旦止まり、とある人物へと注目が集まる。
「なんやこいつ等、初めて知ったSランクやで……」
氏 名:榊 マコ (本名:■■■)
能力検体名『反転』
力帝都市ランク S+
現時点では『■■■■』、『創生者』に続いて最も『全能』に近い存在として注目されるべき者である。万能型の能力者であり、第一能力は事象、物、事、それら全てを独自の解釈でもって反転させることができる。条件付であるとはいえほとんど思いのままに事象を操れるということはまさに『全能』と近しい力といっても過言ではない。
更にこの被験体については『■■』も内に潜んでいることもさながらにして、第二能力については驚愕すべきことに死んだ際に再び■■■■■■■■■、■■■――
「っかー! 肝心のところが見えへんやんけ!! つっかえ!」
伽賀は悪態をつきながらも、最後のページを開こうとしたが――
氏 名:■■■■
能力検体名『■■■■』
力帝都市ランク Unknown
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「げっ!? ブラクラかいな!?」
伽賀は驚きのあまりコンピュータの電源を根元から切ってしまい、即座に自分の布団の中へと潜り込む。
「やばいでー、これは」
伽賀は冷や背を垂らしていたが、同時に興奮もしていた。あそこまで厳重にセキュリティロックされた者は一体どういうレベルの能力者なのか、Sランクすら上回る何かの存在を、伽賀は確かに感じ取っていた。
「ほんま、火遊びは穂村だけで十分やってことかな……」
◆◆◆
しかしこれによって『全知』から目をつけられるのではないかと伽賀は心配していたが、その後何の音さたもなく、彼女は今日も平穏な学校の休み時間を過ごしている。
「穂村ぁ~、今度は勝てるんかぁ~」
「勝つ気でいるに決まってんだろ。バカが」
「……ほんま、もっと上もおるんやから時田くらいさっさと片さんと」
「何か言ったか?」
「なーんも!」
といったところで力帝都市の能力者が出てきました。『冷血』や名稗閖威科など一部はいませんでしたが、そこは伽賀の食指が動かなかったということで(汗)。