EX1話 力帝都市ランキングインフォメーション その1
今回はB~Aランクの面々の紹介です。中には紹介されていない人物もいるかもしれませんが、その人物は敢えて外しています。
「――なんや、怪しい裏店で買った代物にしてはちゃんとハッキングできるやん」
暗い部屋の中、モニターの反射光によって浮かび上がる少女の笑顔。笑顔を浮かべた理由はネット上の目的のページにたどり着けたことであるが、その笑顔は決して柔らかな表情ではなく、仮面のように張り付いたような作り笑顔のように見える。
「流石は裏ルートで流通していた第十二区画製のハッキングウイルス入りの外部メモリ、こうも簡単に暗号を解読して解除していくなんて凄すぎるわー」
胡散臭い関西弁を話すショートヘアの少女。名は伽賀師愛。Dランク。特筆すべき力、なし。
そんな少女がハッキングをしてまで見たかったもの。それは――
「でたででたでー、『全知』市長による力帝都市能力者名簿一覧! 一度見ておきたかったんや」
この力帝都市に登録された全ての能力者の個人情報。どのような力を持っているのか、ランクはどこに位置づけされているのか等、様々な情報がそこに記載されている。
「早速見て行こうやないか! まずはBランクからや!」
加賀にとってはCランクにはもはや興味の対象とはならない様子で、まずは市民の暴動レベルなら一人で鎮圧できるとされているBランクの面々の検索を開始した。
「Bランクといえば、まずはこいつやな!」
そう言って伽賀が自信満々にクリックをした最初の人物とは――
氏 名:穂村 正太郎
能力検体名『焔』
力帝都市ランク B
炎熱系能力者であり、性格は熱しやすく冷めにくい。第一能力は身体強化型の炎の顕現化。第二能力は常時発動している身体強化型の■■■■■であるが、本人は未だに気が付いていない。更にその身の内には『■■』を二つ所持しており、現在片割れである『■■』は行方不明。なお、もう片方はリュエル=マクシミリアムを殺害まで追いやった際に顕現している。
現在Aランクの関門である。
「やっぱり親友である穂村君から調べてやるのが伽賀さんのいいところ――ん? なんやこの黒塗り部分は? それより穂村のやつ人殺ししとるんかいな!? でもリュエルといえば第一魔法大学の教授であって、確かSランクやろ? これは誤情報やな」
流石は『全知』がまとめた情報とでもいうべきであろうか、あるいは力帝都市最強のファイアウォールとでもいうべきであろうか。違法ルートで手に入れたハッキング装置ですら、完全に暗号が解読できずに黒塗りになっている部分がモニターに表示されている。
「まあええわ。次や次!」
氏 名:之喜原 涼
能力検体名『人形』
力帝都市ランク B
空間影響型の能力者であり、第一能力は文字通り人形に命を与えるかのように自由に操作する能力。第二能力は同じく空間影響型であるが、効果は相手を確実に騙すことができる能力。一昔前は犯罪組織の末端で働いていた経験があるものの、現在は目立った行動は起こしていないと思われる。
「ほー、この之喜原っていう人、第二能力が面白そうやな。おっ、これって噂の守矢四姉妹やないの?」
氏 名:守矢 要
能力検体名『塊』
力帝都市ランク B
万能型の能力者であるが、本人は未だに気が付いておらず。第一能力は空間影響型で空間に石などの塊を生成。第二能力は身体強化型の自身の耐性の強化。14才でありながら嗜好の成長はあまりないと思われる。
「何や少女趣味ってことかいな。どうでもええけど」
氏 名:鷺倉 十一
能力検体名『縦横無人』
力帝都市ランク B
身体強化型の能力者であり、第一能力は文字通り縦横無尽に壁であろうと天井であろうと自在に行動ができる力。第二能力は自身の上下左右にいる人間を■■■に格納できる力。最大二名。その能力を活用して『人さらい屋』を営んでいた時期もあったが、現在は不明。
「こいつが確か穂村と戦ったんやっけ。ボロ負けしたらしいけどなぁ」
伽賀はケタケタと笑いながら戻るをクリックすると、次の閲覧ページへと向かう。
「ほな、次Aランクいってみよか」
氏 名:時田 マキナ
能力検体名『観測者』
力帝都市ランク A
万能型の能力者であり、第一能力は空間影響型の時間を停止させる能力。精神状態によるものの、最大五分間の時間停止が可能と記録されている。第二能力は身体強化型の観察力の強化。相手の細かい動作や表情の読取を得意とする。
現在Sランクへの関門である。
「ほんま、こんなのに執心する穂村の気がしれんわ」
氏 名:ロザリンデ=ヴラド
能力検体名『血戦』
力帝都市ランク A
身体強化型の能力者であり、第一能力は自身の血液から兵器を作り上げる力。その規模は拳銃から核ミサイルレベルまで幅広く可能。しかし戦車等巨大な兵器となると血液の量が限られている人体では生成は困難とされる。現在精神崩壊により幼児退行をしている。
「何やねん精神崩壊って、一体何があったんや……」
氏 名:エドガー・ジーン
能力検体名『超能力者』
力帝都市ランク A
万能型の能力者であり、現在確認できるだけで七つの力を行使できる能力者である。代表的なものとしては念力、瞬間移動、透視、精神共有などが挙げられる。人体解剖に対する異様な執着心があり、精神的に不安定な部分あり。
「えぇ……サイコパスやんけ」
伽賀は最後のエドガーの欄を見てひきつった表情を浮かべると、Aランクのページを閉じた。しかし気を取り直すとまるでメインディッシュを待ち詫びていたかのように、声のトーンを一段と上げてにこやかにこういった。
「ではではお待ちかねのSランク、いってみよか!」
今回主にパワー・オブワールドの方で出ている人の方が多い気がしなくもないです。それと澄田詩乃がリストにいないと思われた方もいるかもしれませんが、彼女はランクを放棄しているため『全知』のリストから外れているといった状況です。
次回、Sランクの紹介です。ようやく榊マコや緋山励二などが出てきます。後はまだ未搭乗の人物も出るかもです。