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第三十三話 重力

「貴様等は後ろの小娘を片付けておけ。私の相手はそのピンク髪の女だ。おい貴様――」


 つまり俺ってことですね分かります。というより他にいないでしょうし。『グラビティ』だか何だか知らないけど、さっさと――


「――跪け」

「ッ!?」


 突然背中にとてつもない重りを叩きつけられたような――その場だけではない、周りの全てが自重の増加によって自らに耐えられないように見える。

 人、物、無差別に襲い掛かる重力。これが『グラビティ』の能力ということか。


「ッ、反転リバース!!」


 重力がかかりすぎるならば、無重力に反転させればいい!


「って、無重力とか初めてだからどうすればいいのやら……」


 とりあえず空を飛ぶ感覚に近いようなイメージでいればいいかどうなのか、一応思った場所へと進めてはいるようだけど――


「ほう! 面白い! 私を前にして跪かなかったのは貴様が初めてだ!!」


 相手は賞賛しつつも俺がこうして浮かび上がっていることの方が不満なのか、更に重力を増して俺を押しつぶそうとしてくる。


「うわっと!?」


 見れば俺の足元には巨大なクレーターがメキメキと音を立てながら広がっていき、その場所における重力が異常なことになっていることを目に見えて教えてくれる。


「ちょっとこれは冗談じゃ済まされないかな!」


 俺は即座にその場を離れて体勢を立て直して足元の石片を拾い上げて投げつけ、そのまま小石を大岩へと反転させて攻撃を仕掛けた。


「無駄だ! ブラックホールッ!!」

「げっ! マジかよ!!」


 まさかの事象を前にして女の子らしい発言なんてできるはずがなかった。軍服の少女が前へと差し出した右手からは黒い渦が発生し、俺が飛ばした大岩を極限まで圧縮した後に渦の中心へと飲み込んでいく。


「まさか……重力使いってやつ?」

「ようやく気がついたか。そうだ。私こそがSランク、『グラビティ』のエルモア=ハサウェイだ!」


 まさかこの事件でいきなりSランクにぶつかるとは予想できなかった。そして今のままではSランクに挑む覚悟はおろか、準備すらまともにできていない。


「こうなったら……大震脚クラックステップ!!」


 俺は足元のヒビの入った床に手を当て、元々強かったはずの強度を反転させて床を脆くした上で思いっきり踏み抜いた。


「ん!?」


 一ヶ所だけに穴を開けるつもりだったが、元々の建物自体にもガタが来ていた様で、小さな穴がフロア中へと広がっていく。


「逃げるよ守矢!」

「えぇっ!? ここまで来て――」

「人が折角逃走経路用意したんだからついて来てよ!」


 ここまで来てアレは割に合わない。Sランクと戦うのであればもっと場所も広く、最悪の場合の逃走経路まで確保しておかなければいけないことは今までの戦いで分かってきている。

 俺は下の階から即座に外の方へと飛びだすとそのまま地面をクッションのような柔らかさへと反転させて着地、そのまま廃ビルから闘争を図る事に。


「あの子、『グラビティ』って能力者がSランクなんだよ!」

「何ですって!?」


 守矢もまさかSランクがこの件に関連しているとは思っていなかったらしく、目を丸くして驚いている様子。しかし驚いているのはこっちの方も同じであり、しかも重力を使う能力者なんて聞いたこともないし、あんな服装をしてあんな性格をしているなんて今日初めて知ったことだ。その辺も含めて撤退する意味はあると考えられる。


「だからここは一旦体勢を立て直して――」

「誰が逃がすと言った!」


 俺は済んでのところで立ち止まった。何故なら目の前にブラックホールと同じ黒く渦を巻いた球体が落下すると共に、周囲一面を押しつぶしたからだ。


「なに、今の技」

重力爆弾グラビティボム……とでもいっておこうか」


 重力にそんな法則なかったと思うんですけど。重力だったらなんでもアリなのかこの子は。


「フハハハハッ! むしろ貧弱な発想力しか持てぬ愚か者にはこのような技を練り上げることなど不可能!!」


 言ったなこいつ。なんでもありならこっちもなんでもありでいっちゃうよ?


「後悔しないでね……!」

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