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第三十二話 悪の組織って大抵フハハッて笑う人が一人はいますよね

「それそれそれそれそれぇ! あーはははははっ!」


 どこの宇宙の帝王なんだよとでも突っ込むレベルで紫色の光弾を次々と射出するノーブル。当然辺り一面には火の手が上がり、一体どこから湧いて出てきたのかと思えるほどのダストの面々が現れては逃げ惑っている。元からこのビルを半分ねぐらにしていたのか、各階の階段を駆け上がった先には必ずといっていい程ダストが顔を出し、そして即座にノーブルの光弾によって爆破されていく。

 俺達はその後を送れながらに必死に追うが、ノーブルの進軍スピードの異様な速さについていくのがやっとである。


「軽く虐殺していませんかねこれ……」

「アァ? コイツ等が今まで闇に葬ってきた人数に比べたらまだまだ甘ぇだろ」


 死角からの不意打ちを軽くかわしつつ、ノーブルはお返しといわんばかりにダストを天井へと突き刺すようなアッパーカットを打ち返す。


「すっご、天井に突き刺さる人を初めて見た」

「それより先を急ぎましょう。うちの調べによればこの上に取り纏めているヤツがいるはずです。攫われた人もそこに」


 ならば余計に魔人ノーブルより先に行かないと、まとめて消し炭にされた後だと笑えなくなってしまう。そう考えた俺はとっさに適当な事を言って魔人の気を逸らしてみることを考えたものの、とっさに出てきた言葉がとんでもないことだということに気が付かないままに口にしてしまう。


「あっ!」

「ん?」

「あっちで緋山さんが澄田さんの服を脱がしていますよ!」


 その瞬間――視界が一瞬にして深紫を超えた深淵の黒い炎の壁に覆われてしまう。


「んだとゴラァッ!?」


 そのまま俺が適当に指を指した窓の外の方へと飛び立つと、背中から黒炎の翼を生やした状態で何処へと無く飛び立ってしまう。


「あのヤロウ、そんなにやりたきゃオレのシャドウ千人組手を組ませてやるよ!!」

「……ど、どこかに行ってしまいましたぜ……」

「緋山さんごめんなさい。あとご愁傷様です」


 飛び立った後にはいまだに黒い炎が揺らめいているが、一向に消える気配がない。それどころかコンクリートでできていると思われるビルの壁ですら灰へと変え、燃え広がり始めている。


「げっ、これは早くしないと……」

「炎がビルを倒壊させる前に、決着をつけないとですね」


 黒い炎に触れないように大股で飛び越えていき、俺達は最後の階段を駆け上がっていく。


「さて、と――」


 目の前に現れた最後の扉。他の者とは違って補修されている所から、中に人がいることは確実だということが分かる。俺と守矢は扉の両端に立って中の様子をうかがう。すると女性の――少女の高らかな語りのような声が部屋の中から聞こえてくる。


「ここで大当たりってワケ?」

「だったら答え合わせと行きましょうか!」


 だからもう少し様子を見て――って、もうドアの前に岩を設置し始めちゃってるし。

 守矢はドアの前に石塊を設置し終えると、発破ブリーチするかのごとくドアに向かって思いっきり石塊を蹴りつけた。


「観念しなさい悪党め!」


 ドアは粉々に破壊され、土煙が消えると共ににポーズをとった守矢が徐々に姿を現していく。


「この守矢要がいるうちは、この区画で好き勝手なことはさせません!!」


 決めポーズのところ申し訳ないが、どうやらここにいるダストは下にいる連中とは明らかに一線を画していると思うぞ。

 俺達の目に立っているダストの連中であるが、まず目に入ったのが身に着けている装備である。下の階の輩が持っているようなちゃちな拳銃ではなく、均衡警備隊ですら持ち得ていない様な明らかにハイテクなライフル銃の様なもの。服装も防弾防刃チョッキをしっかりと付けており、統一感のある装備をしている。

 恐らく第十二区画で開発されたものだろうが、それにしても他の区画よりも、もっといえば力帝都市の外よりも時代が進み過ぎている。こんなものが外に出回ったとなればとんでもない事になることは容易に想像できる。

 だがその脅威を打ち消すかのごとく、俺が何より気になっているのが――


「――何で時代遅れの軍服を着て、時代遅れの帝王が座ってそうな大きな椅子に腰を下ろしているんですかねこのは……」


 当然のごとく悪党の親玉が座っていそうな大きな椅子に、俺と同年代と思わしき少女が腰を下ろしている。眼帯で左目は隠されているものの、その右目は野望に満ちているのか単に元々が純粋無垢だったのか、悪党という立場に似合わず妙にキラキラしているのはツッコまないでおこう。


「くくくくく、ついにここまできたか。我等ダークジェネシスのアジトに乗り込み、我が前に現れるとは!」


 あー痛い痛い痛い。なんだよダークジェネシスって、痛々し過ぎて鳥肌が立つレベルなのだが。というよりまさかビルの一角がこんなことになっているなんて、誰が予想できたのかという話だ。まさか目の前の少女も謎の怪電波あるいは能力によって自分が悪の組織の幹部だと思い込むか、あるいはそんなそぶりを見せているのであろうか。


「……あんた達、ここで何をしているの」

「ん? おやおや、ここまで乗り込んでおいて、そんな愚問を投げかけるとは」


 いや分かっているけどそんな服装をしている方の理由を問いたい。問いただしたい。小一時間ほど問いただしたい。某牛丼屋ネタじゃないけど。


「ここは悪の組織、あくどい事をやっているに決まっておろう!」

「いやだから具体的な内容を説明しないと――」

「ふっふっふ、ならばよかろう」


 少女は軍服に着いたマントをひるがえらせると、まるでどこぞの悪党のように邪悪な笑い声(を必死で出そうとしている少女に笑いをこらえる俺)をあげながら、高らかにこう謳った。


「我々は最強の改造人間を生み出すための、秘密組織なのである!!」

「オッケー、速攻潰すわ」


 やってる事はやっぱり人身売買じゃないか。こう言う輩はバカらしいからさっさと潰すに限る。

 だが俺の言葉に反応したのか、少女は眉をひそめて不機嫌そうにし始める。


「潰す? この私を潰す、だと?」

「そうだよ。こんなくだらないごっこ遊びで人身売買されちゃ困るからね」

「潰す、か……フハハハハハッ!!」


 少女はまるでそこだけ重力が反転しているかのように、マントを空に向かってなびかせている。


「この『グラビティ』を前にして、潰すというのか!! 面白い! ならば私も貴様を押しつぶして見せよう!!」

 ぎゃーっ!? なんか予想していたよりヤバそうな人だったんですけど!?

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