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第三十話 もう十分日朝ネタは堪能したんですけど……

 ――『吸収アサルト』による急襲を受けてから数日後、榊の自宅にようやく釈放の意味を示した紙が贈られた。後に調べて分かった事であるが、『吸収アサルト』は均衡警備隊バランサーという組織のトップに立つ男のようだ。

このことを知った俺はまさかこのまま指名手配されるのではと心配したが、以降の賞金首の逮捕強力に尽力したこともあってか、その後『吸収アサルト』からの警告文も家宅捜索も無く過ごすことができている。


「ふぅ、ようやく自由の身だ」

「おめでとうございます真琴さん。これでようやく外を出歩けますね」

「お兄ちゃん何も悪いことしていないのに不思議だね」


 最後のアクセラの一言が妙にグサリときたが、今の俺にとっては真っ新な自由の身に戻れたことの安心感の方が大きかった。

 しかしそれもすぐに消え去ることとなり、元の力帝都市としてあるべき戦いの世界へと引きずり込まれることになる。


「……ん?」


 先ほど郵便が来てからすぐにまた呼び鈴が鳴る音が部屋中に響き渡る。他に郵便物を受け取るようなことがあったかと首を傾げつつつも、俺は玄関の扉に手をかけて静かにドアノブを回した。すると――


「――よぉ、元気してたー?」


 玄関を開ければ銀髪のツインテールの少女が、馴れ馴れしくもこちらに手を上げて挨拶をしている光景が目に映る。


「…………」


 無言で扉を閉める俺。そしてスタスタと元の定位置に戻っていこうとしたが――


「何無視してんだゴラァァアアアア!!」

「ぎゃぁあああッ!?」


 紫炎の爆撃により破壊される玄関。そして玄関からの爆風により部屋の中へと強制的に吹っ飛ばされる俺。中で待機していたラウラは敵襲かと思ってショットガンを構えるも、ずかずかと入ってきた銀髪の少女の一睨みによって気絶してしまう。


「お、お兄ちゃん大丈夫!?」

「あ、ああ……俺まだ生きてる?」

「生きてるよバカ野郎」


 爆風に弾き飛ばされうつ伏せに倒れたケガ人に対し、さも当然とでもいわんばかりに片足で踏みつける銀髪の美少女。ラウラは気絶し俺は踏んづけられて何もできずにいる中、アクセラはというと銀髪の少女に怯える様子はないどころかどこかで見た事があるとでも言いたげにじっと俺の背中の上の少女を見つめている。


「……そうか、テメェが界世の姫君ってヤツか」


 ん? なんでそんな超速理解ができたんだ? もしや知った顔なのか?

 そんな考えを巡らせている中、その場の緊張した空気を一瞬にして壊すような言葉がアクセラから飛び出てくる。


「おばさんだぁれ?」

「おばッ……テメェ、髪の色で年齢を判断するな阿呆が!!」

「ひぃっ、ご、ごめんなさい……」


 銀髪だからってすぐにおばあちゃん扱いするのは少々賢い回答とは思えないぞアクセラちゃん。次からは言葉には気をつけようね。


「フン……さて、榊真琴」


 銀髪の少女に踏みつけられながらも、俺はこの謎の少女の正体に薄々と気づいていた。

 いつでもどこでも、相手が誰だろうと我を通す傍若無人ぶり。白髪では無いものの銀色の髪、さっきの暴力的なまでの紫炎。声色は可愛らしくも内容は荒々しい。これら全ての特徴は、性別さえ反転させれば当てはまる人物が一人いる。


「……まさか、魔人さんでしたか?」

「今は可愛らしくノーブルちゃんと呼べこの阿呆が☆」


 銀髪美少女になじられるのも悪くないですが、中の人がアレと分かっている今は単にいつもの様な対応を取らざるを得ない。


「とにかく退いてくださいよ!」

「えぇー、テメェはこういうのが好きなドMじゃないのかよ」

「残念でしたね!」

 ひとまずごろりと横に一回転して無理やり魔人ノーブルの足をどかして立ち上がると、魔人トラブルメーカーは元の姿おとこへと戻って首をゴキリと鳴らした。


「チッ、ツマンネェの」

「つまんなくて結構。こっちはようやく平穏な日々を取り戻したってのに」

「だがまだ疑いは晴れてねぇんだろ?」

「ぎくっ……」


 それを言われたら俺としても何も言い返せない。結局俺が均衡警備隊に捕まってから守矢を放置したままだし、言い訳もまだ考えていない。


「そ、そのへんは俺で何とかするし……」

「クククク、テメェはそう思ってるかも知れねぇが、相手はまたも問題を放置されたままだといって不満が積もっていると思うがなぁ」


 俺が改めて守矢の元へと向かえばいいのかもしれないが、片や魔人の言葉も理にかなっている。俺だって目の前ですっぽかされたらムッとくるだろうし、それが裏切られただの裏切られていないだの問題だと尚更になる。結果的に俺のあの時の軽率な行動が回り回って色々と状況を悪化させてしまったのが今回なんだけど、それでもまだどうにかなる……はず。


「とにかくその件についてはあんたには関係ないじゃないですか」

「そっかそっかー、だったらこの守矢要からの伝言も聞かなくていいよなぁ?」

「ちょっと待った聞きます聞かせてください!!」


 俺が慌てた様子でお願いすると、魔人はニヤリと笑ってこういった。


「テメェが魔法少女ごっこに付き合うなら、許すだとよ」

「……うん!?」

 ここから先は日朝ネタは薄まっていきます。魔人編では主に魔人と榊真琴、守矢要による波乱万丈の破壊劇(?)が繰り広げられることになります。恐らく今までで一番都市に被害を及ぼすことが起きることになると思います(´・ω・`)。

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