表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
176/259

第二十六話 今までは全てウォームアップってか?

「――で、今度はどこでやりあうつもりだ」

「…………」


 黙ったまま足の裏を凍らせて地面を滑って先を行く『冷血』の後を追うが、行き先は分からぬまま。俺は少々訝しんだが、目の前をいく男をこのまま放っておくこともできない。


「この先にあるのは――」


 力帝都市でも俺や詩乃がよく出歩くのは学校のある第六区画の他に大型ショッピングモールのある第三区画、そしてデートでよく行く第七区画ぐらいだ。それ以外の区画は行くことはあっても精々両手で数えられるくらいの回数程度しか言った記憶がない。第九区画はそもそも俺達の住むひなた荘があるから言わずもがなだが。


「……この方角は」


 この方向にある区画はそれほど多くない。一つは力帝都市と外を連絡する唯一の区画、第十五区画。あの区画では能力を使うことは禁じられると共に力帝都市の条例ではなく外の法律が適用される唯一の場所だ。故にある意味普段の感覚でいてはいけないという特別な区画。

 そしてもう一つ――第十一区画。脱獄不可の陸の孤島。区画全体が刑務所という他とは一線を画す区画で、外界から来た偽物ではなく本物の『裁きを下す者達エクスキューショナーズ』がいるとの噂がある場所だ。まさかとは思うがこいつ自首をするつもりか?


「おい、そっちの方角は――」

 冷血:知っている。陸の孤島だろう?


 そうこうしている内に目の前には鋼鉄の島と、それらを周囲三百六十度隔離するための巨大な運河、そして運河と島を繋ぐ橋のすぐそばにまで俺と『冷血』は移動してきていた。


「てめぇ、自首する気か?」

「…………」


 冷血は鋼鉄の島を背にして静かに腰元の刀に手を添え始める。


「……俺はてめぇが何を考えているのか分からねぇ。だがよ――」


 今回はベルトとかふざけた道具は抜きだ。


「――本気で、殺す気でやるべきだってことは分かった」


 それは『冷血』が最初に俺と対峙してきたときにも見せていた。俺を氷柱の中に閉じ込めて凍らせる瞬間に見せていた、何の混じりけのない純粋な殺意のこもった目。その目でもって俺をじっと見据えている。


「……チッ、後悔するなよ」


 その瞬間――周囲の区画から断絶するための壁が立ち昇り、壁の内側には陸の孤島とその運河の周辺の建物程度しかない。


「しかしそれにしても……」


 今からSランク同士の本気の戦いが始まるってのに、他の建物は次々と地下へと格納されて行っているというのに、あの刑務所はよほどの防御力を誇ってるとでもいうのか。


「ま、どうでもいいか」


 俺は両腕を全てマグマへと変化させると、両手を地面に叩きつけて世界を揺らした。


「――E(アース).E(イーター)!!」


 正直いくら建物を地下へと避難させても無駄だと言っておこう。何故ならこの技はまさに、いたるところから噴火を呼び起こす技だからだ。


「ッ! シィッ!!」


 しかし『冷血』も今度ばかりは手を抜く気は一切無いようだ。その証拠に俺が地面を火山へと変化させようとした途端に相手は刀を突き刺して即座に地面を凍結させ、あまつさえ俺すらも氷山の一角に仕立て上げんと巨大な氷の山をその場に作り上げた。


「……ッ!」


 そして追撃として氷の斬撃を幾重にも飛ばし、更には地面を滑っての高速移動に加えての居合で俺の胴体を真っ二つにしてきた。


「あぶねぇなこの野郎!」


 氷の斬撃の時点で砂になる準備をしていた俺は、切られた瞬間にとっさに砂へと変わることで致命傷を回避することに成功した。しかし相手は俺が砂になることこそが狙っていた事象だったようだ。


「ッ!? 氷ってやがる!?」


 離れた筈の胴体が氷漬けにされ、それ以上は砂となって離れることもくっつく事も出来ない。


「…………」

「クッ、こうなったらマグマで――」


 冷血:本当にそれでいいのか?


「ッ!? 何が言いてえ!」


 冷血:貴様の胴体は氷漬け。いわば俺の支配下にある。その状態でマグマを自分の凍った胴体に近づけるなど、生身でマグマに触れるに等しいことに気がつけ。


「クソッ!!」


 ハッタリかもしれないが、能力者全般が想像力に頼るという点から意識してしまった時点で俺の身体が自分のマグマで焼ける可能性を残してしまった。こうなってしまった今、胴体が氷漬けになった状態で分離も出来ずに戦うしかない。


「……ッ!」

「来るッ!?」


 とっさに目の前を噴火させて『冷血』と距離を取り、俺はこの状況を打開するための策を練る。


「クソッ! まだ全身を砂に変えることはできてもマグマは無理だからどうしようもねぇな…………ッ!」


 俺はとっさに寄りかかって隠れていた壁から即座に身を離した。何故なら体のすぐ隣まで氷の膜が迫って来ていたからだ。


「区画全体を凍らせる気か!?」


 気が付けば確かに気温が随分と下がった気がする。その上雲行きも怪しくなってゆき、そのうち吹雪でも吹き荒れるのではないかと思えるほどの気温と天候となり果ててゆこうとしている。


「そうはさせるかよッ!」


 俺は地面を噴火させてその反動で自分自身を空中へと放り投げ、そして右手を天に掲げていくつもの熔岩弾をその場に精製する。


P(プロジェクト).M(メテオ)ッ!」


 今日の天気は曇り時々雪。一部火山弾が降り注ぐ可能性もあるってかぁ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ