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第二十話 変身ベルト?

はい、前回アクセラ編からスタートと言いましたが、急きょ変更して緋山励二編からスタートです。以降しばらくは緋山主人公の一人称視点の文章が続きます。ギャグと甘々な要素をふんだんに入れております申し訳ありません。

「――で、これは何だ?」

「テメェも内に潜む『大罪アレ』を感知できたんだろ? だったらこれを使え」


 丁度大広間にあるテレビで日曜朝の定番を見ていた時の事だった。この俺、緋山励二ひやまれいじとテレビの間にいきなり魔人が姿を現したのである――つぅかすっげぇ邪魔。大事なバトルシーンが見えねぇし。

 この力帝都市においては日曜朝のクオリティも高い。というよりも俺達の普段が日曜朝もおったまげなレベルのバトルが繰り広げられているからして、並大抵の映像では退屈してしまう。

 ということから昔はそれこそとんでもバトルもあったようだが、最近はパワーによるド派手なゴリ押しよりも小粋テクニカルな技を見せつけるようないぶし銀なバトルが日曜朝では繰り広げられている。

 俺はそれとなくその映像を眺めていたのであるが、変なところで割り込まれては俺としても応対が雑になる。そんな時の事であった。


「これは?」

「テメェ、こういうのが好きなんだろ? これを使え」


 そう言って目の前にいる魔人が渡してきたのは、日曜朝に大の大人が変身するために腰につける『アレ』である。

 言っておくが毎週たまたま俺が起きる時間帯にテレビで放映されているだけで、別に――


「テメェが奥田おくだ宅雄たくおとひっそり話し込んでいるのは知ってるんだよ」

「何であんたがそれを知ってんだよ!?」


 奥田宅雄は俺と同じ上等学院高校の一年後輩だ。そして唯一高校にもなって日曜朝の話題に――たまたま付き合える仲だ。あくまで偶然だが。そんな奴をどうして俺の目の前にいるヤツが知っているんだっていう話なのだが、魔人は意地悪にもにやりと笑うだけで理由を述べようとはしない。


「……とにかく、嫌なものはいや――」

「拒否権はねぇ。つーかつけろ」


 かくいう俺も日曜朝はたまたま早起きをしてたまたまテレビをつけたらたまたまそのヒーローものを目にするくらいで、自分から積極的に見るつもりではない。


「どうしてもいやか?」

「高校生がそんなにごたついたベルトなんざつけるワケないだろ」


 すると魔人は大きくため息をつくと共に肩をガクリと落としてベルトをその場に放り投げると、右手のひらに暗黒のエネルギーを収縮させ始める。


「仕方ない、破壊するしか――」


 ちょ、ちょっと待て!


「破壊するのは、勿体無くないか……?」

「何故? テメェがいらねぇなら無用の長物だろ?」

「で、でも『大罪』ってやつを制御できるんだろ? それならいると思うんだが……」

「でもこのデザインは嫌なんだろ?」


 実をいうと嫌では無い。だがこういったものは一人でつけて楽しむものであって、恐らくこの魔人は俺にこれをつけて外に出ろと言っているに違いない。


「……ったく、仕方ねぇな」


 そういって魔人が後ろ手にとりだしたのは、ごく普通の革のベルト。


「今なら同じ機能を持った革ベルトもつけてやろう」

「通販じゃねぇんだからよ……」


 俺は半ばあきれつつも、魔人の手からその両方を受け取る。


「使い方は簡単だ。これを身に着けて心臓を叩く、そうすればテメェの身体は強制的に『大罪』化する」

「ちょっと待て。ベルト関係なくないか?」

「文句があるなら返品も受け付けるぞ」

「チッ……分かったよ」


 流石に貰ったベルトを手放したくない。という絶対に今魔人に心を読まれたら死ねるような考えを内に秘めつつも、俺は早速ベルトを身に着けることに。


「……そんなに目立つことはねぇよな」


 兎にも角にもこのベルトの性能を確かめる必要がある。そう思った俺はこの日曜朝のエンディングを背に自分の部屋へと戻っていった。



          ◆◆◆



「……こうか?」


 普通の革ベルトのはずなのに、いつもより気になる。普段つけている者より少し装飾がついている程度でそこまで華美ではないが、ジーンズに対してそれなりに目立つ気がしなくもない気がする。

 今日は昼から詩乃とデートの約束をしている。「プチ・ラグナロク事件」の後、俺は決死の覚悟で初めて詩乃と本来の意味でのデートに誘った。そしてこの日初めて詩乃にちゃんと告白して、俺と詩乃は互いに関係を深めることが出来た。

 今日はその二回目のデートなのだが――


「――結局デートって言ってもどこに行けばいいのか分からねぇな……」


 前回は雑誌を必死で読み漁って、初めてのデート特集で遊園地を自分で選んでプランを立てた。しかし今回は二回目のデート、今回も遊園地に行っても飽きるのは目に見えている。


「どうするべきか……」


 俺がそうやって寝転がっていると――


「どうするって、何を?」

「いっ!? 詩乃!?」


 どうして俺の部屋に――って、詩乃には前に合鍵渡していたの忘れていた……。


「何か悩み事? 私でよかったら聞くよ?」

「い、いや、そんな重大な事じゃないんだが……」


 まさか今からデートをする相手に行く場所を相談するなんて彼氏としてどうなんだと思ってしまう俺がいる。


「まさか励二、また一人で悩み事を抱えているの?」


 俺の無意味な意地が、詩乃を無駄に不安にさせてしまったようだ。詩乃は寝転がる俺の瞳を覗き込むように、不安そうな顔を近づけている。

 そんな状況に耐えられなかった俺は、とうとう観念して詩乃に悩んでいる内容を打ち明けてしまう。


「……今日、二回目のデートだろ?」

「うん」

「その……どこに行けばお前が喜ぶのかを考えていたんだよ」

「……ぷっ」


 俺としては痛く真剣なつもりだった。だが詩乃はあの時と同様に、俺の真剣な悩みを前に微笑みを見せる。


「なんだよ、何もおかしくねぇだろ」

「だって、そんな事で悩んでたなんて面白くて」

「なんでだよ、大事な事じゃねぇか」


 俺はふざけた様子の詩乃に少しムッとしたが、その瞬間に詩乃もまたからかうような笑いをやめて、にっこりと笑ってこういった。


「私は、励二と一緒ならどこでも楽しいよ」

「……お前よくそんな恥ずかしい台詞言えるよな」


 言われたこっちが恥ずかしい上に、なんだかこんなことで悩んでいた俺自身がバカらしくなってくるじゃねぇか。

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