第十六話 存続の危機
今回色々とかなり危ない橋を渡っている気がします(汗)。
「これで二対二、いや、三か。どっちでもいいけど形勢逆転だよねぇー」
「くっ、Sランク二人が相手だなんて……!」
というより余計な手間を掛けさせないで貰いたいと俺は大声で叫びたかったが、ここで叫べば負けを認めたも同然となるのは明らか。
「ちょっと面倒だけど、相手になってあげましょうか!」
俺の言葉を皮切りに、遂に戦いが始まる。
「あたしが『冷血』の方をやるから、あんたはジェラスをよろしくね!」
そもそもここで『大罪』なんてぶっちゃけちゃっても大丈夫なのかと思ったが、いざという時は魔人が何とかしてくれるだろうと思いつつ、俺は再び『冷血』の方と相対することとなった。
「さーて、リベンジマッチ? 防衛戦? どっちでもいいけどかかってきなさい!」
「…………」
やっぱりあんたは無言のまま殺意満々の方がらしいよ――と思っていたところで早速氷柱を容赦なく射出してくる。
「へぇーすっげぇ。まさかこっちが操作しなくても勝手に戦ってくれるとは思っていなかったわ」
「ッ!?」
「ちょっとあんた! せめて操っているフリ位しなさいよ!? そしてあんたも操られているフリ位したら!?」
まさかのこの殺意は天然ものだったなんて思いたくなかったけど、『冷血』としては元来から俺と決着をつけたかったようである。
「じゃ、あたしは『粉化』の方の操作に専念するんで、後はヨロシクゥ」
「っ、ざけんな!」
思わず女の子らしくない言葉を久しぶりに口走ってしまったが、そんな事より今は目の前の『冷血』との再戦に集中しないといけない。
「……あんたそういえば前回どんなふうにやられたっけ? また氷漬けにされたい?」
「…………」
相手も前回の反転を警戒してか、今回接近戦を仕掛けてくる気配は全くなく、遠距離から氷柱を飛ばしてくる攻撃を主体に動き回っている。
「くっ!」
それにしても周りにいる野次馬は名稗を倒したうえで辱める要員だったのに、今となっては被害に巻き込まないための足かせとしてしかなっていない。
「くっ、交換!」
次々とものと自分の位置を入れ替えては攻撃を回避するが、その場所も限られてくる上に相手には回避パターンを読まれてきている気がしてきた。
「流石はSランク、戦い慣れしてるとこうも動きを制限されてくるかな……!」
先ほどから氷柱の飛ばし方も段々とこちらを誘導するかのような飛ばし方をしてきているし、このままだと本格的にまずい気がする。
「ここで状況を変える一手が欲しい……ってところで丁度いいや!」
現在飛んでいる俺の目の前で戦っているのはレッドキャップ。いくら適応力があれど凍結を一発でも喰らったらおしまいだと思って俺の方が『冷血』の相手をしていたけど、こうなったら――
「ん? 榊、何か良い作戦でも――」
「はいバトンタッチ!」
「なぁっ!?」
「ッ!?」
まさかの氷柱が飛んでくる最中でのレッドキャップとの位置反転。これにより俺の相手は緋山さんとなり、レッドキャップの相手は『冷血』となる。
「何のつもりだ?」
「いやいや、互いの相性が良くないから敵を交換するってよくある展開じゃないですか」
「なるほどな。お前なら俺の手の内をよく知っているだろうからな。しかし操っているのが後ろにいるあいつだぞ」
緋山さんは首を振って後ろにいる名稗に注目させるが、俺は知っている。
『粉化』を最もうまく扱えるのは緋山さんであって、名稗閖威科ではないことを。
「……さて、やりましょうか」
「一体どうやって戦うつもりー? まさか味方を本気でぶっ飛ばすとか?」
「そのまさかって言ったらどうします?」
「……マジかよ」
マジも何も、ふざけて大罪ライダーとかやった時点でお仕置き確定でしょ。こんな姿、澄田さんが見たら泣いちゃいますよ。
「分かってるっての。だから詩乃に隠れてやってたのに……」
「ひなた荘に帰ったらお叱り受けますね」
とまあ口上はここまでにして、本気でやりますか。
緋山さんこと大罪ライダー・ジェラスは、名稗の指使いに操られるがままに構えた両手の内側に炎の玉を精製し始める。
「……かー、め――」
「それ本当にヤバい技だから中止! 中止!!」
名稗はこの小説を終わらせる気か!? 流石にそれのパロディは擁護できないから止めて!
「じゃあ以下略で」
「波ァ――――ッ!!」
極太の炎のレーザーを回避すれば、後ろのビルに大穴が開き、そして空高くで巨大な爆発が生じる。
「……マジで撃ちやがったなあんた!!」
こうなったら俺も本気で戦うしかない! これ以上パクリ技が出る前に!