第十三話 ヒーローとは、相手の攻撃を受けた上で立ち上がるものである
「さて、悪者退治と行こうか!」
「あぁーん? お前に興味は……いや、無垢なヒーローを性奴隷として従えるのもアリなのか……?」
ねーよ、ありえねぇ。
「どうやら苦戦しているようだね。僕が代わるよ!」
「いや待ってよ。あんたどうやってあれと戦う――」
「行くぞ!!」
遠距離攻撃持ちを相手に真正面から行くバカがどこにいるんだよ――って目の前にいたわ!
「アッハハ、馬鹿ねぇ」
当然のことながら名稗は真正面から向かってくる馬鹿を血祭りにあげようと、両手のワイヤーを一斉に振るい始める。
「お前を飼ってやろうと思ったけどやっぱりやーめた! ミンチになっちゃえばぁ!?」
「誰が悪に屈するものか!!」
なんか話が噛み合っていない気がするがどうでもいいか。しばらく静観するとしよう。
そう思って俺は手を出すことなくしばらくの間――正しくはレッドキャップが飽きるまで戦いの行く末を見守るつもりで腕を組んでその戦いを見守る事にした。
予測通り、ワイヤーは全てレッドキャップへと叩きつけられ、赤い帽子のヒーローはその身を更に血で赤く染めながらも壊れかけの建物の壁へと叩きつけられる。
「ぐはぁっ!?」
「……んー?」
俺としてはレッドキャップがかなりのダメージを負ったものだと思っていたが、与えた本人である名稗はというと、どうも何かが納得いかないようで首を傾げている。
「あれー? おっかしーなー?」
「ぐっ……なかなかやるようだね……!」
レッドキャップはボロボロになりながらも、再び立ち上がろうと瓦礫に手をかける。そしてここで俺も一つ違和感を覚えると共に、以前このレッドキャップと戦った時の違和感と今感じているものが同一であることに気が付く。
「やっぱり、あいつの能力か何かなのか……?」
「あー、まあいっか。もう一発逝ってみよー」
名稗は更に追い打ちをかけるように壁に叩きつけられていたレッドキャップに向かって更にワイヤーを叩きつける。しかし今度はうまく行く事が無かった。
「――おいおいおい、もう適応したってのかよあたしの攻撃に」
レッドキャップはこともあろうに飛んできたワイヤーを掴み、そして捕らえきれなかった一本のワイヤーを歯で挟み込んで押さえている。
「チッ! 冗談じゃ済まないんだけどなー!」
ワイヤーを引き抜くように名稗が両手を引こうとするが、レッドキャップが握る力がそれを上回っていることから身動きを取ることができない。
それどころかこともあろうにレッドキャップはその場に立ちあがり、名稗のワイヤーを逆に引っ張り始めた。
「っ、ちょっとこれ以上はお姉さんとしても冗談じゃ済まされないんだけどぉ?」
「だったらどうするつもりかな!」
「だったら――ん?」
名稗が突如右手のワイヤーを手放したせいか、レッドキャップは再び勢いよく壁へと叩きつけられる。それをしり目に名稗はポケットからVPらしきものを取り出すと、何やら画面を確認しては残念そうに大きくため息をつく。
「ごっめーん。君たちと遊んでいたいけど用事がデキちゃったぁ」
デキちゃったって言い方が不穏だなおい。
「てことでぇ、また遊ぼうねぇ。バイバーイ」
俺達に向かって(特に俺の方に)手を振りながら、名稗は某クモ男ばりにワイヤーを飛ばしてその場を跳び去っていく。
「待て!」
「まあまあそう焦らないでぇ。近いうちにまた会えるわぁ」
「あたしの賞金が!」
「そんなのあたしの首にかかっているからどうしようもないわぁ」
こうも簡単に逃げられちゃ追う気も失せる。それにあの手の輩を相手に深追いしたくない自分もいる。
「それに近いうちに会えるなら、その時にふん縛ればいいし。それに……」
「……グゥ……」
この伸びてるヒーローを拾って家に帰るしか、今やれることは無いだろうしね。
「さーて、ラウラにでもお願いしよっかな」
◆◆◆
「うぅ……ハッ!?」
「あっ! 真琴お兄ちゃん、ヒーローさんがおきたよー!」
「うん? ああ、よかったな」
「えっへへー、アクセラちゃんえらい?」
いや、手当とか殆どラウラがしただけでアクセラは何もしていないはずだが……まあ、えらいえらいとでも言っておくか。
「やったー! お兄ちゃんに褒められたー!」
「ったく……よう、起きたか」
「なっ!? まさか、あの女の人は――」
「逃げられた。そしてあんたが負傷して譚で俺の家に連れてきた」
名稗に逃げられてから、俺は即座に端末からラウラへと連絡を取った。レッドキャップはというと、名稗から手放されたワイヤーのせいで今度こそ気絶したようで、こうしてひとまず俺の行きつけの研究所まで連れてきたというところだ。
「グレゴリオのおっさんが一部屋貸してくれたおかげで、あんたの素性は今のところ極一部にだけバレる程度に済んでいる。よかったな」
「ッ!? ちょっと待って!? どうして僕の素性が――」
素性がばれた原因は、俺とラウラでレッドキャップを運んでいく途中、レッドキャップが落とし物をしたのが原因だった。
「ほれ」
「あっ!」
落とした物は学生証。そしてそこに載っていたのは――
「――上等学院高校一年、奥田宅雄。まさかあんたがレッドキャップだったなんてね」
風の噂じゃ漫画『オタク』と呼ばれていた、高校でも目立たないあんたがね。
どうもです。中々筆を執る時間が取れない中頑張っている最中です(´・ω・`)。それはさておき、気分転換に新しい作品を投稿しようかなーとか考えています。タワーディフェンスゲーム(生意気な勇者をぼこぼこにする某ゲームのようなもの)を参考にして、主人公クッソ弱いけど周りに従えている奴等強すぎない? みたいな感じものをかけたら面白いかなーと今模索している感じです。作品としてまとまり次第登校できたらいいなーと考えています(期待せずに待っていただけたら幸いです)。




