第七話 リベンジの時が来ました
「全く困ったもんだ」
まさか緋山さんが日曜朝早起きしている人間だとは想像できなかったわ。てっきりそういうものを高二病的な冷めた目で見ている側だと思っていたものだったけど、人間見た目じゃ分からないものですね。
「っとまあそれは既にゾンビ映画好きのラウラで分かっていたはずなんだけど」
家でも日曜朝には魔法少女ものが時々流れていることも俺は知っている。その犯人が最近住み着いた居候の界世の少女だということも。
「もしかして、そういうのが流行ってるのか? 俺が乗り遅れているのか?」
それともまたこれも事件だったりするのか?
「もう少し調べてみる必要がありそうだ」
今回は周りにも影響がありそうな人とそうでない人の区別がつかないところから、俺一人で捜査した方がよさそうだ。
「……だがまずは」
ちょっとした自慢だが、俺はそこそこ記憶力がいい方だ。とはいっても、どうでもいいゲームの隠しコマンドとかそっちの方に殆ど労力を割いているのが本音だが。
そんな俺の記憶力が、今回役に立っているみたいだ。
「まさかこんなところで賞金首が向こうから歩いてくるとはね」
芸能人よろしく顔を上手くマスクとサングラスで隠しているみたいだけど、その特徴的な髪形とピアスでバレバレだっての。
「ねぇ? ザック=オルダーさん」
「いっ、一体何を言っているんだ?」
「あれ? 『切り裂きザック』の異名の方が有名だったっけ? 雑魚専のCランク通り魔さん♪」
「なっ……貴様、何時から気づいていた……?」
それまでその場にいなかったはずの女の子から声を掛けられたらそりゃそうなるか。
俺は今、街中であえて反転して女の子になった。というのも、ここで一つ試してみたいことがあったからである。
それは周りの人間の認識の反転。つまり俺という存在を認識している状態から認識していない状態へと、俺が女の子になると同時に反転させてみたという訳だ。これは澄田さんが消えた事からヒントを得ている。
そして実験結果は大成功。榊真琴という認識は消え、代わりに突然榊マコがその場に現れという現象を引き起こすことに成功した。
「変装するならそのダッサい髪型とか変えたら? いっそスキンヘッドの方がマシなんじゃない?」
「てめぇ、俺の髪形にケチをつけるってかぁ? 俺は女子供でも容赦しねぇぞ?」
賞金五十万は滑り出しのスタートにしてはそこそこって感じかな。どっちにしても一般人を無差別に攻撃するなんて、放っておくわけにもいかないし。
「てことで、さっさと捕まってくれるかな?」
「ザケンな――がっはぁっ!?」
当然だが勝負は一瞬で決着がつく。俺が向かってくる相手の打撃の向きを反転させれば、相手が勢いづいてつっこもうとするほど自らふっとばされていく。そしてその結果近くの壁に叩きつけられ、そのまま気絶する結果に。
「まずは一人確保っとー」
早速均衡警備隊に通報&賞金ゲット。これで残り九百五十万。楽勝じゃん。
順調な滑り出しに加えて、これで街中で反転してもバレなくこなすことができるようになった俺は、更に調子に乗って大物を狙うことにした。
「えーと……おっ! この人とかよさそう!」
賞金五百万! ……その下になぜかいる身内のことは無視しよう、うん。懸賞金が一人だけぶっちぎりで国家予算クラスになっていることも見なかったことにしよう。
といった感じで俺が次に狙うのは、俺もよく知る相手。
「……あのヤブ医者、いっぺん頭冷やしておいた方がアタシ的にもいい気がするしね」