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第六話 最近の日曜朝のクオリティを舐めてはいけない

 そんな感じで夕方に仮釈放(?)を受けた俺とレッドキャップは均衡警備隊の事務所の前に放り出されると、それぞれの道を歩もうとしていた。


「じゃ、折半して五百万ずつってことで。よろしくねー」


 俺はそう言って手をひらひらと振りながら、手元の携帯端末の方に目を落とす。するとそこには既に聴取を受け終えて帰っているとの旨が書かれたメッセージが届けられている。


「あちゃー、澄田さん達もう帰っちゃったかー。となると、こっから先はあたし一人でどうにかするしかないか」


 執行猶予は三日間。時間は充分にあるし、その気になれば反転を活用して檻の外にいる犯罪者を全員檻の中へと反転させればいいだけだし、チョー楽勝。


「ってなわけで、そっちはそっちで頑張ってー」

「ちょ、ちょっと待った!」


 そんな感じで解散としゃれ込もうとした所で、レッドキャップは突然俺を引き留め始める。


「ハァ……何? 何か用なの?」

「少し考えて欲しい。これは、新たなヒーローの誕生秘話オリジンになるんじゃないかと」

「新たなヒーロー? 冗談でしょ――って、まさか……」


 そのまさかだとでも言わんばかりに、レッドキャップの鋭い瞳は俺を捕らえ続けている。


「先に行っておくけど、絶対に嫌だからね」

「いやいやいや、性転換するヒーローなんて新しいジャンルを切り開けるのは君しかいないよ!」

「そんなニッチなジャンルに需要なんてあるワケ無いでしょ!」

「あるよ! ……どこかに」


 何で俺までヒーローごっこに付き合わされなくちゃならないんだっての。ただでさえ変なヒーローが街にはいるって話なのに、その中にさらに加わっていくなんてまっぴらごめんだ。


「僕には分かる! 君にはヒーローの素質があるって!」

「いや、いらないっす」


 後ろでまだゴチャゴチャ言っている気がするけど、今は無視してその場を立ち去るしかない。


「僕は絶対にあきらめないからね! 君はヒーローになるべくして生まれた存在だって!」

「絶対に、あり得ないから」



          ◆◆◆



「――っていうことがあったんですよ。一千万分の賞金首捕まえれば釈放ですけど、面倒なんでこのまましばらく身を隠すってのもアリな気がしてきたんですよ」


 翌日の学校の昼休み、俺は先日起きた出来事を愚痴でも吐くかのように――まあ、実際吐いているんだけど。そしてこの日も之喜原先輩はいつものごとく俺の話を聞き流しているが、緋山さんの方はというと意外な喰いつきを見せてきた。


「お前、レッドキャップに会ったのか?」

「まあ確かに名乗っていましたね。とんでもない身体能力でしたよ。オマケにこっちの能力が通用するはずなんですけど通用する自信がなくて、直接は――」

「お前相当運がいいぞ。あいつの目撃証言はあっても、写真とか映像としては中々残っていない幻のヒーローらしいからな」


 残念ながらその幻のヒーロー、現物を見たら夢を壊されると思いますよ。


「おや? まさか緋山君、羨ましかったりするんですか?」


 之喜原先輩は半分冗談からかいのつもりで緋山さんに意地悪な質問を投げかけた。しかし緋山さんはいつものごとく之喜原先輩に腹を立てる様子はなく、寧ろ恥ずかしながらといった様子で素直に質問に答えようとしている。


「ま、まあ、珍しいもんを見れたのが羨ましいかと言われたらそうだけどよ……」

「でもそんなに羨ましいものでもないと思いますよ。当の本人が言うんですから間違いないですって」

「でもよー、毎週日曜朝八時にテレビをつけている勢からすれば割とうらやましいことだぞ?」

「おや? この前は昭和の話をしていませんでしたっけ?」

「俺は根っからの平成っ子だこの野郎」


 なんてこったいこの人平成○イダー派かよ。いやまさか他に戦隊ものマニアとかいたりしないよね? 先に言っておくが前ふりじゃないからなこれは!


「よし、俺もその賞金稼ぎに協力するぞ。その代わり」

「その代わり……?」


 大体の答えは予測できている。どうせレッドキャップに会わせて、サインを貰わせろとか――


「レッドキャップに俺も赤で参加できないか聞くからな」

「まさかの赤カブりー!?」

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