第三話 赤い帽子がトレードマーク
「ファンって……ファンって……」
ヒーロー本人じゃないのかよ……ってか鉄パイプで頭殴りつけるヒーローがいたらいたで問題なんだけど。
「何処からツッコめばいいんだよ……」
「さあ! この朧木アルフレッドが相手だ!」
あっ、前回読み仮名ついていなかったから今回ついてる――って流石にメタすぎるか。とにかく明らかに一般人としか思えないのに無謀にもダストに挑んでもいいのか? いやダストの方もDランクだと言われてしまえば何も言い返せないけど。
「そもそもヒーローがいるならもうちょっと治安が良くなってもいい筈だろ……」
「やぁっ! たぁっ! 次は誰だ!」
「馬鹿かお前! てめぇなんざ俺一人でぶへぇっ!?」
「結局、自分の身は自分で守れってことですね」
守矢が最後の一人を片付けたところで、それまで応戦体勢だった朧木は鉄パイプを持ったままその場を立ち去ろうとする。だが――
「ちょっと待て」
「何!? もしかしてサイン!?」
「無名の輩のサイン貰ってどうする。それより聞きたいのは、あんたが言っている正義のヒーローの方だ」
恐らく異名なのだろうが、『レッドキャップ』だなんて俺は一度も聞いたこともない。そんなに有名ならVPに情報として流れてきて、俺の目に触れていてもおかしくないはずなのに。
「ちょっと! うちを大人の女性にするって話はどうなったんですか!」
「それよりこっちの方が気になるだろ。お前等姉妹が根城にしている第十四区画にヒーローが殴り込みに来たら困るだろうが」
「それは、そうですけど……」
「第十四区画……? ダストの根城、悪者のアジトはそこにあったか! いざ! この力帝都市の治安維持を――」
「アホ」
「んなっ!?」
俺は即座にその場で反転すると、でこピンで朧木を文字通り弾き飛ばした。
「あんたみたいなDランクが一人殴り込みに行ったところでリンチされるに決まってるでしょ」
「それより榊! こんなところで反転して大丈夫なんですか!?」
「大丈夫だってば。どうせあたしがこの場にいたっていう記憶を反転して消せばいいんだから」
そう、澄田さんみたいに――ってまだジョークで済まされるほど時間は経っていないんですけどね。
「でも情報聞きだそうにも朧木ぶっ飛ばされて伸びていますけど」
「そ、それはその場のノリだから仕方ないっしょ」
「一般人に危害を加えるSランクなんて、冗談じゃ――」
「冗談じゃ済まされない。それは確かに言えているね」
声がする方――後ろを振り向き、ビルを見上げた先に、しゃがみこんでこちらを見下すヒーローの影が。
「全く。それだけ強い力を持っていながら、どうしてそんなことをするのか」
「いや、ため息までつかせておいてアレだけどあたし普段はそんなことしないし」
「こうなったら同じ目にあってもらうしかないかな。女の子だけど元は男の子だし、ちょっとくらい痛い目にあっても大丈夫だよね!」
影ははるか高い屋上から飛び降りると、そのまま地上へスタッと滑らかに降り立つ。
――その姿は、確かに『レッドキャップ』と呼ぶにふさわしかった。
真っ赤なニット帽を目深にかぶっているせいか、目つきが悪い。服装はちょっぴりラフなシャツにジーンズ、そして小粋なジョークで挑発する余裕もあるくらいの軽々しい口ぶり。
「このレッドキャップがいる限り、この世に悪は栄えない!」
「悪が栄えないためにもまずダストを倒してくれないかなー」
といった感じで、どうせなら過去に描いた作品のキャラをリサイクゲフンゲフン、再登場させて力帝都市の新たな市民として登場させてみる試みです。この編はだいぶツッコミ要素が増えますがあしからず。