第二話 この街はいつから〇ッサムシティになったんですかね
大人の女性と言われても、具体的に何をすればいいのか分からない状況。しかも俺じゃなく当の本人が。
「むむむむむ……」
ひとまず澄田さんと栖原と別れた後に、俺と守矢だけで街を出歩く。行くあてもないのに街をふらつくなんて久々だが、そんな日々が今の俺には必要なのかもしれない。
「ダストに絡まれずに済むっていうのもあるかもしれないがな」
「そうですね。榊マコの時は絡まれまくっていましたから」
Sランク相手によく絡みに行けるものだと、改めて感じる。あのAランクへの関門である穂村に向かっていくだけでも無謀に思えるのに、それ以上のランクの俺に向かっていくその勇気だけはSランク級だと、俺は少しだけ心の中で褒めてやることにした。
「でも守矢だってBランクだから絡まれたりするだろ? そういうときどうしてんだ?」
「そういう時って――」
こういう時、とでも言わんばかりにタイミングがいいことで。というよりいい加減ダストを減らす活動をしたらどうなんだ力帝都市。少々治安が悪いってレベルじゃない気がしてくるぞ。
「へっへっへ」
「今日は彼氏連れってかぁ?」
「か、彼氏じゃありません!」
「くくくく、そうだよな、てめぇはまだガキだもんな。守矢要ちゃん」
あーあ、今俺でもわかるレベルで地雷踏んだって理解できるぞ。
「が、が……ガキじゃありません!!」
「だったらなんだぶへぇっへぇ!?」
問答無用で地面を滑走する岩石によって壁に叩きつけられるダストを見て哀れに思ったが、冷静に考えたら俺も致命傷を負わせていないとはいえ大気圏突破させようとしたことが何度かあったからあまり人のことは言えない。
「く、くっそぉ!」
「ふんっ! 百年早いです!」
百年たったらおばあちゃんってか?
「今何か言いましたか?」
「いや何も」
それとなく片付いていくダストであったが、その中で頑張ったのか俺にまで手が届く輩が一人って――
「おいちょっと待てぇい!」
今は反転していないから能力使えない。となったら俺はどうすればいい!?
「待て待て待て! 話し合い――」
「問答無用!」
ちょっと待て本気で金属バットはまずい――
「はぁっ!」
「ぐはぁっ!?」
――突然俺の目の前に割って入り、ダストに鉄パイプを叩きつける少年がいる。って、まさか仲間割れ!?
いやそれにしては身なりが整っているし、見る限りハーフっぽい美少年――いや、女装させれば女の子にも見え――ちょっと待て俺の性癖がおかしくなってきている気がするのは気のせいか?
「ここから先は僕が相手だ!」
「いやあんた誰だよ!?」
「僕かい? 僕の名前は朧木アルフレッド。この街を守る正義のヒーロー、レッドキャップのファンさ!」
この街を守る正義のヒーローの、ファン……?