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第十五話 三分(でダストを)クッキング

「とりあえずレジにあるだけここに出しな!! それと客の持っている財布も全部出すんだ!」


 うわぁ、典型的な不良じゃないですかーやだーって、そんなことよりどうしよう。

 澄田さんは透過できるって意味で何ともないんだし守矢は自衛できるんだろうけど、栖原はどうしよう。Cランクとはいえ流石に拳銃はどうしようもないような気がする。

 今のところ見えているのは刃物持ちの二人と金属バットの男一人。これなら何とかなりそうな気がしなくもないけど、この後ろにもう一人刃物持ちと拳銃持っている奴が確かいるんだっけ。

 そんな中、澄田さんはどうにかしてこの場を穏便に済ませられないかと頭を悩ませる。


「どうしよう、要ちゃんに頼るのは駄目だし……」

「なんの! うち一人で十分ですぜ!」


 そう言って守矢が先に飛び出し、早速その力を揮いにかかる。


「折角の女子会をめちゃくちゃにしたその報いを受けるのです! 岩石砲ブロックバスター!」


 目の前に守矢の等身大程度の岩を呼び出し、それを蹴ってスライドさせる。すると昨日のボウリング(どっちかっていうとカーリング?)のように岩が三人を纏めて壁へと叩きつける。


「げはぁっ!?」

「なっ!? どういうことだ!?」


 おっ、今まで喫茶店の壁で見えていなかったナイフ持ちの男と拳銃持っているとされる男が出てきたぞ。


「どうしたも何も、うちらの女子会を邪魔した罰です!」

「なぁっ!? どうして『ブロック』がいるんだ!?」

「どうしたもこうしたも、コーヒーを飲みに来たんでしょうがぁ!!」


 先ほどの倍の大きさの岩石でもって、守矢は二人を一掃しようとしたが――


「ちょっと待てコラァ!! この店員がどうなってもいいのか!?」

「……岩で見えないんですけど」

「要ちゃん! ナイフを持った人が店員さんを人質に取っちゃったよ!」

「なんですってぇ!?」


 そりゃ飛び出して目の前に岩石作っちゃったら見えないだろうけど、普通にこの角度だと見えちゃうんだよね。


「仕方ありません、店員さんには尊い犠牲に――」

「要ちゃん! そういうのはダメだよ!」


 岩に足をかけようとする守矢に対し、澄田さんはそう言って制止させる。


「小晴さんの言いつけを破っちゃダメだよ!」

「くっ……でも……うちにどうしろと……」

「とりあえず、その岩を退かしてもらおうか」


 不良たちは俺達が一歩手を引くと分かった時点で急に態度を増長させ始めた。

 まっ、一応念の為に銃の方を反転させておくけど。

 それはそうと、昨日今日で家に帰ってから反転させるときに一番しっくりと来る方法を色々と模索しているが、今のところ一番感じがいいのが、指をパチンと鳴らす方法。

 俺は相手にばれないよう、静かに足元で指をパチンと鳴らす。


「ん? 今何か音がしたか?」

「いや、何も」


 よし、ばれていないみたい。


「……で、どうするつもりですか?」

「決まってんだろ」


 そういうと不良は銃口を即座に守矢へと向け、引き金を引く。

 守矢の顔が驚愕に代わる前に、澄田さんが飛び出そうとする前に、火薬の乾いた炸裂音だけが店内へと響き渡る。

 そして――


「っ!? ぐあぁぁっ!?」

「――へ?」


 ふぅ、危ない危ない。

 銃弾が発砲される方向を反転させたおかげで、弾丸は発砲した男の肩を抉っていた。


「痛ぇ! 痛ぇよぉ!!」

「どうしたんだ!? まさか暴発か!?」

「わかんねぇよ! 痛ってぇって――」


 その場に倒れ込む男の頭上に、守矢の笑顔が向けられる。


「――とりあえず気絶してください」


 守矢は岩でコーティングした自分の足で、男の顔面を思いっきり蹴り飛ばす。

 そして続けざまに素早くナイフを持った男の右手に岩の枷をつけ、即座に無効化させる。


「……これならいいでしょう! ねぇ詩乃さん!」

「うーん、いいのかな……?」


 いいんじゃないんですか。ひとまず難は逃れましたし。

 ひとまず均衡警備隊バランサー支部にこいつらを連行しないと。

 力帝都市で力の関係バランスを保つ役割を持つところ、均衡警備隊バランサー。簡単に言えば一般的な警察と同じ犯罪を取り締まる業務を担うところだが、組織全体の力の評価はBと、AやSランクを対象とする犯罪には実力的に手を出しづらいっぽいけど。

 だけどこの程度なら問題なく取り押さえてくれるでしょ。

 それはそうとさっきまで捕まっていた店員さんが、守矢に向かって頭を何度も下げてはお礼を言っている。


「ありがとうございます! 何とお礼を言ったらよいのか――」

「別に、そういう訳じゃないんですけど……」


 守矢としては別に人助けのつもりじゃなかったみたいで、照れくさそうにしている。


「いいじゃん、要ちゃん。そうやって人に褒められることをするのはいいことだよ」


 澄田さんは照れ臭そうにする守矢に向かって、まるでお母さんみたいなこと言ってる。ってか本当にお母さんじゃないんだから……。

 守矢はそれを聞いて更にむず痒くなったのか、とんでもないことを言い出す。


「で、でしたらお礼にここの代金をタダにしてください!」

「いやそれは違うでしょ」

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