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第十三話 全ての歯車は回り始める

「Sランクという割にはパッとしないお部屋ですぜ。それに言っていたほど片付いていないってことは無いし、むしろ整理整頓が行き届いています」

「アクセラちゃんとしては、なんか地味って感じかなー」


 結局まわりまわって俺の部屋に守矢達が上がり込むことになっちゃったわけで、界世とか情報を得ることもできたにはできたけど最終的には家に上がり込まれるという、俺の努力を無に帰す出来事が起きてしまった。

 そして整理が行き届いているとかいうけど、そりゃラウラの方のお部屋ですから。ここで素直に俺の部屋に案内しようものならば、男物の下着で大騒ぎになってしまうことは明白。ゆえにラウラの部屋に誘導するしかない。

 事前に隙を見てラウラに何とかメッセージをを送る事はできたから、普段から家に置いてある銃火器は全て俺の部屋の方に撤収済みだし、例の変なゾンビ映画もついでに撤収してくれたみたいだ。

 ……多分隣の部屋で観たいから持っていっただけだと思うけど。


「榊の汚部屋をもっと探索したかったのに」


 悪かったな汚部屋じゃなくて。元々の部屋も残念ながらそこまで汚くないし、掃除もそこそこやっているつもりだ。


「でも本当にいいの? 和美さんとか師匠に連絡しなくても」

「いいんです! 姉さんなんて知りません!」

「アクセラちゃんも! 知りません!」


 おいおい、さっきから俺のVPに知らない番号からメッセージが届いているのは気のせいか? しかも内容が「要がそちらにいるはずだ」「いい加減返ってくるように言ってくれ」といった内容が続けざまに送られてきて、明らかに向かった先が俺と見知っているかのようにピンポイントに送られてくる。

 そして師匠を知らないとか記憶喪失の人間が言うと別の意味に聞こえてくるんでそっちの方もやめてもらえませんかね?


「はぁ、どうしてこうなった……」

「榊の家、ベッドが一つしかありません!」

「当たり前でしょうが! あんた達は下で寝なさいよね!」

「なっ!? お客さんをもてなす気持ちはないんですか!?」

「お客じゃなくて押しかけでしょうが!」


 本当に困ったもんだよ全く……まだメッセージなってるし。


「今日一日だけだからね。あたしだって学校があるんだから」

「学校なら休めばいいじゃないですか」

「そんな簡単に休めるものじゃないわよ、まったく」


 とはいえ学校に行ってもつまらないのは事実。

 ……ちょっとくらいさぼっても大丈夫だろう。多分。



          ◆◆◆



「――本当にサボッちゃったよ……」

「別にSランクならこれくらい大丈夫ですぜ! 多分」


 Sランクなら学校を休んでも大丈夫って根拠はどこからくるのか榊に問いかけてみたかったが、それより先にアクセラが自分の興味の赴くままに街を歩き回っている方についていくのに精いっぱい。

 といった感じで俺は今絶賛サボり中だ。VPに之喜原先輩からメッセージが来ているが、適当に返事を返しておこう。


「なんであの子は疲れないの……?」

「逆に榊の体力が無さすぎるだけです。普段から能力に頼り切っているからじゃないですか?」


 そうじゃなくて、もともと中の人の体力が無いだけです。俺なんて身体能力反転を切ればこの程度ですよ。

 アクセラに連れられるまま今歩いているのは第九区画、いわゆるビジネス街というところだ。時間帯とこのビジネス街と呼ばれる場所を考えれば当たり前といえば当たり前だが、俺と同年代の少年少女は街を歩いておらず、代わりにスーツを着た大人がせわしく端末の向こう側の人物と会話をしながら横断歩道を渡っていたり、オシャレなカフェの代わりに手軽に食事をとれる食事処が所々に見られる。


「……で、なんで第九区画?」

「さぁ? うちもこの辺には来たことが無いので何とも言えないですよ」


 だったら尚更アクセラがここに来た理由が分からない。単に何も考えていない可能性もあるかもしれないけど。


「ねぇねぇ! ここは何をするところ?」

「知らないわよ。あたしもここ初めて見たし」


 どうやら家電の展示と販売を兼ねている雰囲気なんだけど……どうにも俺が普段使っている洗濯機より高性能で、更に値段も……。


「……いや、買おうと思えば買えるけどさ」

「そういえば小晴姉さんが掃除機を買い替えたいとか言ってましたね! 今度教えてあげましょう!」


 でもあの人がこういう高級品を買いそうなイメージが湧かないんだけど。むしろ「まだ使えるので再利用しましょう」とかいって超エコロジカルな感じがするんですけど。俺の勝手な妄想かもしれないが。


「っと、アクセラは?」

「ありゃ? どこに行ったんでしょうか?」


 気が付けばさっきまで扇風機の前で涼んでいたはずのアクセラが、ちょっと目を離した隙にいなくなってるんですけど!?


「……これまずいよね」


 サボったツケなのか、それともアクセラがトラブルメーカーなだけなのか。ともかく俺は、即座にアクセラを探すために守矢と共に今度は区画中を駆け回る事となった。

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