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第五話 前回のおさらい

 VPでラウラと連絡をとれる隙はない。となると急用が入ったと言って一旦アクセラを押し付けて急いで家に戻るべき? 


「どうしようもない……」

「何がどうしようもないんです?」

「いやー、一人で片づけようにもどうしようもなかったからなーって」


 実際どうしようもない。どうしてこういう時に俺を襲ってくるダストの連中とかその辺がいないのやら。

 ……あっ、そうだった。

 旧居住地区を根城にしているダストからはもう手を出さないって、小晴さんが言っていたんだよねそういえば。

 あれは確か、ロザリオがロレッタを止めた直後の話だっけ――



          ◆◆◆



「――お嬢、しっかりしてください! お嬢!!」


 自らの血の池に倒れ伏すロレッタを起こそうと、ロザリオは必死にロレッタを揺り動かす。俺はその必死なロザリオの姿を見て、心を痛めながらもこう思った。

 ――その子貧血だと思うんですけど。貧血なら揺り動かすとか尚更まずいと思うんですけど。


「あのさ、あたしロレッタは貧血だと思うんだけど――」

「っ! お嬢! 目を覚まされましたか!?」


 なんてこったいロザリオが正解かよ! 俺、なんだか恥ずかしくなってきたんですけど。


「……ロザリオ?」

「おじょっ――」


 そんな事を思っていたのもつかの間、俺の目の前でロレッタは大きく口を開けて、その鋭くとがった犬歯をロザリオの首へと突き立て始める。


「えっ!? ちょっとロレッタ――」

「止めるな! ……お嬢が吸血しているだけだ」


 ……冗談かと思ったマジで吸血鬼かよ……恐るべしヴラド一家。


「っ、ぐぁっ……!」

「ちょっとロザリオ、大丈夫?」

「大丈夫だ……俺ならば、元々の血液型からしてもロレッタお嬢に輸血ができる。だからこそ、俺が分家側の執事に選ばれ、あの男が本家に選ばれたのだからな」


 あっ、なんだそういう事だったんだ。従者として優秀なんじゃなくて、あの男の血液型の問題なのか。どんまいセバス、真実を知ったらまた延々と怨嗟を吐き連ねそうですね。

 そしてロレッタは存分に血を抜き取る事が出来たのか、ロザリオの首から勢いよく牙を引き抜いて、口周りに真っ赤な血をつけたままで幼い素顔で心配するような表情を浮かべる。


「っはぁっ!」

「ろ、ロザリオさん!? ごめんなさい!」

「だ、大丈夫ですよ……この程度、むしろ血を抜かれて頭がすっきりしたくらいですので……!」


 いや明らかにフラフラだからね? 少しばかり血を戻してもらった方がいいんじゃないのってレベルだからね?


「ロザリオさん、本当に大丈夫なのですか?」

「お嬢の為なら、私は血が枯れようが構いませんよ」

「ロザリオさん……」


 俺の心配をよそにして二人だけの空間を作ろうとしているんじゃないよそこのロリコンと吸血幼女。


「……コホン!!」

「ん? ああ、すまない。貴様にも随分と迷惑をかけた」

「迷惑かけただけで済ませる気?」

「そうだったな。金が欲しいんだったな」


 そんな言い方だと俺がまるでタカっているように見えるから止めてください。


「お金の問題じゃなくて、あんた達がこんなところでいちゃついてちゃあたしどうしようもないじゃん」

「い、いちゃついてなどいない!」

「反論できる訳ないじゃんこのロリコン野郎」


 とまあ俺とロザリオで言い合いをしていると、どうやら他でも片が付いたようで守矢四姉妹のうちの三人である要や小晴、そして和美も出てきて――って、そっちどうなってんの!?


「小晴さん返り血じゃないですか!?」

「最初はガトリング砲でなぎ倒していたのですが、途中から面倒になりましたので、ロザリンデさんを参考に88mm(アハトアハト)を投影して、魔法陣が描かれているビルごと倒壊させてきました」

「姉さん! それは素晴らしいですね!」


 いやいやいや和美さん、あんたもなかなかに返り血凄いぞ。

 そう言われてみれば魔人がロザリンデにトラウマを植え付けている間、地面が妙に揺れているなあと思っていたけど、あれ魔人のせいじゃなかったんだ。


「…………」

「……あら? どうかなさいましたか?」

「返り血に驚いているのではないでしょうか姉さん。この程度、洗えば落ちるというのに」


 ……今度からは小晴さん、そして和美さんとつけよう。じゃないと殺される。


「さて、我々四姉妹は任務を遂行したため帰らせてもらう」

「えぇっ!? 和美姉さんの紹介も済んでいないじゃないですか!」

「別に紹介する必要はあるまい。それに――」


 今度は俺達だと言わんばかりに和美は敵意剥き出しでこっちを向いて、まるで警告するかのように旧居住区画からでていくように促す。


「目的は同じとはいえ、この区画に無断で立ち入った余所者だ。早々に立ち去ってもらいたい」

「なっ!? 和美姉さん、そんな言い方は――」

「黙れ、要。お前も最近外に出過ぎだ。これ以上面倒事を持ち込む気なら、買い出しはしばらく私が出ることになる」

「っ……」


 ……随分とルールに厳しいお姉さんだことで。これじゃあ要が中学校に行けないのも頷ける。


「……貴様、何か言いたそうな顔をしているな」

「いーや、何も」

「そうか。もし異論があったとしても、これが四姉妹を守るために決められたルールだ。貴様に口出しなどさせない」

「へぇ、その割には随分と高圧的だと思うけど」

「貴様は我等を知らないから、そう言える。だがこれも、四姉妹としての関係だ」


 和美の言い方はロザリンデと似ていた。だが少し、違っているような気もした。

 それは単に妹を道具として見ているのか、それとも本当に心配しているのか。その差がきっと、あるのだろう。


「……分かりましたよ」

「しかしそれにしても、皆さんにはお世話になりましたね」

「いやいや、元はといえばこっち側の問題だったみたいで」

「それでも結果的には解決しましたので、おあいこという事で」


 一応これでも小晴さんはこの旧居住区画に住み着いているダストを取りまとめているそうで、これから先は俺達にはランク目的であろうともちょっかいを掛けないように言い聞かせてくれるそうだ。これで少しは日常が平穏になるかな。

 俺は小晴さんに礼を告げて、言われた通りにその場を立ち去っていく。返り血を浴びたままではあるものの、小晴さんは最後までにこやかだった。

 ……めっちゃ怖いんですけど。



           ◆◆◆



「――あぁ、そういえばそうだったっけ」

「そういえばって、どういう事ですか?」

「あっ、いや……ここ最近部屋が散らかっている理由の一つが連日何かが起きているってことだって思っただけ」

「なんだ、そうだったんですか」

「なんだって……それくらいで済ませるのね」


 もう少し俺の身の回りで物事が置きすぎていることに興味を持ちたまえワトソン君。と思いながら歩道を歩いていると、何やら路地裏から鉄パイプやらナイフやらを持った輩がぞろぞろと。


「マジかよ、女四人とかたまんねぇな」

「俺、あのガキ二人を貰うわ」

「けっ、相変わらず趣味が悪いなお前は!」

「うるっせぇ! てめえこそずっとあのピンク髪の胸ばっか見やがって!」


 おいおい、ダストは手を出さない約束じゃなかったっけか守矢四姉妹?


「こいつ等、うちらの中でも爪弾きにされた連中ですよ多分」

「とりあえず、守矢要だっけか? てめえを人質にとって、四姉妹の残りも引きずり出してやるよ! それと残りのやつ等はボーナスステージだ! たっぷり可愛がってやるから覚悟しとけよ」


 まったく、どうしてこうも面倒事が大挙してくるんですかね。こっちはアクセラに加えてもう一つ面倒事を抱えているってのに。


「まっ、退屈しないからいいんだけどね!」

そういえばこの編の時系列について説明していませんでした(汗)。この編はまだパワーオブワールドで言うところの穂村が真っ白な世界でアイツと戦っているという空白の部分になります。

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