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第三十二話 Opheliac

「――お、お嬢……」

「…………」


 ロザリオがいくら声を掛けようが、ロレッタは返事を返さない。ただ無機物の人形のように、拳銃を持ってその場に佇み続ける。


「…………」

「一体どうすれば――」

「ロザリオ!」


 その場に立ちつくすロザリオの背後から、一匹のグールが襲い掛かろうとしている。そしてそれを止めるために――


「場所を反転!」


 俺とそのグールの位置を反転させることで、俺は即座にロザリオの下に到着。そして問題の洗脳されたロレッタをどうにかするべく戦いに参戦することに。


「で、ロレッタはどんな攻撃を仕掛けてくるの?」

「ただ右手首から流す血で生成した拳銃で撃つだけだ。だが俺には手を出せないし、お前にも手を出させない」

「えぇ……」


 それって唯突っ立って死ねということですか。


「何とかしなければ……だが、どうすれば……」


 要は洗脳を解けばいいんだろうけど、どうすれば……。


「あっ、ロザリンデに解かせれば――って、ロザリンデ完全にダメになっちゃったしなぁ」

「ロザリンデが駄目になった……? 榊、貴様何をしたんだ」

「あたしじゃなくて、あたしの知り合いがしでかした事なんですけど……ちょっとおたくのロザリンデちゃん、精神崩壊しちゃったというか……」


 子犬みたいになんにでも怯えるお子ちゃまになったというか……ご愁傷様です。


「何が起きたかは知らんが、今はお嬢をどうにかして正気に戻さねば……」

「洗脳って魔法なの? それとも『血戦ブラッドライン』の能力?」

「分からん……魔法ならば、誰かがロレッタを足止めをして、俺が魔法解析して何とかできるかもしれないが……兵器を使った洗脳となれば、俺には分からん」


 そもそも洗脳できる兵器とかあるんですかね……。


「とにかく今は魔法だと仮定して動いてみようよ」

「それもそうだな……足止めはできるか?」

「そりゃできるけど……」

「ならば任せた。俺は解析に専念させてもらう。解析中は動けないから、グールも適宜追い払ってくれ」

「何かあたしの仕事多くない?」

「喋っている暇はない、行くぞ!」


 疑念は残るが、俺は自身を囮にしたロレッタの洗脳解除作戦を決行することに。


「おーにさーんこーちらって、完全に無視されてない?」


 俺がいくら挑発しようが、拳銃の銃口は左手の魔法陣を展開しているロザリオの方のみに向けられている。


「こうなったら、ちょっとはを向いてもらおうかな!」


 ロレッタの意識にある俺とロザリオの認識を反転!


「よし、こっちを向いた――」

「榊! やはり魔法による洗脳だ!!」


 ロザリオの報告と共に、ロレッタは突如それまで手に持っていた拳銃を捨てて新たな兵器を生成し始めている。


「……ねぇ、ロザリオ」

「何だ! 今解析中だ話しかけるな!!」

「ちょっとこれは、本当にあたしの仕事多くなりそうなんですけど……」


 今俺の目の前で両手に補助具つきのサブマシンガンに背中にロケットランチャーグレネードランチャーを背負っていて、まるでガチムチの某特殊部隊をほうふつとさせるようなワンマンアーミーが立っているのは気のせいじゃないですよね?


「ちょっとマジでヘルプ!」

「黙ってお嬢を引きつけておいてくれ!」


 この現状に少しは目を向けろこのむっつりスケベ野郎!


「ちょっ、待って――」


 早速この子両手のサブマシンガンぶっ放してきたんですけど!?


「うわわわわわっ!?」


 身体能力を向上させて、更にロレッタ自身が武器を使い慣れていないおかげか何とか逃げ切れているけど、それでも結構ヤバい!


「くっ、ジャムらせるべき!?」


 俺は武器を故障した状態へと反転させてみたが、ロレッタは即座に血液に戻して再び武器を生成して撃ち込んでくる。


「ジャムらせるのは無理、ならどうすればいい!?」


 考える暇を与えるつもりはないのか、ロレッタは更に自らの方にナイフを突き刺して血の義手を生成し、そこからロケットランチャーを構え始める。


「ちょっと!? さっきから思っていたんだけど義手って兵器なの!?」


 俺の疑いなどお構いなしといった様子でロレッタは義手でロケットランチャーの引き金を引き、更にはサブマシンガンで牽制も仕掛けてくる。


「どうしてこうも面倒な事になったのかなぁ!? ねぇロザリオ、今どれくらい!?」

「まだ一割も解除しきっていない!!」


 あの魔人、早く終わらせろとか言って全く逆効果なんだけど!? 俺が早々にロザリンデを参らせて解除した方が早い気がするんだけど!


「ねぇまーだー!?」

「うるさい! 解除に集中させろ!」

「そう言ったって――ヤバッ!?」


 すぐ後ろにグール!


「確かさっき考え付いた……配置換テレポート!!」


 合言葉ってワケじゃないけど、こうして必殺技っぽく叫んだ方が反転しやすい気がする!

 そうして俺とグールの位置が変わり、俺がロザリオのそばに立ち、そしてグールはロレッタの目の前でハチの巣にされている。


「ちょっと解析早くする方法とかないワケ!?」

「黙れ! 集中が切れる!」


 物凄くイラってくるのは気のせいか? とにかく三割くらいしか進んでいないところから相当かかりそうだぞこれは!


「で!? 解析って難しいの!?」

「複雑極まりないと言っていい! 正直に言うと俺でも最後まで解析できるかどうか――」

「だったらその解析自体を反転させるから!!」


 そっちのほうが絶対簡単にできる!

 俺の目の前には訳の分からない魔法陣の帯が広がっている。だが分からないものほど、逆に分かりやすくなる!


「――難易度を反転!!」

「ッ!? 急に簡単になったぞ!?」


 そりゃど素人の俺でもなんとなくここを解けばいけそうな気がするくらいに簡単になりましたから。


「急いで解析進めて!! ロレッタが――うわっ!」

「なっ!? がはぁっ!?」


 俺が防がずに避けたのがまずかったみたいで、ロレッタのマグナム銃による一撃がロザリオの脇腹を見事にえぐり飛ばしていく。


「大丈夫!? 急いで傷口の反転を――」

「そんな事、する必要など無い!!」


 ロザリオは負傷した脇腹を手で押さえながら、空中に展開している魔法陣へと一歩一歩近づいていく。

 それに対してロレッタは再び銃を構えて狙いを定め、再び発砲しようとしている。


「ロザリオ! まずは解析よりも先に回復した方が――」

「今こうしている間にも、ロレッタお嬢は苦しんでいるのだぞ! この程度の傷、お嬢の苦しみに比べればなんともないわ!! ぐぁっ!!」


 更に右足を撃たれ、もはや這いつくばるしかない状況。しかしロザリオははいつくばってでも、自らの主を解放しようと魔法陣へにじり寄っていく。


「……そうだね、そうだよね」


 俺はこの時少しだけ、ロザリオのことを見直した。

 今までは単なるムッツリ変態ロリコン狼野郎だと思っていたけど、少しはロレッタの執事らしいことしてるじゃん。


「後一歩なんだ、後一歩で、お嬢を……!」


 そんなロザリオの必死な姿に、洗脳されていたはずのロレッタの両手が震え始める。手が震えたせいで中々照準があわないのか、はたまたロザリオの姿に洗脳されていたはずの心が動き始めたのか、ロレッタはロザリオに向けて引き金を引けずに立ち尽くしている。


「俺は、お嬢に救われた……だからッ! 今度は、俺が、救うんだッ!!」


 ロザリオは最後の力を振り絞って手を伸ばし、渾身の力で右手の拳を魔法陣に叩きつける。


「これで、終わりだあぁ――――――ッ!!」


 ついに魔法陣は破壊され、そしてロレッタは――その場に自身の血液をばら撒いて、眠るように倒れ伏した。


「……これで、終わったんだ……」

「……お疲れさん」


 何とか事態は収拾し、力帝都市爆破の危機は去っていくこととなった。

これでこの編は終わりとなり、ここから連続して次の編に移る訳ですが、その前に番外編として以前述べていた緋山励二と澄田詩乃のなれ初めの話の番外編を三話ほど掲示してから次の編に移りたいと思います。次はいよいよ番外編で先に登場していたアクセラ=エギルセインも出てきて、更には榊真琴の内に秘められたヤバいものが出てきたりといったことが盛りだくさんで構成を結構練ったものとなる予定です。

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