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第三十一話 ブック破り

「――さて、必死でダンスを踊りなさい!」

「…………」

「お嬢! 俺が必ず助け出しますから!!」


 舞台はとうとうクライマックス? とでも思っているのだろうが、ロザリンデはあくまで冷静で狡猾なようだ。


「一緒にダンスを踊るつもりはないってことー?」

「下民のへたくそなダンスを見て、上流階級は笑みを浮かべるのよぉ」


 あっそ。だったらとびっきりのダンスを見せてあげるしかなさそうね!


「グール達はあたし達に任せて、ロザリオはロレッタをどうにかして!」

「無理だ! 俺に何ができる!」

「あんたロレッタを助けたいんじゃないの!?」

「助けたいさ! だがお嬢に手をあげられるわけない!!」

「敵もそれを見越してぶつけてきているんだから、その辺どうにかしたら――ッ!?」


 そう言葉を言い放った矢先、一発の砲弾が俺の下へと飛んでくる。


「あぶなっ!?」

「あらあらぁ、まだ狙いを定めるには難しいわねぇ」


 小型化された迫撃砲とはいえ、地面にクレーターを作るには十分なほどの威力は持ち得ているようだ。


「ったく、面倒だなぁ!」

「面倒なのはこっちもよ! 両手が空いていれば対戦車ライフル一発で撃ち殺せるってのに!」


 対戦車ライフルなんて出されるのは勘弁!


「とにかくこのグールの供給源を絶たないと、永遠にこいつ等の相手をしなくちゃいけないから、分かれて探し出すよ!」

「魔法陣を潰せばよいのですね? 分かりました」

「小晴姉さん、私は西の方角を探します!」

「では私は東の方を」


 各自散開して魔法陣を潰して、それからロザリンデの相手をしなくちゃいけないんだろうけど――


「ワタクシがそれを黙って見過ごすわけないでしょぉ!?」


 ロザリオ含めて五人が散開したところで、ロザリンデの狙いは俺に絞られる。


「何であたしに来るかなー!?」

「貴方と血の繋がりは無くても、それなりにお話した中じゃなぁい……優しく、殺してあげる」

「そりゃご勘弁」


 とはいえ今の俺に一発当てるという事は、空中を自由に動き回る鳥に一発当てることに等しい。

 狭い路地裏に潜むグールを潰しながら、俺はどこかに仕込まれているであろう魔法陣を探し出そうと走り回る。


「出没傾向からしてそろそろこの辺のはず……!」

「あらあらぁ、そっちにいってもらっちゃ困るわねぇ」


 スポン、と空気の抜けたような音の数秒後に、俺の目の前で突如爆発が起きる。


「うわっ!?」

「グレネードランチャー。こっちの方が使い勝手がよさそうねぇ」


 月夜を背後にして、血沸き肉躍る少女が笑顔を向ける。ロザリンデは輸血パックを口に噛んだ状態で、次々と俺の下へと榴弾を送り込んできている。


「それ、それ、それっ!」

「ったく、手あたり次第にもほどがあるでしょ!」


 もはや生み出したグールを巻き込んででも、俺を殺すことの方が優先されるようだ。


「逃げないで下さるかしらぁ!? 中途半端に吹き飛ばして苦しめたくないのよぉ!」

「だったらそもそもその榴弾自体をやめたら!?」


 捨て台詞を吐いて更に逃走を始める俺の話を聞いてくれたのか、ロザリンデはぱたりと銃撃をやめてグレネードランチャーをその場に投げ捨てる。投げ捨てられたランチャーはその場ですぐに元の血へと戻って弾けると共に、辺り一面を赤く染め上げていく。


「そうね……貴方の言う通り、中途半端な攻撃は嫌よね……」


 ロザリンデは何を思ったのか義手を再び変化させ、その場に何と――


「――ろ、ロケットランチャーはずるいと思うんだ……」

「あら? こっちの方が弾道が直線的だし当てやすいでしょぉ?」


 その言葉と同時に、ロケット弾がこちらへと真っ直ぐ飛んでくる。


「あぶなっ!?」


 槍ほど早くはないとはいえ、下手に掴んだら手元で炸裂しかねない。ならば回避の一手あるのみ。

 辺りを焦土へと変えてゆきながら、ロザリンデは更にロケットランチャーを構え撃つ。


「くっ! どっちか片方なら楽なんだけど……!」


 ロケットをよけながら更に魔法陣を探すなんて、俺には無理!


「なーにが無理だ。テメェSランクの癖に諦め早すぎだろ」

「えっ? ――って、何であんたがここに!?」

「……榊ちゃんと一緒に飛んでいるあの白髪の男、何者かしら……」


 右手の方を向くと、そこには呆れた様子でこちらと並走する魔人の姿が。


「いいからあんな奴さっさとブチ殺せよ」

「だから殺しはこの都市では御法度ですってば――」

「オイオイ、それでいいのかぁー? このままだと一人殺すだけじゃすまねぇほどに大量の死人が出るぞー」


 魔人の言っている意味からして、グールが旧居住区画から溢れだしているとでもいうのだろうか。


「そもそも区画封鎖されていないの!?」

「アァ? ナニ寝言を言っていやがる、外にグールなんざ溢れてねぇよ」

「だったらなんで大量の死人が出るって――えっ!?」


 嘘、どうして? なんで? 意味が分からない。ここは人が寄り付かない居住区画。力帝都市の爪弾き者であるダストの根城のはず。

 なのに、なのに――


「――どうしてここに、澄田さんがいるの……?」


 しかも半透明で。しかも哀しそうな表情を浮かべて。


「澄田さ、あっ――」


 消えてしまった……?


「どうやらテメェにも見えたか。澄田詩乃の霊体アストラルが。澄田詩乃の幽霊ゴーストが」

「一体どういう意味で――」

「ちょっと二人で内緒話ィ? ワタクシも混ぜてくれないかしらぁ!?」


 ロザリンデは俺達に隙があるとみて、ロケットランチャーを撃ち込んできたが――


「だからテメェはさっきからウザッてぇんだよ!!」


 魔人がいつになく声を荒げると、黒いコートに袖を通した右腕が振るってその場に巨大な三日月形の闇の曲刀カッターを発生させる。


「なっ!?」

「人間風情の武器で魔人サマに戦い挑んでんじゃねぇ!!」


 その場にとどまる曲刀を前にロケット弾は見事にまっぷたつとなり、それぞれが両脇の別々の建物へと飛んでいく。


「ちょっとアイツ殺してくるわ」

「だから殺しはダメですってば!!」

「だったら死の苦痛を植えつけてきてやるよ」


 魔人はその場から黒い煙となってロザリンデの下へと羽ばたき、そして驚きのあまり声が出せずにいるロザリンデの頭を右腕で掴み上げる。


劇痛解放ペインキラー・レベル1」

「ッ!? ぎゃああああああああっ!?」


 闇夜に少女の苦痛の声が響き渡る。その声は一秒ほどであったのだろうか、一時間にも及んだのだろうか、その声がやんだ後に、月夜を背後に立つ者は一人しかいなくなっていた。


「……あのー」

「殺しちゃいねぇ、安心しろ……ったく、敵に情けをかけるなんざ――」

「イヤ常識的に考えてダメなものはダメでしょ」

「チッ」


 その舌打ちはどういう意味なんですかね……。


「とにかく、急いで事態を収束させろ。それでもって、急いで緋山励二を探せ」

「どどど、どういう事です?」

「いいから、とにかく今はオレが何とかするから急いでことを片づけてこい。今すぐだ!」


 たまにこの魔人本編でも意味の分からないことを言うから困る。


「何か言ったか?」

「何も」

「そうかよ……早く行け!」

「へいへい」


 とにかく嫌な予感しかしないのは俺だけでしょうか。そんな気持ちで俺はロザリオの下へと急いで向かう事になった。

マコ「ちょっと!? ロザリンデはあたしが倒す予定じゃなかったっけ!?」

魔人「うるせー、事態が事態だ。この物語を続けるために、まだこの力帝都市を崩壊させねぇ為にオレがブック破り(台本外の行動、ストーリーを覆す行動の事)をしてまで始末をつけたまでだ。それにまだメインディッシュのロレッタが残っているだろうが。何とかして洗脳解いてこい」

マコ「む、無茶苦茶な……」

魔人「なお、これは後書き内での会話だから本編には全く影響はねぇ」

マコ「ある意味影響与えたけどね!?」

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