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第二十六話 映画の撮影ですか?

「……何か言う事はないか?」

「…………」


 あのー、反転なおしたとはいえ足撃たれていたんですよね。それを分かった途端に家のベッドに放り投げるなんてレディーの扱いがなっていないと思うんですよね。


「いや、だからその――」

「言い訳を聞くつもりはない!」


 むちゃくちゃですよこの人、言う事はないかって聞いた直後に言い訳は聞かないとか。しかもベッドの上で正座させて何か俺が悪い雰囲気を出させているし。


「その、マコさんが回復なされたのならよろしいのでは……」

「いけませんお嬢。こいつは俺を騙して、ここまで……ここまで運ばせたというのですから!」

「フン、人に仕える者としては至極当然のこと。マコさんをその手でお運びできたという身に余る光栄をかみしめて今後の人生を歩むがいい」


 ラウラはラウラでオーバーすぎるし、俺とロレッタだけが無駄に肩身の狭い思いをしているワケなんですが。

 そして何よりこの場を混沌に陥れているのが――


「フフ、お二人とも仲がよろしいようで」

「何をいうか!」

「そんな訳が無いだろう!」


 之喜原先輩、あまりこの場を煽るのは止めてもらえませんか? 毎回収拾つけるの俺なんですけど。


「ちっ、とにかく敵を取り逃がした事には変わりない。俺達が考えるべきなのは、これからどうするかだ」

「どうするもこうするも、敵地が分からないならどうしようもないじゃないですか」


 日も落ちていく中、この場で唯一実践できそうな考えを練っていたのは之喜原先輩ただ一人だった。


「それはそうと、相手は全員集結できたようで、そろそろ本格的に攻めてきてもおかしくはないと思いますが」

「本格的に攻めて来るって、どうやって?」

「そうですね……たとえばこうして家に引き込もっている我々をおびき寄せるために、何か大きな事件を引き起こしたりとか――」


 その瞬間――まるで之喜原先輩の言葉を待っていたかのように、外から衝撃を伴った爆発音が鳴り響く。


「何が起きた!?」

「ちょっと見てくる!」


 ベランダから見た限りだと、同じ第十区画内で起きた爆発のようだ。 爆発が起きた場所からは黒い煙が立ち上り、消防隊が駆けつけているのかサイレンが鳴り響いている。


「榊君、テレビを見てください」


 之喜原先輩はというと爆発が起きた後即座にテレビをつけていた様で、テレビでは現場に駆け付けたリポーターや野次馬の姿が映っている。


「現在、第十区画で謎の爆発が起こった模様で、現場では――」

「ウワァ!? 中から燃える人間が出てきたぞ!?」

「い、一体どういう事でしょうか!? もしや炎熱系の能力者の仕業という事で――み、見てください! 消防隊の一人が、燃えさかる死体に押し倒され――」


 テレビはそこで突然映像が切り替わり、報道が打ち切られた旨を伝える静止画が差し込まれている。


「……これは報道規制が入りましたね」

「情報クリアランスが上がったか、もしくは――」


 ――そこでは放映できない様な惨たらしいことが起きているのか。


「……これが挑戦状ですか」

「映像の最後らへんに映っていたのは、恐らくグールだろう。つまり――」

「敵の魔法で使役されているものとでも言いたそうですね」

「……そういう事だ」


 ついに相手は行動に出始めた。ならばもちろんこっちも――


「――迎え撃つしかないよね」



          ◆◆◆



「――うわ、マジですか」

「お嬢、俺の背中に隠れていてください」


 現場へと向かうと、そこには既におびただしい数の死体グールがうごめいていた。


「ううぅ、うううううぅう……」


 鳴き声とも悲鳴とも聞こえるような声が、辺り一面から聞こえる。正直言って気持ち悪いし、ゾンビ映画でイメージしていたものとは違っていてかなり引いてしまう。


「やはりグールか。しかも供給源の魔法陣は恐らくあの燃え盛る建物の中だ」

「燃えている家屋の中なら早々に手を出せないと思ったのでしょうが……あいにくこちらには、ねぇ……」


 な、なんでこっちを見るんですか。まさか女の子一人で燃えている家の中に突っ込めと?


「別に中身は男性でしょう?」

「それでもなんか気持ち的に……」

「グズグズしている暇はない、来るぞ!」


 各々が構えを取り始める中、一人昂る高揚心を抑えきれずに前へと出る者がいる。


「ちょっとラウラ! これだけの人数だから固まって――」

「ゾンビ映画では集団で固まるとほぼ一人犠牲者がでます。しかもそこの駄犬のように背中に負傷者のように背負った場合だと、二人纏めてやられるパターンも見受けられます」

「一体何を言っているのだこのメイドは!?」


 ラウラはまるで何かに取りつかれたかのように恍惚とした笑みを浮かべ、そして腰に控えていたデスサイズショットガン二挺を威風堂々と取り出し、眼前へと構える。


「そしてゾンビといえば、ショットガン!!」

「……あのー、ラウラ? 一体何を言って――」

「ゾンビなど映画の中でしかないものと思っていましたが、まさかこうして間近に見られるとは!!」


 なんとなく今ので全てを察してしまった自分がいる……確かに最近ラウラの部屋に映画関連のグッズが増えているような気がしなくもなかったけど、まさかゾンビ映画好きだったとは。


「ならばこの場は私が全てお相手いたしましょう! 今すぐに!!」


 あのー、ゾンビ映画だと一人で無双した最後に不意打ちでやられるのもお決まりなパターンな気がしなくもないんですけど。

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