ナガル王国の裏の顔
カルマ達は宿を見つけ、なんとか宿代を出し、宿へと泊まる。カルマとマリンはそれぞれのベッドでゆっくり休む。カルマは魔剣を持つと、マリンは魔剣を見ながらカルマに聞く。
「その剣は何処で手に入れたの?」
カルマはマリンに答える。
「ある人からもらったんだけど…なんで、魔剣なんだろう?」
そう言うと、マリンは寝てしまった。どうやらマリンはそのまま眠ってしまったらしい。カルマも寝る事にした。
翌朝。カルマ達は朝ご飯を済ませ、宿から出る。この場所から王宮がよく見える。二人はとりあえず、王宮へと向かって歩き出した。
カルマはマリンと、どう会話をしていいのか分からない。気まずいカルマは、魔法を使いモウカを呼び出した。
「なんのよう⁉︎」
不機嫌そうにモウカがそう言うと、カルマは恐る恐るモウカに向かって言う。
「その〜……マリンと話をしてくれ。」
モウカはカルマに怒る。
「はあ〜〜。そのぐらい自分から話しなさいよ!こういう事で、私を呼び出さないでよね。バーカ。」
カルマはモウカの言い草にムカついた。そこで、言い返す。
「何を話していいのか、分からないんだよ!お前だってこれくらい役にたて!」
カルマの反抗的な言葉にモウカは腹を立て言い返した。それをまたカルマが言い返す。そうこう歩いている内に、王宮の近くへとやって来た。
マリンがこちらを見ている。カルマはモウカをマリンの前に押し出す。
モウカは困りながらもマリンへと向かって話す。
「えーと……マリンだっけ。私はモウカ。その〜…マリンは何処から来たの?」
マリンはうつ向いてしまった。モウカは気まずくなった。そんなモウカはカルマに八つ当たりする。
「なんで私がこんな思いしなきゃいけないのよ!」
カルマは言い返す。
「知らねぇよ!聞き方が悪かったんじゃねえの。」
モウカとカルマは言いあっていた。
カルマがふっとマリンの方を見ると、マリンはなぜか四人の男達に絡まれていた。カルマはマリンを助けようと、割って入る。
「ちょっとまった!その子から離れろ!」
カルマがそう言うと、四人の男達はカルマの事を睨みつけるが、カルマは動じない。カルマがマリンを逃がそうとすると、カルマは男から顔を殴られてしまった。カルマはその反動で倒れてしまう。仕方がなくモウカは助けに行こうとすると、カルマ達の方へと一人の男がやって来た。
男はカルマへと手を差し伸べる。カルマは手を取り立ち上がると、四人の男達は男を見るなり逃げて行った。モウカがカルマの元へと駆けつけると、カルマへと怒る。
「何やってんのよ!もう…。男なら戦いなさいよ。」
カルマは言い返す。
「仕方ないだろ!俺は俺なりに頑張ったんだ。」
呆れながらモウカは言う。
「分かったわよ。私は帰るからね。」
そう言ったモウカは消えてしまった。カルマは男の方へと向く。男は歳上の青年で、優しそうな顔立ちをしている。そんな男はモウカが消えた事に驚いたのか、カルマに聞く。
「あの子、消えたけど…どういう事だい⁉︎」
カルマは答える。
「あいつは、俺の精霊。」
更に驚く男は、自分の名前を言う。
「僕はライラン。この国の騎士をしているんだ。」
「俺はカルマ。こっちにいる子はマリン。」
カルマもそう答えた。
ライランの元へ、騎士だと思われる人達が何人かやって来た。ライランは騎士達に向かって言う。
「ちょうどよかった。この二人を連れて行け。」
カルマは戸惑いなが、ライランへと向かって言う。
「どう言う事だよ⁉︎」
ライランは不敵な笑みで、カルマを見て言う。
「君は使えそうだから王様が喜ぶかもしれないし、娘は美人さんだから、高値で売れるだろう。」
カルマはその言葉の意味が分からなかったが、マリンには分かっていた。
マリンはカルマの腕を掴むと、隙を狙い走り出す。マリンはカルマを引っ張りながら全力で走る。騎士達は追ってくる。二人は細い路地裏へと入り混むと、それを見た騎士達は追ってこなかった。
路地裏でひと息つく二人。カルマはマリンへと聞く。
「どうして、ライランは俺達を捕まえようとして来たんだ?」
マリンは答える。
「あの人達は騎士なんだろうけど、きっと奴隷商人もしているのかも…。」
カルマは奴隷と言う言葉に驚いた。マリンは続けて言う。
「この国は、こんなに明るく見えるけど…何か裏があるのかも。」
こんなに冷静に話すマリンに対して驚くカルマは、人間界の荒れ模様に怒りながら思う。
(なんで人間界ってどいつもこいつも…。)
マリンは路地裏から、大通りに騎士達がいないかを確認すると、カルマを連れて大通りへと出る。しかし、周りにはいなかったはずの騎士達が、隠れて待ち伏せをしていたのか、二人の前に突然と現れた。カルマはマリンへと言う。
「俺はモウカを呼び出すから、マリンは全力で逃げろよ。なんとか騎士どもを引き付けておくから。」
マリンは心配そうにカルマの事を見る。
「大丈夫。なんとかなる!それに、騎士どもがお前の魔法を知ったら、全力でお前を捕まえようとする。考えはないけど、俺だってやる時はやれる。」
カルマのその言葉をマリンは信じてみる。
カルマは手をかざし、モウカを呼び出した。騎士達は驚くと、ライランは騎士達に向かって言う。
「恐れるな!術者を捕らえればいい。」
騎士達はいっせいに、カルマを狙って来る。モウカは直ぐさま状況を判断し、騎士達に向かって火を放つ。騎士達は怯んだ。その隙をついて、マリンは走り出す。マリンが走る先に、ライランが待ち構えていた。マリンは足を止めようとすると、カルマが全力疾走で、マリンを追い越した後、カルマは魔剣を取り出した。カルマはライランへと剣を振りかざすと、ライランも腰に装備していた剣を取り、剣を受け止めた。
その隙にマリンは走り去る。ライランは不敵な笑みで、カルマの事を見ながら言う。
「あの娘が目的じゃあない。君を捕まえる事こそが目的さ。」
カルマは全力で剣を押すのだが、ライランの方が力が強く、弾かれてしまう。
(くっそ。こんな時の為に、剣術を習っとけばよかった。)
そう思うカルマは、勢いよく剣を振り上げ、ライランへと振り落とそうとするも、ライランに勢いよく腹を蹴られてしまう。カルマは剣を手から離し、両手で腹を抑えながら倒れる。
それを見かねたモウカはカルマの元へと向かおうとするも、騎士達にふさがれてしまった。カルマはライランの顔へと見上げると、ライランはカルマへと言う。
「遊びは終わりだよ。カルマくん。」
カルマは、魔法を無効する鎖を両腕に巻かれ、モウカは消えてしまう。ライランはカルマの魔剣を拾う。
「不思議な剣だな。」
そう行ったライランは騎士達と共にカルマを連れ、王宮へと向かった。
それをこっそりと見ていたマリンは、カルマを助けるべく、別の道から王宮へと向かう。
ー王宮ー
王宮は二階建てで、中は高い天井に数多くの扉が並んでいる。二階に上がると、一つの扉が奥の方へとある。近づいて行くと、天井に近いほどの高い扉だ。
ライランに連れて来られたカルマは、王宮の中の広さに驚いていた。ライランは扉を開きカルマと共に中へと入る。
中はとても広い部屋で、奥には王座へと座る王と思われる男がいた。男の元へとゆっくりと近づいて行き、男のすぐ側に来ると、目の前で無理やりライランはカルマを座らせた。ライランは男へと言う。
「ナザム王。あなたにきっと役にたつ、奴隷となる者を連れて来ました。」
ナザムはカルマの事を見ると、言う。
「こんな子供を奴隷にしても、なんにもならんではないか。」
ライランはナザムに向かって言う。
「彼は精霊魔法を使えます。役にたつと思いますが。」
ナザムは怪しがる。それを見かねたライランはカルマの両手の鎖を外そうとする。
「王様に君の魔法を見てもらおうと、思ってね。外したらあの精霊を呼び出してくれ。逃げようなんて考えないでくれよ。どうせ、騎士達が駆けつけて君を捕らえるけどね。」
そう言ったライランをカルマは睨みつける。鎖が外れると、カルマは立ち上がり、モウカを呼び出した。ナザルはモウカを見るなり王座から立ち上がった。
「これは素晴らしい。」
そうナザルが言う。
一方でモウカは戸惑っていた。モウカはカルマの方へと見るなり、カルマに聞く。
「どうなってんのよ。あんた、あのまま捕まったの。ほんと〜にバカね。」
カルマはモウカへと言う。
「確かに、俺はバカだ。だからお前を頼ってんだ。」
「ほんと、馬鹿ね。仕方ないわね。」
そう言ったモウカは、ナザルとライランに向かって火を放つ。ナザルは驚きのあまり、腰を抜かした。ライランは火を避るが、そこを狙っていたカルマはライランの顔へと殴った。ライランはその反動で、カルマの魔剣を落とすと、カルマは急いで魔剣を拾う。
カルマは剣を構えるとモウカはカルマの側に寄る。そこへ大勢の騎士達がやって来た。すると扉の奥から勢いよく、水が流れて来た。騎士達は水を避けると、その扉の奥からやって来たのはマリンだった。