旅に出る
魔物が倒れると、魔物の死体に人々が集まって来た。人々は驚きのあまり、声を出さない。すると、一人の男がカルマ達に向かって石を投げつけて来た。石はカルマに命中する。
「イテ!何すんだ‼︎」
カルマが男に向かってそう言った。男は言う。
「魔物を倒すぐらいの力を持つ者は、災いをもたらす。すぐに出て行け‼︎」
周りにいた人々もつられる様に、石を投げ始めた。思わずモウカは耐えきれずに消えた。少女も痛がっている。カルマは取りあえず、少女の腕を掴むと、その場から逃げるように走り去る。
少し遠くへと行くと、 カルマは人々が追って来ないのを見て安心する。魔剣を鞘に収め、少女に向かって言う。
「お前は何者なんだ?てか何で魔物に追われてたんだよ。それに、あんな強力な魔法を使える奴なんて、そうそう居ないぞ。」
少女は閉じていた口を開くと、カルマに言う。
「あなたこそ何者なの?あなたが言えないのなら、私も言えない…。それに魔物に追われていた事だって、あなたには関係ない。」
カルマはその言葉に何も言い返せなかった。とりあえず少女を連れて飲食店へと向かった。
ー飲食店ー
レイは初めて会った少女にも優しく対応してくれた。カルマと少女は二階へと上がり、部屋へと入る。
ベッドに腰をかけたカルマは、ため息をつく。少女は床へと座る。カルマはある事を決断し、少女へと言う。
「このまま街にいたら、危ない。俺もそうだし、お前も危ない。だから…この街から出て行こう!」
少女は疑問に思い、カルマへと聞く。
「なぜ危ないの?なぜ街の人達は石を投げて来たの?」
カルマは答える。
「この街の人達は、よそ者を嫌っていて…突然、現れた俺の事だって凄く嫌ってる。たぶん…お前の事も。お前の大きな魔法を見て、恐れたんだと思う。」
カルマは立ち上がり、頭をかかえこむ。
「あ〜〜。考えてらんねぇ。とにかく明日、出るぞ!」
少女は頷いた。
カルマはリュックを取り出し、支度し始め、荷物をまとめると、ベッドに横たわる。少女も横になった。少女は床で寝ようとしている。それを見たカルマは、ベッドから降りると、少女に言う。
「俺が床で寝るから、お前はベッドを使えよ。」
少女は静かにベッドへと移動し、横になる。そのまま眠りについた。カルマは床へ横になると、すぐに眠った。
翌朝。カルマは少女を起こし、リュックを背負い、魔剣を装備した。部屋から出て、階段を降りようとしていた時、レイが誰かと話す声が聞こえてきた。声の感じからして相手は男のようだ。
「早くあいつを追い出さないと、不吉な事が起こりかねない。レイさんも、手伝ってくれ。」
男がそう言うと、レイが答えた。
「そうね。今回の事で分かったわ。あの子は邪魔者でしかないのよね。」
その言葉が、カルマの心に突き刺さった。カルマはわざと大きな音をだしながら、階段を降りて行く。その音に気づいた男は、急いで出て行った。
カルマと少女は階段を降りきった。レイは焦っている様子だ。カルマは笑顔で明るくレイへと話しかける。
「おはよう。今日、俺達は街を出て行くよ。」
レイは突然の言葉に驚くが、内心では喜んでいた。
「そうなの?今日なんて、いきなりで驚いたけど…ごめんね。今までありがとうね、カルマくん。」
レイの言葉にカルマは思う。
(ごめんとか、ありがとうとか、全部が嘘のくせに…。)
カルマはレイの横を通る時、ボソっと言う。
「さよなら。」
カルマと少女は店から出て行く。レイは立ち止まっていた。レイは少し悲しい気持ちになた。
カルマと少女は街から出る。カルマは振り返り、街を少し見た後、前へと向き森へと向かった。
ー森ー
森の中を進んで行くカルマと少女。森の中には人が通るための道はあるのだが、迷う事もある。そこで、カルマは地図を頼りに進む。少女が聞く。
「何処へと向かうの?」
カルマは答えると共に、少女へと聞く。
「ここから近い、ナガル王国。そこなら、よそ者を受け入れてくれるだろう。多分……。でさ、俺はカルマ。お前の名前は?」
少女は名前を言う。
「マリン…。」
カルマは少し笑顔になる。
森を進んで行くに連れて、カルマは腹を空かせた。
道から少し外れ、カルマはリュックから缶詰を二つ取り出した。マリンに一つ渡す。
「ごめん。これしかないんだ。」
カルマがそう言うと、マリンは静かに食べ始めた。カルマも食べる。
食べ終わると、カルマはリュックを背負い、マリンと共に道へと戻った。森の中を進んで行くと、林の中から何かが近づいて来る。どんどん近づいて来る。
すると、目の前から野獣が飛び出して来た。野獣は犬の様な見た目だ。だが、野獣は何処かへ行こうとする。そこへ、野獣より大きな魔獣が野獣をくわえ噛み殺した。焦るカルマはモウカを呼び出そうとするが、魔獣がこちらへと走り向かって来る。
マリンが魔獣に向かって、水魔法を魔獣へと向かって使った。魔法は魔獣へと直撃し、倒せた。
(人間界にはこんなのが、いっぱい居るのかよ……。)
ふと、そう思ったカルマは人間界でやって行けるのかと不安になっていた。
ー夜の森ー
暗くなった森の中、モウカの炎の明かりで、進んで行く。カルマの腹が鳴る。
「なに鳴らしてんのよ!だいたい、私を何だと思ってんのよ。ただの明かりを灯すために呼ぶなんて、バカじゃないの。」
モウカはそう怒ると、カルマはなだめようとする。
「まあまあ。食べ物をあんまり持ってこれなくってさ。悪いけど、お前が頼りなんだ。」
モウカは何げに頼られている事に嬉しかった。
そうこうしている内に、明かりが見えてきた。その明かりへと向かうと、王国の入り口へと辿り着いた。王国の周りには特殊なバリアが張られている。
王国へと入ろうとすると、難なくバリアから入れた。カルマは不思議に思うが、宿を探しに行く。モウカは自分の役目が終わると、消えていった。