鳴動3
「なんであんなこと言ったんですか?」
伊坂組の社屋の階段を下りながら、竹下が向坂に囁いた。
向坂は黙ったまま階段を下りて外に出ると、そこでやっと口を開いた。
「わざわざ専務が警察に応対したのは、8年前の失踪で取り調べられた件と関係があるのかと思ってな」
「ほう……」
竹下は納得で出来たような出来ないような、曖昧な返事をするしかなかった。
「あれだけ疑われたわけで、極端な話、任意なんだから門前払いするか、普通でも一般社員にでも応対させておくかで足りると思わないか?」
「かと言って専務に応対させるメリットがありますかね?」
「警察が8年前のことで何か掴み、今回のことを理由に調べに来たと思ったかも知れない。そして警察の様子を役員である専務に探らせたと」
「ただの社員より、直接の関係が深い専務の方が、色々と探るのに都合が良いということですか?」
「端的に言うとそれだ」
竹下が「自分」の真意を掴んだのを認めると、向坂は軽く笑みを浮かべた。竹下はその表情にちょっと安心した。
「やっぱり気になってるんですね。今回のとは事件自体が違うとしても、案外簡単に引き下がったんで拍子抜けしてたんですが」
「今回の件は、あれ以上詰めても何も出てこなそうだったからな……。ただ、そりゃやっぱり8年前の件はどうにも忘れ難い」
竹下の問いかけにぶっきらぼうに答えた向坂だが、それに反するかのように、獲物を追うような、ぎらぎらした何かを竹下は彼から感じた。やはりまだ諦めてはいないのだろう。少しでもチャンスがあれば、犯人を挙げたいという刑事の飽くなき執念、いや本能を、先輩刑事からヒシヒシと感じた竹下だった。
そして車に乗り込む前に、竹下と向坂は駐車場で車をチェックすることにした。それなりに流通しているタイヤだけあって、数十台もあった車の中に5台ほど似たタイヤの車があったので、シートでタイヤ痕を取り、次の聞き込み先に向かうことにした。
※※※※※※※
西田と北村は、松重会長への聞き込みが終わると、そのまま遠軽署に戻り、松重から貰った会員名簿と今回の参加希望者リストのコピーを調べ始めた。今回の記事後に応募してきた3人は、男1名女2名だった。現場の「作業」を考えると、人魂の主が女性である可能性は相当低いが、本人の「代理」として応募させた可能性も完全には棄てきれないので、女性についても調査は一応することにした。
松重が言うには3人共に電話での応募ということだった。男の名前は白川洋三58歳、女は永田美沙子21歳、富岡多香子42歳。全員北見市内在住だ。ただ、白川と富岡については、自宅で屯田タイムス紙を購読していたのがわかったが、永田が今回の調査について知った経緯はよくわからなかった。職業などについては、新規応募の3人については現時点では確認していないとのことだったので、北村と分担してすぐに電話で確認することにした。
※※※※※※※
白川洋三は、電話した時点で午後4時だったため、まだ勤め先から帰っていないということだった。応対した妻に聞いたところでは、高校の歴史の教員ということで、「如何にも」こういう話に興味がありそうなタイプだと西田は思った。この時点で何か怪しい点は感じなかったが、念のため後から、勤務しているという高校に所在確認することにして電話を切った。
北村は最初の永田美沙子に電話を掛けたが出なかったので、すぐに富岡多香子に切り替えた。自宅に掛けると本人が出たので時間的におそらく専業主婦なのだろうと北村は思った。当初「警察」を名乗った彼を疑って掛かっていたため、電話番号を告げ、調べた上で折り返し掛けるように言って一度電話を切った。なかなか掛かってこなかったが、1時間程してからやっと電話が鳴った。
彼女はやはり色々調べた上で電話を掛けてきたようだった。時間が掛かったことを謝りながら、「何故警察が自分に掛けてきたのか」という疑問を払拭しきれないようで、こちらの出方を探るような言動をしているのが、北村にも手に取るようにわかった。北村が聞き込みの理由をそれなりに説明すると、自分には関係ないと確信を持てたのか、かなり饒舌になった。
元は父親が生田原の出身で、幼少の頃よりタコ部屋労働の話を聞いていたのと、子供が中学生になったので、手がかからなくなったということもあり、今回参加してみようと思ったらしい。北村自身も直感的にだが、事件とは無関係との確信を得たので、さっさと電話を切りたかったが、中年女性のおしゃべりは止まらず、20分近くも時間を無駄にしてしまった。
そして西田は、白川の勤務先の高校に直接電話して本人の勤務先を確認し、本人とも会話してこちらも無関係だろうと感じていた。残るは永田美沙子1人だが、なかなか電話に出ず、仕方がないので、2人は名簿全体から何か怪しい人物がいないか洗い出す作業で時間を潰していた。
「まだ繋がらないのか?」
作業中に2度目に掛けてみたが、受話器を黙って置いた北村に西田が問う。
「ええ、出ませんね」
「そろそろ捜査会議の時間になっちまう」
「そうは言っても仕方ないですよ、相手が出ないんじゃ」
そんな会話をしていると、突然電話が鳴った。北村が受話器を取ると永田からだった。
電話の声はかなり訝しげなトーンだった。富岡同様やはり怪しんでいるらしい。若い女性ならそういう態度にでるのが当然だろう。北村が警察関係者であることを名乗ると、割と安心したように聞こえたのは、富岡より若く世間知らずなのか、ただ単に人を信用しやすいからなのかわからないが、そこからは話はスムーズに進んだ。
本人が言うには、今回の調査に参加しようと思った理由は、通っている北見青洋大学文学部のゼミで、北海道の開拓史について学んでいたかららしい。白川と富岡は自宅で屯田タイムスを購読していたのに対し、永田が購読リストに無かったのは、大学の図書館で屯田タイムスの記事を見たことが原因だった。確かに購読リストには青洋大学の図書館が含まれていた。こういう多くの人の目に付く店舗や施設が新聞を取っていた場合、どこまで調べられるかは難しいことが元々予想できたが、現実にこういう例が出てくると、それを再認識させられた。
10分ほど聴取した限り、永田本人には色々考えても全く怪しい点が見当たらなかったので、本人が実際に大学に在籍しているかどうかは後で確認することにして、取り敢えず3人についてはこの時点でほぼ事件には無関係という結論を出さざるを得なかった。北村は西田に一通り永田との会話について説明した後、大きく溜息をつくと、椅子の背もたれを使って上半身を反らした。
「まあ仕方ない」
西田がそんな相棒に声を掛けたが、
「この3人に怪しいところが皆無となると、調査会のメンバーについてはこの先なかなか厳しいですね」
と絞り出すように返すのが精一杯だった。
「調査会については厳しいかもしれない。だが、永田の例を考えるとやはり記事を見た人間は、個人で取っているよりかなり広い。まだ諦める段階じゃない」
と西田は言うと、調査会と購読者のリストを見比べながらコーヒーを啜った。
※※※※※※※
そしてこの日の捜査会議の時間になり、西田と北村、北見から直前に帰還した向坂、竹下のコンビも本部に集まった。会議でも西田や竹下達のグループだけでなく、他のグループも成果は得られていないようで、捜査全体として進捗状況は悪いことを倉野事件主任官も認め、捜査員に強めの発破を掛けた。倉野もある程度の難航は予想はしていたと思うが、時間的にそうそう甘いことは言っていられないのは、捜査員達にも痛い程わかっていたことである。
厳しい雰囲気の会議が散会した後、副本部長である槇田署長と沢井刑事課長が遠軽署の刑事達を集め、ねぎらいの言葉を掛けたのが、西田達にはせめてもの慰めだった。
※※※※※※※
次の日、倉野と槇田署長に改めて許可を貰い、聞き込みローラー作戦から2日離れ、会員リストを電話を掛けてずっと洗っていた西田と北村であったが、特に怪しい人物をリストアップすることは出来なかった。やはり記事が出てから応募してきた人間が居なかったという現実は、かなり厳しいものがあったらしい。さすがにこれ以上こだわっていると、他の捜査員達にも迷惑を掛けることになるので、切り上げて翌日から残り僅かになった購読者の洗い出しに戻ることにした2人。朝方遠軽署を出発しようと、席を立ちかけた西田に、直前に掛かってきた電話を受けていた黒須が声を掛けた。
「西田係長、留辺蘂の松重さんという人からお電話です。松重と言えばわかるということですが?」
「あ? ……おう、松重さんね。こっちで電話取るから回してくれ」
そう言うと自分の机の受話器を取った。
「お電話替わりました。西田です」
「松重です。先日はお世話になりました」
「いえいえ、こちらこそ。で、何かありましたか?」
「ええ……。実はですね、この前ちょっと言わなかったことがあったんですよ。でもやっぱり気になりましてね。お伝えした方が良いかと思いまして」
相手の発言で、西田は少し身構えた。
「ほう。で、具体的に何ですか?」
「まさに生田原側の調査の件なんですが……。実はね、その件で気になることがあったんです」
「気になること?」
「そうです。この前お話した時に、古くからいる会員に記事が出る前に連絡したということを言った記憶があるんですが、憶えてますか?」
「はい、確かにそんな話がありました」
「で、調査会の歴史みたいな話になっちゃって言いそびれたんですが、その会員さんの中に、『今回の調査は不要じゃないか』という意見を言った人がいたんです」
「え?本当ですか?」
「勿論本当ですよ」
西田は、「おいおい、この前ちゃんと言ってくれよ」
と言いたい気持ちをぐっと押し込めて、話を続ける。
「で、それは誰なんですか?」
ちょっとした沈黙があった後、少々早口で松重は、
「田中さんですよ」
と告げた。
「田中さんってのは……。ちょっと待ってください」
そう言うと、西田は机の上にあったリストを手に取って、さっと目を通した後、
「貰ったリストにある、田中清さんのことでいいですね?」
と確認した。
「はい、清さんですね」
「となると……、その時の状況について、もうちょっと詳しく教えて貰えますか?」
「その時とは?」
「松重さんが田中さんに中止を進言した時のことですよ」
西田は少々焦りが出たか、やや語気を強めていた。
「だから、私が田中さんに『今度は生田原側を詳しく調べて遺骨収集することにしたんですが』と話すと、田中さんは、『生田原側は昔、常紋トンネル調査会以外で詳しく調べたことがあるから、今更やってもほとんど(遺骨が)出てこないんじゃないかな』と言ってきたんですよ」
松重も西田の口調にややイラッとしたのか、冒頭不機嫌な言い方になりかけたが、その後はすぐに修正して冷静に説明した。
「なるほど。田中さんは『以前調査したことがある』と仰ったんですか」
「ええ」
「そうですか。わかりました。確かに、今回の件では先日お話しした通り、あなた方の調査に危機感を感じた犯人が、色々やったのではないかという疑念を私たちも持ってますから、そういう意味では、松重さんの話は大変興味深いんですよ。話していただいて大変助かりました」
西田がそう伝えると、松重は、
「これって田中さんが何か事件に関与してるってことになるんですか?」
と恐る恐る聞いてきた。
「それはまだわかりません。ただ詳しく調べてみる必要はあります」
「うーん、困りましたね」
松重は自分のせいで田中に迷惑が掛かるのは困ると感じたのだろう。
「松重さんには出来るだけ迷惑は掛からないようにしますが、そうは言っても、田中さんに話を聞くときに、松重さんとの話はどうしても出ますから、そこは申し訳ないですけど我慢していただくしかないですね」
西田は率直に語った。実際そこは誤魔化しようがない。
「まあ仕方ないですかね……。人の命が関わった事件ですから、あのまま黙っておくことは出来なかったし。それに田中さんはそういう人じゃないと思いますから……」
西田に返す松重の口調は重く、自分自身を納得させようと努めているように聞こえた。
「ええ。実際問題、調べてみないとよくわかりませんから。田中さんが事件に関わっているかどうか、まだ何か決まったわけじゃないです。何度も言いますが、こちらとしても松重さんに連絡していただいて助かりましたよ。よく話してくださいました」
「そう言っていただけると、多少は胸の閊えも下りますが……」
「心中察します」
西田は松重の心情の吐露に対し一言だけ返した。いや、それしか言う言葉を持たなかったという方が正確だったろう。
そして会話を終え受話器を静かに置くと、一変したように北村に大声で、
「北村! 予定変更だ。事件主任官に許可を貰う!」
と力強く言った。
それからすぐに、倉野事件主任官に西田が許可を貰いに行くと、彼は椅子から立ちあがり、
「おお、そうか! それは面白い情報だな」
と最近見なかった笑顔で対応した。
「というわけで、申し訳ないですが、こちらの聞き込みの方は後回しにさせて貰います」
と西田が言うと、
「いや、こっちで処理するから、西田達はその件に専念してくれ。捜査も正直行き詰まってる部分がある。期待している頑張ってくれ!」
と鼓舞した。
「それは助かります。後のことはよろしく御願いします」
西田は一礼するや否や、駆け出さんばかりの勢いで部屋を出て、北村と合流すると車に飛び乗った。
「松重さんはなんて言ったんですか?」
エンジンを掛けながら北村が聞いてきた。
北村には松重から電話が来たこと以外は詳細を言わずに予定変更を告げたので、何が起こったのか聞くのは当然のことだ。
「古参メンバーの田中って人物が、『生田原の調査は不要』と松重に言ったらしい」
「え、そうなんですか? 一昨日電話を掛けた時には、特に不審な点は見当たらなかったんですけどね」
北村は首を軽く捻ると、アクセルを軽く踏んで車を発進させた。
事実、2日前に北村が田中に電話で確認した時、彼が古くからの調査会のメンバーであることが語られただけで、特に怪しむべき点は見当たらなかった。まさに状況は急転且つ一変したと言って良い。事態の進展と対照的に静かな遠軽市街を抜けながら、車はペースアップした。
「西田さん、事前にアポ取らないでいいんですか?」
国道242号に出た頃北村が突然確認してきた。
「むしろ取らない方が良いだろ。いきなり会いに行くというと、場合によっては相手に勘づかれる可能性がある。それに田中は既に退職して日中も家に居るだろうから」
「なるほど、それもそうですね……。しかし田中が実際に事件に関わっているんでしょうか」
「断定はそりゃまだ早い。ただ、調査が行われなければ、事件発覚の可能性はほぼゼロなんだからそれに越したことはない。そういう方向に持っていけば、犯人や事件に関わった人間としては助かるのも事実だ」
「調査不要という話はいつ言ったんですか、田中は?」
北村は続けざまに質問をぶつけて来た。
「記事が出る前、古参メンバーである田中に松重が連絡した時に言われたということだ」
「ああ、そう言えば記事前に連絡したとか言う話を聞き込みの時に(松重が)してましたね。思い出しましたよ……。そうなると、田中が調査会の生田原調査を阻止できなかったので、田中自身か誰かはわかりませんが、遺体を回収する必要性が生じたという筋書きが考えられますか。だけど、だとすれば、困ったことに屯田タイムスの記事は関係なかったことになってしまいますが」
「いや、それは違う。もし田中が関係しているとすれば、購読リストのローラー作戦が無駄になることは間違いないけど、そもそも屯田タイムスの件で、調査会の調査が今回の件のキーポイントになったというストーリーを思い浮かべたのだから、記事の存在を知ったこと自体は重要な発見だった。これでもし田中が事件関係者であれば、一気に事件の展望が開けるはずだ」
峠道を登る覆面パトカーのエンジン音は、心なしかいつもより軽く2人には聞こえた。
※※※※※※※
1時間程で北見郊外にある田中清の自宅を訪ねると、妻らしき老婆が玄関に応対に出た。
「すみません、遠軽警察署の者ですが、ご主人? の清さんご在宅でしょうか」
北村がそう伝えると、インターホンの時点で警察を名乗っていたとは言え、手帳を目の前にして、さすがに目を見開いて驚いた表情を浮かべた。
「うちの人に用事ですか?」
「ええ、先日も電話で色々お聞きしたんですが、今日はそれについてもっとお聞きしたいことがあるものですから」
西田がやや抑えたトーンで喋った。
「お父さん、なんか警察の人が来てますよ」
妻の呼び声に、しばらくすると田中がのそっと現れた。
「あれ、先日殺人事件の捜査で電話くれた刑事さん?」
田中はすぐに西田達について察しがついたようだ。
「はい、先日は電話で失礼しました。ちょっと今日はその件で、更に色々お聞きしたいので、直接お伺いしたんですが、お時間ありますか?」
北村がわざとらしく聞く。時間があろうがなかろうが、「こっち」に付き合って貰うことは言うまでもない。
「ああ、まあいつも暇してるからそれは問題ないが、それにしても何かあったのかい?」
老人は探るように尋ねた。
「ちょっと話が長くなりそうなんで、もし良ければ中にあがらせてもらってよろしいですかね?」
西田が聞く。一見図々しいように聞こえるが、玄関前で警察が事情聴取を長くすれば、周囲に不審に思われる可能性があるので、田中に配慮した発言でもある。
「まあなんだかわからんが、そういうことならあがってくれや」
田中は不満げではあったがそう言うと、2人を部屋の中に招き入れた
8畳ほどの和室に通されると、田中には見せていなかったので、再び警察手帳を出してまず自己紹介をした。丁度それが終わった頃、妻がお茶とおかきを出してくれた。北村は遠慮しているようだったので、西田は顔を縦に振って、食べても構わないというサインを出した。田中はそれを見ながらお茶を一啜りすると、先に話を切り出した。
「で、その話ってのはなんだい」
相手から切り出してくれたのは、「疑ってかかっている」だけに刑事達にとっては渡りに船だった。
「実はですね、先日の件についてなんですが」
そう言ってから一拍程時間を置くと、北村は言葉を続ける。
「田中さん、あなた松重さんから生田原で調査するという話を聞いたとき、反対されたようですね?」
「反対!?」
田中はそう言うと、置いていた湯飲みをちょっと持ち上げて、また机に置き直した。
「そう聞いていますが」
西田が追撃する。
「刑事さん、それ会長の松重さんから聞いたのかい?」
「ええ、まあ」
北村がややバツが悪そうに答えた。松重と西田との会話の詳細を、北村には説明していなかったので、彼が松重の「心配」について具体的に知っていたわけではなかったが、さすがに松重に迷惑が掛かることは気にしていたようだ。
「困ったねえ。俺は反対したわけじゃないんだが……」
「反対というか、する必要がないといったようなことを伝えたと聞いていますが」
西田が敢えてフォローした。
「そうそう。する必要がないとは確かに言ったよ、会長さんから話を聞いた時にね」
田中はやれやれという感じを隠さずに返した。
「田中さん、正直に言いますが、我々は今回の殺人事件の犯人もしくは関係者は、遺骨収集及び調査を出来れば止めさせたかったと睨んでいます。それでですが、もっと具体的に言えば、田中さんは、松重さんに『常紋トンネル調査会ではない形で遺骨収集したことがあるから、やることはない』と言ったそうじゃないですか」
西田が畳み掛けた。
「そうだよ。その通り。かなり前だけど結構大掛かりに遺骨採集したことがあるんだ。これは本当の話だから仕方ない」