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修正版 辺境の墓標  作者: メガスターダム
明暗
66/223

明暗45 {48・49合併}(219~220・221~222 浜名自死 高垣コンタクト)

 一方、竹下と黒須は、鳴鳳大学からの帰りに例のカイザー書院に寄った。「週間 FREE」のバックナンバーを手に入れるためだ。西田が手にした「激変! 公共事業削減で様変わりする地方のゼネコン・土建業界」に続きの連載があると考えていたからだ。しかし、西田が手にした号の以降には、高垣の連載は載っておらず、竹下の予測は外れていた。


 仕方がないのでそのままホテルに戻り、まず捜査報告を沢井と西田にした。残念ながら大島のそれ以前の学歴を探り当てることは出来なかったことを告げたが、二人共それについてはさほど落胆しなかった。戸籍の流れが追跡出来たことが大きかったようだ。


 それを済ませると、今度は高垣の著書をじっくり読み始めた。時間も出来たので、やっつけではなく、しっかり内容を把握しておこうとしていたのだ。いつマスターから、高垣の来店電話が掛かってきても良いようにしたかった。逆に言えば、今日いきなり掛かってきても、ある意味準備不足は否めず、むしろ困るということでもあったが。


 黙って数時間著書を読み続けていた黒須が、竹下が読み終えたのを確認したか、不意に話しかけてきた。

「この人の本をちゃんと見直せば見直すほど、かなり行政や民友党の歴代の政治に批判的な人でしょ? この人が、俺は直接聞いてないですけど、係長の言うように、大島海路のお先棒を担ぐような真似しますかね? 係長がそう言ってたんでしょ? ちょっと想像出来ないです、自分からすると」

事実、本を読めば読むほど、いや読んでいるだけならと言うべきか、こういう感想を持つのは竹下も必然だと考えていた。

「ホントそう思うよ、俺も。ただ、表向きカッコ良いことを言っていても、裏じゃ金もらって記事書いてるような連中も跋扈してるのがこの世界だという話をよく聞いたことがある。何があるかは、実際に当たってみないとわからんだろ? 係長が敢えて俺達に探るように言ったのも、係長自身の時間の制約は勿論、マスターに身元を知られていないから、一般人を装って近づき情報を得るためなわけで」

「それはそうですが……」

黒須はどうにも信じられないという様子で首を振った。竹下もわかったようなことは言っていたが、真相がどうなっているのかについては、ほとんど見当が付いていなかった。結局この日はマスターから電話が掛かってくることもなく、竹下は翌日から、ゴールデン街にすぐに行ける新宿に宿を変えることにした。


※※※※※※※


 11月18日、この日はしばらくぶりの非番で遠軽の自宅で熟睡していた西田だったが、いきなり固定電話が鳴り響いた。

「何だ……、気持よく寝てたのに、くそったれが!」

大した防音設備もないアパートで、隣近所も仕事休みで寝ていたかもしれないが、思わず感情を爆発させながら受話器を取った。

「はい! 西田ですがっ!」

「西田か? 朝からやけに元気だな……。まあそれはどうでもいい! 北見の向坂から、『携帯に掛けても出ない』ということで、こっちに掛けたんだ!」

沢井の声だった。西田は上司に対しての怒りに任せた応答を悔いた。

「大変申し訳ありません……。気持ち良く寝てたもんで、ついイライラして……」

「ああ、そんなことはどうでもいい! 本題に入るぞ。捜査本部が任意で引っ張る予定だった、浜田? 浜名? とか言う男が今朝首吊り自殺したそうだ」

「……はあ? いや、それちょっと待ってください! それ冗談抜きに、それ本当まじですか!」

西田は一気目が覚めていくと同時に血の気が引くのを感じていた。一方の沢井は、現状、直接捜査に関わっていないこともあり、事情をよく飲み込めていなかったため、自殺の意味をそれほど大きく捉えていなかったようだ。


 しかし、2人の反応がどうであれ、「盗聴器」を仕掛けた可能性のあった人物の自殺は、当然捜査上良くも悪くも大きな意味を持ってくることになる。西田が「それ」を意味もなくうわ言のように繰り返して、情緒不安定な反応をしたのも仕方ないことだった。


「なんだ? やっぱり重要参考人だったのか?」

「昨日の時点では何とも言えなかったんですが、いきなり自殺となると……。かなり関わっていた可能性が高くなったと言えるんじゃないですかね……」

さすがにこの頃になると頭はきっちり回るようになりつつあった。そして、それに比例して、事件が再び急展開して来たことに緊張感を覚えた。

「なんだそう言う流れだったのか……。まあここで俺がとやかく言っても始まらないからな……。とにかく、既に吉村はこっちに来てるから、すぐお前のところに向かわせる。急いで用意して北見へ急行してくれ!」

課長の指示に、

「わかりました」

とだけ言い切って西田は電話を切ると、急いで着替えを始めた。


※※※※※※※


 北見署の捜査本部では、参考人の自殺を受けてかなり騒がしくなっていた。聴取前に自殺したと言うことは、ある意味参考人による「事件関与の自白」をも意味するわけで、すぐに調査しなくてはならない。遺書は残ってはいたが、家族に宛てた「済まない」という短い文面だったことを捜査本部も確認していた。


「やっぱり、盗聴に関わっていたんですかね?」

向坂と顔を合わせるなり、西田は聞いてみたが、

「状況からみてそうだろう。しかし、理事長室は病院側に任意で捜索させてもらえるが、自宅はまだ任意で了承得てない。家族も落ち着かないだろうし。かと言って令状とってってのもなあ……」

と向坂は参ったという顔だった。実際、明らかな殺人犯などであれば躊躇している場合ではないが、おそらく盗聴関連レベルの関与だとすると、自殺したばかりで家宅捜索というのは、遺族の心情を考えると、刑事とは言えそう簡単に出来るようなものではない。しかもその確信度合いはあくまで「状況から推察すると」と言うレベルだった。


「まさか口封じに殺されたりしてないでしょうね?」

西田の言葉に、

「それはない。俺も一報を受けて慌てて駆けつけたが、現場に怪しいところはなかった」

とキッパリ向坂は否定した。

「そうですか……。じゃあ仕方ないですね。ただ、柴田さんとも話したんですけど、盗聴していたとすれば、病室から近い範囲に盗聴犯は居たはずです。そうなると、自宅が何処か知りませんが、病院内の理事長室の方が、盗聴現場としての確率は高いでしょう。確か同じフロアーにありましたよね? ただ犯行時刻の近辺は理事長室には居なかったんでしたっけ、病院職員のアリバイ調べでは」

「その時間帯には居なかったはずだ。それはともかく、事件で警察がわんさか押し寄せたわけだから、既に理事長室にはもう盗聴器はないと俺は思う」

向坂は、病院内で今更何か見つけられる可能性は低いと見ているようだ。確かに常識的に考えれば、盗聴に使った機器は既に処分しているか、持ち出されているかだろう。

「だったら、自宅に持ち帰っている可能性の方がまだあるんじゃないか?」

「なるほど。そうなるとやっぱり早くガサ入れしたいところですね……」

結局は振り出しに戻ってしまった。


 捜査本部としては、倉野は、即ガサ入れを主張したようだが、捜査本部長である、北見方面本部刑事部長の大友は、様子を見ることに決定した。ただ、浜名の自宅は、しばらく警察が外から監視しておくことを前提として、証拠隠滅等が遺族により行われないように、最低限の保険は掛けることは怠らなかった。


 その後、自殺の日から2週間ほど家庭ゴミもチェックしたが、結局怪しいものは出てこなかった。勿論、分解してトイレにでも流されたら意味はなかったが……。


※※※※※※※


 自殺当日の昼過ぎには、浜名の周辺情報の捜査結果が続々と入ってきていた。浜名は医師であった父親が北見共立病院の創設者そのものであり、院長でもあったが、浜名自身は医師免許は持っておらず、経営者としての「理事長職」で、地域の大病院経営を継承していた。また、政治経験はないが民友党員であり、北見網走地区では言うまでもなく有力な党員だった。


 この情報に、「大島海路」の関与について疑っていた、捜査本部の中でも「テープの存在」を知っていた人間は当然2人の関係を疑った。民友党というキーワードを媒介にして、浜名が何か大島側から依頼を受けて行動していた可能性が出て来たからだ。倉野は更なる浜名の詳細な調査を指示した。同時に、そろそろ捜査本部全体として、テープの存在を明らかにしておくべきなのではと西田は思い始めていた。


※※※※※※※


 その日、上京中の竹下と黒須は、マスターから連絡もないまま、新宿駅近くの、「新宿西口ホテル」というビジネスホテルに宿を移していた。昼の時点でまだ北海道から、参考人が自殺したという情報は入れられていなかったので、高垣の著書を精読することに集中していた。さすがにかなりの情報が頭に入ってきて、高垣本人と会話しても、「読者」であることを装うには十分な状況になりつつあった。


 午後になり、やっと西田から浜名の自殺の件について連絡を受けた竹下は、いよいよ事件が急ピッチで動き始めたと確信していた。そしてその数時間後、シャルマンの斉藤マスターから、

「さっき高垣さんから、今日来るって電話があったよ。沖縄に取材しに行った帰りに直で寄るって話。沖縄産のマンゴーおみやげに持っていくから、マンゴージュース使ったカクテル考えておいてくれってね。だから今夜来れば間違いなく会えますよ」

と連絡を受けた。


「思ったよりかなり早かったですね。本も早目に読んでおいて助かりました」

黒須の言葉に黙って頷いたが、こういう「覆面調査」や「潜入調査」の類は全く経験がなかっただけに、竹下は内心かなりの緊張感に襲われていた。対して黒須は案外気楽そうで、部下という立場を少々羨ましくも思ったりしたが、今更そんなことを言っても始まらない。

「やるしかない……」

自分を鼓舞するように呟いた。いよいよ、東京の竹下も勝負どころに来たのは間違いなかった。


※※※※※※※


 午後7時、シャルマンで準備万端飲み始めた2人は、「対象」が到着するのを待った。しかし、午後8時を過ぎても現れず、「すっぽかされた」かと、約束すらしていないにもかかわらず、内心イライラし始めた午後8時半。最新刊の著書の写真で確認していた男が、やっと大きな紙袋とボストンバッグを下げて店内に入ってきた。


「マスター遅くなっちゃって悪かった! 飛行機のトラブルで出発時間が遅れちゃってさあ……」

写真で見ていた印象より、やや小柄ではあったが、風体は写真と完全に一致していた。髭を蓄え、メガネに軽いパーマをかけた髪型。プロフィールでは今年で46歳のはずだ。


「これ、例の土産! マンゴーとマンゴージュース。知り合いの反基地運動家の農家さんが作ってるんだが、かなり甘くて美味いやつだから!」

「高垣さんに言われて、ラムベースのマンゴージュース割りを考えてたところですよ」

マスターはにこやかにおみやげを受け取りながら、考えていたカクテルのレシピを告げた。


「ほう! そいつはイケそうだな。早速頼むよ! こっちのまるごと実のマンゴーは、デザートにして出してよ。他のお客さんにもサービスだ! たくさんもらってきたから!」

中年のフリージャーナリストは、狭い店内に居た竹下と黒須を含む4人の客を見渡しながらそう言うと、カウンターに向かって右の壁際の席に着いた。


 事前にマスターから、基本的に壁際の席が空いている時には、そこに座る「習性」があると聞いていた。店内に7席あるところで、左側が既に別の客で埋まっていたので、右側のその部分を竹下の席から更に1席分置いて開けておいたのだ。すぐ横にしなかったのは、その方が確実に壁際に座るだろうと思っていたからだ。やはり「圧迫感」は取り除いておく必要があった。


 また、事前にマスターには、自分が「高垣の本の読者」であることは伏せるように言っておいた。理由としては、「話しかけるペースは自分で握っておきたい」ようなことを言っておいたが、もし警察と明かす場面が後に訪れた場合、マスターからの「紹介」で話し掛けた場合には、マスターへの「微妙」な感情が高垣に湧くと、その後の関係に影響が出るかもしれないと、竹下なりに配慮した故の「通告」だったわけだ。マスターはカクテルを作って高垣に出した後、竹下達にもマンゴーを切って出した。4人は高垣に軽く会釈して礼を言ったが、高垣は、

「俺はもらってきただけだからさ」

と手を振って、「大したことじゃない」というジェスチャーで応じた。


 しばらく、高垣とマスターの会話を、黒須と喋りながらも窺っていると、どうもこの年の9月にあった、複数の米兵による沖縄の小学生の少女を誘拐暴行した事件の取材に行っていたらしい(作者注・1995年9月に実際に発生した事件。日米地位協定への関心や沖縄の反基地運動が急激に盛り上がった原因の1つ)。事件を追っていた遠軽署はそれどころではなかったものの、実際、全国ニュースレベルで大きな関心ごとになっていた。10月には、日米地位協定の運用改善(改訂ではない)が行われる要因にもなっていたわけだ。話の内容もあってか、喋りかけるタイミングは予定より少し遅らせることにした。


 30分ほど待つと、マスターとの会話も一通り済み、高垣は1人でボストンバッグから取り出した文庫本を読みながら、軽くウイスキーを煽り始めたので、竹下は切り出すチャンスと見て、1つ席を挟んだまま話し掛けた。

「すみません、お姿でも『そうじゃないか』とは思ってましたが、マスターとの会話で、高垣真一さんとお見受けしました。著作を結構拝見してるんで、お目にかかれて光栄です」

その言葉を聞くと、高垣は口元を緩め、

「ああ、そうですか! そいつは嬉しいね。万人に読まれるようなタイプの本を書いてるわけじゃないから、こんな風に声を掛けてもらえることって、あんまりないからね……。そっちの奥のお客さんも一応顔なじみではあるんだが、俺のやってることには興味がないみたいだしな」

と笑った。


「いやあ、最近のテレビなんかのご活躍もそうだけど、全部とは言わないが、高垣さんの本はかなり読ませて頂いてます。例えば『実録・談合血風録』なんてのは、なかなか生々しい内容でした。特に大手ゼネコンの須藤建設の会長が、当時の建設省の事務次官に、日本道路公団の高速新設工事の予定価格を聞き出すため、連夜の接待攻撃で攻略していく様は、えげつなかったですね。一方の事務次官側もそれを上手く利用しようとしてた」

きちんと読み込んだ上で、相手に「ちゃんとした読者」だということを印象付ける作戦を遂行する。


「ほう! あれ読んでくれたんだ。あれはね、僕が新聞社を辞めて最初に出した本なんだよ。あんまり売れなかったけどね」

高垣はそう苦笑したが、ウイスキーを飲み干すと、

「でもね、やっぱり処女作だから思い入れも深いんですよ。気合入れて書いたからねえ」

と満更でもなさそうだった。竹下の作戦は上手く相手にハマったようだ。


 しばらく著書について語り合った2人だが、竹下はボロを出すこともなく、高垣との会話をこなし続けた。そして、そろそろというタイミングで、「週間 FREE」の件について切り出した。

「先月辺り、週間FREEという雑誌に、高垣さんが記事書いてましたよね? 道東の建設業者のイザコザについて。僕らは北海道なんで特に印象に残ってますよ」

その言葉に高垣は、露骨に嫌な顔をしてみせた。

「ああ、あれね……」

「てっきり、公共事業削減関係での連載モノかと思ったら、あれ以降記事書いてないですね」

古書店で調べた情報を口にすると、高垣は思いもかけないことを言い出した。


「実は、……竹下さんだったっけ? おっしゃる通り、本当は連載モノの予定だったんだ。ところが事情が変わって、こっちから連載の停止を申し出たって話なんですよ……」

そう喋っている間にも、忌々しいという表情を隠さなかった。勿論その様子を竹下は逐一観察し、踏み込んだ。

「それにしても、連載を止めるなんて、よくあることなんですか?」

「いやいや、勿論滅多にないね……。特に依頼を受けた側から申し出るなんてのは、ライター業界じゃ、基本的に将来的な仕事も失いかねない。自分はそこそこのポジションまで来たから、そこまでやれたようなもんですよ」

竹下の方に一度視線をやった後、グラスを軽く指で撫でた。


「もし良ければ、その理由みたいのを……」

「あなたもやけにこだわるね」

高垣の鋭い指摘に、竹下としては少々露骨に踏み込み過ぎたかとは思ったが、

「そりゃ高垣さんみたいな、ジャーナリストとして徹底してるタイプの人が、記事を書くのを止めようとしたとなると、気になりますよ」

と誤魔化した。

「そう言ってもらえるのはありがたいが……。だけど、このまま続けることの方が、余程自分のポリシーに反すると思ったから仕方ない」

「ポリシー?」

「そう。週刊誌が発売された後、札幌の知人から電話が来てね。『道東でヤクザ同士の争いが活発化してるなんて聞いたことがない』と。知人って言っても、そっち方面のプロで、昔からよく情報提供してもらってる間柄でさ。その人に記事の信憑性がないって言われちゃあねえ……」

そっち方面のプロと言うことは、おそらく警察関係の人間だろうと、竹下は推測した。しかもマル暴の可能性が高い。札幌と言うことから見て、道警本部のマル暴かもしれないとまで考えた。


「そうだったんですか……。それは残念ですね、高垣さんの記事が見れないとなると」

「それなら近いうちに、今回の沖縄の件を絡めて、沖縄と米軍基地の本を出す予定だから、それでも見て下さいよ」

高垣は、如何にも反権力タイプのジャーナリストらしい発言をすると、タバコに火を付けた。しかし、竹下としてはもう少しこの件について情報を得ておく必要があるわけで、話を戻そうとした。

「でも、高垣さんのきっちり突っ込んでいく取材スタイルから考えて、そんなガセ情報を掴まされるってこと自体あり得るんですか?」

「そこまで買ってもらうと、嬉しいを通り越してちょっと恥ずかしいね」

フゥーっと煙を吐き出すと、灰を灰皿に軽くトントンと落とした。


「いやあそんなことないですよ。どの著作も大胆でありながら、緻密な取材に基いて書かれてると思いますけど」

「確かに、記事を書く時には徹底して取材し、裏を取る。これが基本中の基本。でもね、週刊誌の取材とかだと、時間に追われることもあって、少しそういう所がお座なりになってしまうのは、たまにある話でね……。良くないことだとは思ってはいたんだが……」

タバコを灰皿に強くねじこむ仕草から、そういう「やっつけ」仕事に忸怩じくじたる思いがあることは竹下にも伝わった。


「つまり、あの記事の取材はあまりちゃんとした裏付けがなかったと?」

「恥ずかしながらそういうことだね。まあ竹下さんに言っても仕方ないけど、週間FREEってのは、あんまり感心するような内容を載せてる週刊誌じゃない。いや、まあ週刊誌自体がそんなもんなのは百も承知だけどさ」

苦笑する高垣だったが、すぐに真顔に戻り、

「ところが、そこから今回依頼が来た。しかも記事の内容まで具体的にね。バブル崩壊の余波で、ここ数年は景気刺激目的で問題ないものの、公共事業が将来的には削減されるのは確実で、民友党の大物議員の地元でも色々問題が起きていると。それを取材してくれってね」

と発言した。竹下は重要な情報が出始めたのを確認し、ここからどう広げるか思案を瞬時に始めた。


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