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修正版 辺境の墓標  作者: メガスターダム
迷走
21/223

迷走8 (71~80 竹下へのリーク疑惑と解消)

「はい、西田ですが」

「西田ですがじゃないだろ! お前達は自分のしたことがわかってんのか!」

受話器一杯に怒号が響き、思わず耳を離した。

「今朝の道報の件ですか?」

西田はそれでも耳を受話器に戻し冷静を装った。

「決まってるだろうが! 飲酒運転で警察に逮捕されて、その後警察で倒れたことは、娘から聞いて知ってたが、実は殺人の疑いで捜査してたそうじゃないか! しかもあいつはその時海外に居たと書いてあったぞ! 無実の人間を取調べた挙句に意識不明にするとは、警察おまえらは何考えてんだ?」


 松田弁護士は事情を知っていたはずだが、細かいことを家族には言っていなかったのか、はたまた家族が田中に詳細を伝えなかったのか。いずれにしても、田中は今日まで詳しく知らなかったことは間違いないと知った。


「田中さん。報道された通り、確かに義理の息子さんの殺人の嫌疑については晴れたかもしれませんが、重要参考人であることには今も逮捕時も変わりありません。飲酒運転の容疑のまま取調べていたことは事実ですが、彼には取調べを受けて当然の証拠があったんです。しかも、殺人事件とは別の、ある人物の死亡事故の際に、その亡くなった人から携帯していたモノを盗るということもしています。我々の捜査手法に問題が無かったとまでは言いませんが、それとこれとは別問題ですから」

西田は冷静であったつもりが自然と熱弁を奮っていた。


「じゃあなんでこんな風な記事になってるんだ! おかしいべや? あんたらは俺も疑ったり、微塵も信じられん!」

「確かにあなたを疑ったこともありましたが、きちんとした証拠があれば、我々がそれ以上の追及をしなかったこともわかってるでしょう? 今回は殺人について何か知っているという確証があったからこそ、釈放せずに聴取していたんです」

田中は納得が行かないのか、否、行くはずもないだろうが、

「あいつが関与していたというのはどういうことだ?」

と問い詰めようとした。

「殺害された被害者が埋められた場所について、ある程度知っていないと出来ない行動を取っているんですよ、彼は。海外に居て殺人をしていないとしても、殺人があったことについての認識があった、そういうことです」

西田も多少落ち着きを取り戻し、抑制した口調で説明した。

「うーん、それじゃわからん……」

田中は、尚怒りを抑え切れない様子で唸っていた。


「おそらく警察は今回の件について、釈明の記者会見することになると思います。テレビのニュースでもやると思います。それを見てください。私に今言えることはそれだけです。もしかしたら、私の口からもっと詳しく言える時が来るかもしれませんが、現状捜査中の事件ですし、今はこれ以上は言えません」

きっぱりと言い切った西田に、田中は食い下がる。

「それにしても、意識不明になるまで取り調べるなんて、許されるわけがないべや!」

トーンはこれまでより落としていたが、当然ながら怒りはまだ収まっていない様だった。

「お気持ちはわかります。ただ、私が取調べていた時のことではないですし、少なくとも私はおかしな取調べはしてません、それだけは天地神明に誓って言えます」

西田は自分の正当性を前面に主張した。勿論自分は悪くないという、言い逃れの気持ちがなかったとは言わないが、少なくとも自分は刑事としておかしなことはしていないという、どちらかと言えば矜持の問題から出た発言だった。田中はしばらく黙り込んだが、

「あんたに何を言われても、正直今納得は出来ん。ただ、あんたに色々聞かれた時のことを思い出しても、それほど酷いもんじゃなかったのもわかってる……。警察を信じるつもりはこれっぽっちもないが、あんたがそこまで言うなら、警察そっちがどういう対応をとってくるか、様子を見させてもらう……」

と言うと、そのまま何も言わずにガチャっと電話を切った。怒りの気持ちに変わりはないのだろうが、多少冷静になってくれたのだろうか。最後はやや落ち着きを取り戻していた様に感じた。


 案外短い時間だったとは言え、緊張感から解放された西田は深呼吸すると電話を切ったが、しばらく受話器から手を離すことはなかった。

「おい、大丈夫か? 激しく責め立てられたか?」

課長に言われてようやく受話器から手を離した。

「相手は怒り心頭だったことは確かですが、その中じゃマシだったかと……。案外さっさと引き下がってくれましたよ……。納得したからというより、これからの警察の対応を見て態度を決めるという、あくまで『保留』を宣言しただけですが」

思い返せば、田中の剣幕は想像していたよりは大したことではなかったとも思ったが、田中にどやしつけられたことそのものよりも、捜査のやり方次第で想像もしない影響を周囲に及ぼすという、ある意味当たり前のことに改めて気付かされ、その重みを今強く実感していたというのが正確なところだった。


「そうか、それならいいが……。そりゃ相手も簡単には納得は出来ないだろうな、今回の件は」

「でしょうねえ……。自分の娘婿が巻き込まれたという形で報道されたんですから。例え義理の息子との折り合いは余り良くなかったとしても。ただこうなると、尚更このヤマは意地でも解決しないといけないですわ」

「ああ勿論だ」

西田の決意の一言に課長は簡潔に返した。その上で、

「倉野さん達も、これからしばらくは今の俺より何倍も高いプレッシャー掛かるんでしょうから気の毒ですよ」

と、西田は北見方面本部の幹部の心境を他人事の様に思い遣っていた。


※※※※※※※


 そんなバタバタした雰囲気のまま、北見方面本部や道警本部からの電話連絡やマスコミからの電話取材攻勢も続き、刑事課はそれらの対応に追われ続けた。そしてやっと一息付いた頃には、既に午後3時を回っていた。課長は昼食を交替で取ることを指示した。西田は精神的な疲労もあり、外に出るのが面倒になったので、刑事課にあったカップラーメンで済ませることにした。お湯を入れるため、給湯室に入った西田の後を、食事に出たはずの北村が追ってきた。


「あれ、外に飯食いに出たんじゃないのか?」

「そう思ったんですが、西田さんがそのまま残っていたんで止めました」

「俺に気を使った? 否、そういう風でもないな……。何かあったのか?」

西田は北村の表情から話したいことがあると察した。

「実は朝からタイミングを待っていたんですが、あんな状態でしたから、話しかけることが出来なくて……」

「そいつは悪かったな」

「いやいや、別に誰が悪いとかそういうことじゃないんで」

「それで、話って何だ?」

「まさに今朝の記事についてなんです」

「道報の?」

「はい」

立て続けの簡単なやり取りの後、西田はカップ麺の時間を確認する為に時計を一瞥したが、すぐに視線を北村に戻した。北村はそれを確認したかのように話し始めた。


「8月5日のことなんですが、当日の午後7時半過ぎでしたか……。以前、喜多川の張り込みの時にカラオケの話しましたよね?」

急に話が繋がらなくなったので、西田は困惑したが、

「そんな話をしたこともあったな」

と流れを切らさない様に答えた。すると、

「その時に西田さんに以前話した、付き合ってる彼女と北見駅前の喫茶店でだべってたんですが、ちょっと離れたシートに竹下さんが居たんですよ。で、ちょっと挨拶しようかと思ったんですが、誰かと熱心に話してるんで遠慮したんです……」

と北村は続けた。「そういうことか」と、西田は北村が竹下についての話をしたかったのかと理解した。


「8月5日って言ったら、竹下は方面本部ではなく、遠軽署に居たはずだから、その後北見に行ったのかな? 俺が名寄の拘置所で聴取して戻って来……。今思い出した! 俺が戻った時には、竹下は既に半休取って署には残って居なかったんだっけ。署長に確認したのを憶えてる」

「そうなんですか。じゃあその後に北見に来たんでしょう。それで話を戻しますが、その竹下さんと話してた人物、どうもどこかで見たことがあるような気がして、その日のデートから帰宅した後も思い出そうとしてたんです。で、翌日ようやく思い出しました」

「で、誰だったんだ?」

「自分は北見に来る前は、釧路東署に勤務してたんですけど、その時に釧路の警察記者クラブに出入りしてた五十嵐ってブン屋だったんです」

ここまで言われると西田は北村の言いたいことがピンと来たが、にわかには信じたくないことだったので、確認せずにはいられなかった。

「ちょっと待て! おまえまさか今朝の記事、竹下のタレコミだって言うんじゃないだろうな?」

「ええ、そうじゃないかと……」


 確かに竹下は捜査本部が立ち上がってから、何度か捜査方針に楯突いたことがあり、しかも今回は、竹下が文句を言ってた別件逮捕絡みでの批判記事と来れば、そういう結論を導き出せないこともなかった。

「しかし、今回は松田弁護士も大体の経緯を把握してるだろ? そっちからのリークの方が筋が通るんじゃないか?」

「勿論その線が濃厚だとは思います。ただ、そうだとしても、裏取りに竹下さんが協力したという可能性がないとは……。今日は竹下さんは休みですから、自分が確認しようにも出来なかった。否、仮に居たとしても直接確認する勇気があったかどうかは疑問ですが……」


 北村の心中は推察するより他ないが、今朝記事を見てから北見を発ち、遠軽に来て、今西田に打ち明けるまで、相当モヤモヤした感情を抱えていたのは間違いないだろう。

「この話は他の誰かに話したのか?」

「いえ、道報の記者と気付いてから今日まで、西田さん以外には誰も言ってません。沢井課長にも勿論言ってませんし、北見(方面本部)にも報告はしてません」

「そうか……。それは助かる。俺は竹下がこういうやり方をする人間だとは思わないが、状況証拠的に全く問題がないということを断定するのは早計なのも確かだ。わかった。俺が明日竹下に直接確認する。結果がわかるまでこの件は内密に頼む。頼むぞ……」

西田は年下の相棒にあたかも祈る様に要望した。

「あれ? 西田さんと俺は明日休みじゃないですか?」

しかし、そんな西田と対照的に、素に返ったかの如くあっさりと北村が確認してきた。

「そりゃその通りだが、こうなったら俺は休みとか言ってられんからな」

「それじゃあ申し訳ないですよ。俺も出ます」

職場の先輩が休み返上となれば、さすがに後輩がそのまま休むと言える度胸のある人間はそうそう居ないだろう。

「気にせずおまえは休め。俺は竹下の直属の上司でもあるから」

「でも札幌に帰るつもりだったんでしょ?」 

「帰るつもりではあったが、帰ると約束はまだしてないから大丈夫だ。おまえこそ、どうせデートでもする予定があんだろ?」

西田は正直帰るか帰らないか確信を持って結論を出せていなかったので、家族にはそのことで連絡していなかった。そのことが今回の決断を容易にさせたとも言えた。

「ええ、まあ……。わかりました。本当に申し訳ないですが、じゃあよろしくお願いします。勝手言って自分だけ休むなんて申し訳ないんですけど、何とか胸のつかえも下りて、正直小腹も空いたんで飯食って来ます」

北村は「申し訳ない」を繰り返しつつ、食欲には勝てない様で、一礼すると給湯室をそそくさと出て行った。


 一方の西田は、ああは言ってみたものの、竹下のことが急に気になりだしていた。竹下の正義感が警察組織への裏切りをも辞さないという覚悟に変わる恐れを急激に実感しはじめたからだ。向坂さんの、「あいつは警察を辞めるんじゃないか?」という一言も、妙に信憑性を与えていた。悪い方に考えると、ドンドンそっちへ向かうことに、西田は1人首を振って打ち消そうとしたが、脳裏から消え去ることはなかった。ふと時計を見ると、4分程度湯を入れてから経っていたことに気が付いた西田は、慌てて割り箸を棚から取ると、カップラーメンを持って刑事課室へと急いだ。


※※※※※※※


 めまぐるしい一日を終え、西田は自分のアパートに午後9時過ぎに戻った。自室の座椅子に背広のまま腰掛けると、そのままへたり込んでしまった。あの北村の「告白」の後も、今度は全国紙からの電話取材などの対応も重なって、完全に一息付けるということはなかったこともあり、疲れが溜まっていたのが今になってドッと出たのだ。


※※※※※※※


 今日の午後6時過ぎには、北見方面本部による記者会見が行われ、ローカルニュースでは生中継する程の扱いになった。西田達もそれを署のテレビで見ていた。連続女性殺人とも重なり、かなり怒号の飛び交う記者会見となったが、道警本部の刑事部長・遠山と園山北見方面本部長、光澤道警本部広報官、今回の捜査本部長である北見方面本部刑事部長・大友の4人が質疑応答をしていた。各自とも緊張感が、テレビを見ていた遠軽メンバーから見ても感じ取られ、額を伝う汗はおそらく暑さが理由ではなく、精神的なものが理由だろうと西田は思っていた。


 くだんの幹部達は、別件逮捕扱いされた事例が通常でも逮捕事案であり、またその後の捜査の必要性を主張した。しかし、飲酒人身事故のまま、殺人事件についての取調べをしていたことや、被疑者である喜多川の体調について、違法とまでは言えないにせよ、注意を払っていなかったこと、加えて聴取の際に圧力を掛けるような言動や行動があったことを指摘されると、余り上手く対処出来ているという風には、身内である西田の目からも見えなかった。そうである以上は、当然テレビの前の一般人に対しても余り良い印象を与えなかったかもしれない。否、そもそもが、それらの点については事実であり、言い訳のしようがないという方が正確だったかもしれない。


※※※※※※※


 そんなことを暫くボーッと振り返りながら、西田はなんとか立ち上がる気力を回復すると、冷蔵庫を開け缶ビールを手にとった。本来であれば、このまま網走発の夜行特急オホーツクで札幌に戻るつもりだったが、それもやはりオジャンとなっていた。仕事中に課長に休み返上で明日出ることを告げると、目を丸くして驚くと共に、部下思いの課長らしく、その「意図」の叱責染みた再確認をされたが、当然西田の結論が変わることはなかった。詳細な理由を課長に言う訳にもいかなかったので、北見方面本部に預けたツルハシの報告を受ける関係と、新聞報道の件でのゴタゴタの処理への対応の必要性を口にして誤魔化したが、課長はいまいち納得出来ていない様子だった。しばらくぶりの札幌の自宅への帰宅の選択肢を、課長には事前に話していただけに、それを止めるほどの理由には聞こえなかったのだろうし、課長としても、そんなことよりは西田の家族関係を重視すべきと考えていてくれたのだろう。西田自身も上手い言い訳だとは思っていなかった。


 ただ、こう疲れ切った状態で戻ったところで、まともに家族サービスする余力は実際ないだろう。結果として、事前に家族に連絡していなかったこと含め、「期待」を裏切らなくて済むこととなったのが、不幸中の幸いだったと西田は思い込むことにして、缶ビールを開けた。そして、背広のまま缶ビール片手にテレビのドラマをじっと見ていた西田が、3本目のビールを取りに冷蔵庫の前に立った時、突然電話が音を立てた。ドラマのセリフを耳をそばだてて聞いていた西田にとって、それは青天の霹靂であり、且つ不快な音色に聞こえた。


「はい西田です」

多少不機嫌になり、ぶっきらぼうに電話に出た。

「もしもし、竹下ですが」

電話がまさに竹下からだったことに若干戸惑う。

「おう、何か用か?」

精一杯何も知らない振りをした。

「札幌からついさっき戻ってきまして、今自宅からなんですが……。課長か係長にすぐにでもちょっと話したいことがあったんで、署に電話したら、夜勤の吉村が『課長も係長もさっきまで居たが、既に帰宅した』とのことだったんで……。課長は明日の勤務時間でもいいかと思ったんですが、係長は明日休みですから」

竹下は今日の休みを利用して札幌まで行っていたらしい。さっき戻って来たということは、おそらく特急オホーツク7号で午後9時前に遠軽に着いたのだろうと西田は思った。西田も札幌から戻ってくる時に2回使ったことがあった。竹下はまだ独身なので、遠軽駅に近い場所にあるマンションの一室を借りていたから、降りてすぐに自宅に戻れたはずだ。西田は明日の休み返上のことについては、何となく喋らなかった。

「札幌行ってたのか? 買い物でもあったか?」

余り意味のない質問を、竹下の様子を探る為に入れた。

「いえ、本当なら今日は一日ゆっくりするはずだったんですが、朝急に思い立ちまして」

「そうか……。で、札幌から戻ってきて、すぐにでも話したいことってのは?」

「どうせなら、これからそちらに直接伺っても構いませんか?」

「別に俺は構わないが、今日中に始末したい話なのか?」

「はい。出来ればその方がいいと思います」


 かなりはっきりとそう言ったので、やはり軽い話題ではないと感じた。おそらくそれなりに重要な案件だろう。今朝の記事のこともあり、それについての可能性も十分あると感じていた。会う際には西田はそれなりに腹を決める必要があると考えた。本来なら明日確認する予定だった道報の件を、今日の時点で確認出来るということは悪いことではないが、「直感」が当たっているとすれば、決して前倒ししたい気分でもなかった。ただ、そんなことを悠長に言っていられるわけもなく、竹下の訪問をすんなり受け入れることにした。


「わかった。丁度俺も竹下と話したいことがあったし、待ってるぞ」

「そうですか? じゃあすぐ行きますんで。車出すほど遠くもないですから、歩きで15分ぐらいで着くと思います。じゃあまた後で」


 会話が終わった後、西田はようやく着替えをすることにした。竹下の訪問がなければ、風呂に入るまで背広のままだったかもしれない。5分も掛からず着替え終わると、テーブルに竹下の分の缶ビールとつまみのピーナッツを置き、「決戦」の時を待った。


 竹下は予定より5分ほど遅れて到着した。格好はネクタイこそしていなかったが、ジャケットにスラックスという出で立ちだった。おそらく札幌から戻って来たままの姿だったのだろうが、明らかに「遊興」に出かけたというノリではなかった。また、右手にはカバン左手には缶ビールとつまみが入ったコンビニのビニール袋を下げていたので、おそらく買い物に寄っていた分遅くなったのだろう。

「係長の飲んでるビール、これで良かったですよね?」

「ああ、それだ。スマンな」

こういうところも抜かりがないのが竹下だ。西田は席に座るように促し、2人はテーブルを挟んで向かい合った。


「さすがに夏休みなんで、指定席が今日取れるはずもなく、自由席は行きも帰りも混んでました。特に行きは札幌まで立ち通しで、疲労困憊ですよ。幸い帰りは座れましたけど」

缶ビールを開けながら、竹下は軽目の愚痴を言った。

「まあこの時期だから仕方ないな。しかも朝から札幌行きとなると、始発の網走や北見の時点で、自由席は一杯一杯だろ」

西田も話に合わせるが、いつ「告白」を切り出してくるかと内心身構えていた。だが、竹下は自分が買ってきたつまみの「鮭トバ」にかじりつき、缶ビールをグイグイ飲みながら、西田にもそれを勧めるばかりで、肝心の「話したいこと」に言及する様子がなかなか見えなかった。業を煮やし、自分から話題を振った。


「で、話ってのは何なんだ?」

缶を傾けていた腕が下がり、竹下は静かにそれを置くと、いきなり胸ポケットから一枚の名刺とカバンから今朝の道報を取り出して、それぞれを西田の前に置いた。

「係長も今朝の記事、当然見ましたよね?」

いよいよかと西田は、険しい顔付きをして、

「当然だ」

と一言返した。

「まあそうですよね……。実はですね、先日、確か係長が名寄に出張していた日でしたか、自分の大学時代の先輩というかOB、あ、当時マスコミ研究会というところに自分は所属していたんですが、そこのOBが、今は道報のサツ回りと事件担当の社会部遊軍記者をやってるんです。で、その人が『今、取材で北見に居るんだが、お前の所轄ところで起こった殺しの件で、どうしても直接会って確認したいことがある』という連絡をくれたんですよ」


 そう言うと、竹下は名刺を更に西田の方に突き出した。そこには「北海道新報 社会部記者 五十嵐 みつる」と記されていた。北村が北見で竹下と共に目撃した、例の記者で間違いないだろう。それにしても竹下がマスコミ研究会に参加していたとは初耳だった。剣道部に居たことは知っていたが。

「それで午後を休みにしてもらって、北見で会っていたんです。まあ電話でも済ませられると思ったんですが、記者ですから、相手の表情なんかの反応を見ることも1つの手段ですからね。そういう意味ではむしろ会わない方がいいかとも思ったんですが、マスコミがどういうことを追っているのか、逆に知る機会でもあると、敢えて『虎穴』に入ってみました。で、会ってみると、やはり『とある筋から、おまえの居る遠軽署も関係してる殺人事件の捜査で、大きな不手際があったという話が舞い込んでるが、どうなんだ?』と聞かれたんです。こちらも喜多川の件はすんなり認めることは出来ませんから、『よくわからない』とお茶を濁していたんですが、先輩の様子がちょっとおかしかった」

「おかしかった?」

西田は問い詰めるというよりは、聞き出そうという意識が強くなっていた。西田は案の定な展開に、正直余り結論を聞きたくなかったが、取り敢えず最後まで聞いてから意見を言うつもりだったので、話の腰を折らないようにしていたのだ。

「ええ、おかしかった。先輩はブン屋にありがちな、『権力は常に監視すべし』というタイプの人ですから、当然警察批判の方向で、色々追及してくるんじゃないかと、こっちも身構えていたんですよ。ところがむしろ心配してくれたというか……」

「心配してくれたと言うのはどういうことだ?」

「そこなんですよ。道報の情報は基本的には松田弁護士からタレ込まれた……、ああ勿論先輩は、その部分はソース元の秘匿として言えないし、言いませんでしたから、あくまでこっちの推測ですが、そのタレ込まれたことを記事にすることに「圧力」が掛かっているというニュアンスの話をしたんです」

「圧力ってことは警察側こっちからの圧力か?」

「いや、そうじゃないです。全くの逆です。どうも記事にすること自体を強要されたみたいな話でしたね。先輩もその時ははっきりは言いませんでしたけど」


 西田は少々面食らった。圧力と来れば、記事にしないようにする圧力が一般的だが、記事にするように要請する圧力ということもあり得るのだと。

「先輩としては徹底した反骨精神の人ですから、警察の不祥事も腹立たしいが、その記事について『書くように強制してくる』こともそれ以上に腹立たしいらしく、どうしてそういうことが起きているのか、その要因を何か自分が知っているのではないかということで、直接聞きたかったようなんですよ。まあ今となっては全体構造がハッキリするんですが、その時はそこまではっきりと自分は掴んではいなかったんですけど……。正直、喜多川の件の『裏取り』はどうでも良くて、警察内部に何か権力闘争があって、その影響がその圧力ではないかと探ってきた感じですね。繰り返しになりますが、今になって見るとよくわかるという話なんですが……」

そこまで言うと、竹下は再びビールで口を潤してから話を続ける。


「おそらくですが、北見に取材というのは今回の喜多川の意識不明の件で来ていて、その取材、まあ松田弁護士への取材なんでしょうが、それについては、自分に会う前にほぼ済んでいたが、警察叩きの方向への圧力が掛かった理由についてはトンとわからず、自分にその理由を聞く為にお鉢が回って来た、そういうことじゃないかと今になっては思います。タレコミが担当の松田弁護士によるものだとすれば、既に「ソースの信頼性」はそれなりに高いでしょうし、直接事件を捜査していない『周辺』の警察関係者でも、純粋に喜多川の件だけなら、ある程度は騒ぎになったから知ってるはずです。つまり、裏取りだけならそちらから情報は得られますし、わざわざ呼び出して自分に聞く必要はないはずです」

「それで最終的にどうなったんだ?」

話の展開が思わぬ方向に行ったこともあり、西田は今度は純粋に興味本位で続きを促した。


「その時はこちらも事情はよくわからないし、先輩も探り探りに聞いてくる感じでしたので、まあそのままただの世間話に移行してお開きという形です。で、今日の一面ですよ。それで、中身については、実際に当たっている部分もあるが、かなり恣意的に警察批判に持って行こうとしている部分もありましたから、これは休みを利用して、直接先輩に会って抗議してやろうと思いまして、朝一で札幌に向かった訳です。同時に、一体記事を書かせた圧力が何か、ここまで来たら聞き出してやろうとね」

西田は、警察の方針に「真っ向勝負で捜査しろ」と文句を言った竹下が、警察の側に付いていることに、多少驚いていたが竹下は構わず話を続ける。


「札幌に着いた後、先輩に直接電話を掛けて、何とかアポがとれました。でもよく考えたら、頭に来たから行動が先になってしまいましたが、札幌に行ったところで、相手が会いたくなければ、会える保証なんてそもそもなかったんですよね……。それに気付いた時に、初めて自分の無鉄砲さに嫌気がさしましたよ」

竹下は苦笑いしていたが、西田は竹下の話には興味を示さず、

「それでどういう話になったんだ」

と先を急がせた。


「会うなり、『政治部の横暴だ』と先輩の方が怒りだしたのでびっくりです。先輩も怒っていたからこそ、抗議しに来た俺に会う気にもなったんでしょう。社会部としては、圧力で記事にするにせよ、どうも喜多川周辺と警察周辺をもっと調べてから記事にしたかったようなんですが、政治部からの再圧力で、こういう形でいきなり記事になったらしいです。実際問題、事実関係自体誤認させるような内容でしたから、ちゃんとした調査報道ならばありえないですよね?」

竹下は憤慨しながら西田に同意を求めた。

「政治部の圧力ってのはどういうことなんだ? 記事は社会部の担当内容だろ?」

西田はそれには直接応えず、自分の聞きたいことを優先した。

「社会部では圧力で記事として出すことに、あの段階では迷いがあったが、政治部が社会部に再び圧力を掛けて渋々出させた。しかも、内容も政治部の恣意的な影響を受けたと言うことなんでしょう。念入りな調査報道には時間や裏取りが足りないが、速報性のニュースであるとしても、記事になるには遅過ぎる。ああいう記事が今頃出たのには、そういう背景があったのではないかと」


 西田は政治部が社会部の記事に口出しするようなことがあり得るのかと疑問に思った。ひょっとしたら、竹下が自分の関与を誤魔化すために、作り話をしている恐れも考慮したからだ。

「政治部から圧力が掛かったという証拠はあるのか?」

「この記事を見てください」

竹下は一面記事の文末を指した。

「一面記事の場合、文末に担当部署もしくは担当記者名を出すのが、道報のルールだそうです。この記事にはその署名がない」

言われてみれば、確かにスクープ記事にも関わらず、署名は一切なかった。掲載裁量権を奪われた社会部の静かな抗議なのだろう。

「なるほど。確かにおかしいな。ただ、政治部が社会部に介入した理由が俺にはわからん……」

西田はやっと鮭トバに手を付けると、一噛み一噛み味わいながらも納得は全くしていなかった。


「そこは先輩もはっきりとは言わなかったですね。政治部がどういう理由で記事を強要したかは、社会部のデスクも明確には説明しなかったらしいです。ただ、あくまで『噂』という前提でしたが、ある政治家の名前を先輩は出しました」

竹下はそう言うと、缶ビールを飲み干し続ける。

「大島海路からの依頼という話が、政治部の知り合いから聞こえてきたそうです」


 大島海路と言えば、8年前の佐田の失踪事件で、当時の捜査本部に圧力を掛けてきた張本人と言われていた。その大島の名前がまた出て来たということになる。

「本当なんだろうな?」

「さすがに先輩も断定するようなことはなかったですが、大島ぐらいの影響力なら、それなりに説明は付きます」

「話が本当だとすれば、8年前は先代の伊坂組社長への嫌疑、今回は伊坂組役員の嫌疑について警察に圧力を掛けてきた、そういうことになるな。あくまで話が本当ならばだが……」

竹下は西田の話に頷くと、

「両方共、伊坂組という大島にとっては『金づる』の支援企業の警察沙汰を、最初は道警本部に、そして今回はおそらく松田弁護士と共に新聞社を使うというやり方で、妨害しようとしているということになりますか……」

と語った。

「それにしても、喜多川は既に意識不明で、回復する見込みもないところに、たかが一役員の為だけにここまでやる意味はあったのかな」

「そこは自分も考えさせられましたが、意識不明だとしても、我々はその後も動いてましたし、ダメ押しの意味もあったということでは?」

そう言うと、竹下は名刺を自分のポケットに仕舞った。

「そもそもが、喜多川と篠田がそもそも佐田の失踪に関わっているという、俺達の推理が合っているとすれば、その捜査妨害のダメ押しは尚更重要になってくるはずだ」

「そうですね。結局そこに繋がって来ますか……」

竹下も同意した。


 西田の竹下への「疑惑」は、竹下自身が自分で説明しに来るという予期せぬ展開により解消することになり、西田は顔にこそ出さなかったが、内心はかなり安堵していた。ビールを飲み終え、次の缶に口をつけはじめた時、さっきの話を思い出した。

「そう言えば、竹下は大学時代剣道部だったのは聞いてたが、マスコミ研究会なんて、マスコミ志望だったのか?」

「恥ずかしながら。ただ全部落ちましてね……。で、全く逆方向の警察に、剣道部のコネもあって行くことになってしまいまして」

勿論コネと言っても、試験に合格しないことには話にならないのだから、そこに不正はないが、マスコミ志望の学生が警察に就職するなどというのは、まず聞かない話だ。

「だからどっちかというと、警察の古いやり方が嫌いなんだな、お前は」

西田は竹下の価値観の理由がわかった。

「バレちゃいましたね……。そういうのは微妙にあるかもしれないですね。まあ向いてないんですかね、根っから」

竹下はおどけてみせた。

「向いてないっちゃあ向いてないが、頭の良い奴が刑事やるのは、警察にとっても良いことだ。どっちかというと、体育会系の脳筋馬鹿が多い職場なのは事実だから」

そう言いながらも思い当たる節が幾つも頭に浮かんでいた。


「実はですかね、さっきの五十嵐先輩から、昨年辺りに転職勧められたんですよ」

「え、転職だって!?」

向坂が言っていた、「竹下は警察を辞めるんじゃないか?」という話を思い出し、さすがに表情からは動揺を隠せなかった。

「そうなんですよ。道報が社会人から記者を募集してまして、『お前がその気なら、俺も推薦するぞ』と言ってくれまして。刑事出身なんてのは、サツ回りなんかでも絶対重宝されると太鼓判でして」

「それでどう思ったんだよ?」

焦りがあったのか、少し早口になっていた。

「正直、ちょっと心が揺れましたよ。いや、今でも揺れてますね……。マスコミに入れなかったから、警察を中から変えてやろうなんて大それたことを考えたこともありましたが、土台無茶な話ですから……。今回も痛感させられました。やはり限界なのかなって。このまま警察官で一生終えるとなると、考えちゃいますよね」

竹下は心底迷っている心境を曝け出していた。彼との付き合いはまだ数ヶ月程度だが、初めて見る姿でもあった。

「うーん……」

対する西田は、まともに二の句を継げなかった。優秀な部下を失うのは痛いが、一度の人生を充実させるのは本人の意志次第だ。


「あ、勿論今すぐ辞めるとかそういう次元じゃないんで。心配かけてスミマセン」

竹下は頭に手を置いて軽く会釈した。

「それならいいんだがな……。せめて俺が遠軽に居る間は辞めないでくれよ」

そう言うと西田は自分の用意していたつまみのピーナッツを竹下に勧めた。竹下は幾つかそれを頬張った後、思い出したかの様に

「ところで、係長は明日休みですけど、札幌戻らないんですか? まあさっき電話した限り、遠軽署も記事の件で結構大変だったそうですから、間に合わなかったんでしょうけど。最悪夜行のオホーツクという手もあったと思いますが?」

と竹下が聞いてきた。

「俺もそのつもりだったんだが、こっちも大騒ぎになって疲れ果ててな……。夜行で帰って、またとんぼ返りってのはちょっと考えられなかった。帰ったところで寝に戻るようなもんだ。という訳で、明日も勤務だ」

「休みどころか勤務するんですか? そいつは間が悪かったですね」

「課長に今日帰る前に言っちゃったからなあ……。こういうのは刑事業にはつきものだ」

「でも今回は刑事業ってより、ただの雑務でしょ。捜査で帰れないとかならともかく、捜査に余裕が出来たのに、別の理由で帰れないってのは、こりゃあ運が悪いだけでしょ?」

少々酔いが回ってきたか、竹下の口調がいつもと違ってきた。

「まあな」

西田は適当に相槌を打った。


 その後もしばらく捜査の話から世間話まで適当に話していると、竹下は腕時計を確認した。

「あら、もう10時半か……。明日はお互いに仕事ありますから、そろそろ帰った方がいいですね」

残っていたビールを飲み干すと、飲み終えた缶ビールをコンビニのビニール袋にまとめる。

「新聞は確か取ってないんでしたっけ? じゃあこれ置いてきますから。鮭トバも食っちゃってください」

「そいつはスマンな。じゃあありがたく」

西田はビニール袋を流し台の下に仕舞うと、カバンを持って玄関にそそくさと向かった竹下の後を見送りに付いていった。


 竹下が靴を履いていた時に、

「あれ? そう言えば、係長も俺に話があるとか言ってませんでしたっけ?」

と思い出したかの様に、振り返って喋り掛けて来た。

西田は一瞬マズイと思ったが、

「いや、まあそれはもういいよ」

と適当にあしらった。

「え、いいんですか? 係長が良いならこっちはいいですけど……」

怪訝な表情になった竹下だが、そのままドアノブに手を掛けた。だが、向こうを向いたまま、

「ああ、そうか。解決したんですね、さっきの話で……」

ボソッと呟いた竹下に、西田は背筋に寒いものを感じた。

「もしかして気付かれたのか?」

と考えたが、今更確認するのも気が引けた。ただ、竹下ならさっきの返答で西田の考えていたことを察知しても不思議はないし、おそらくバレたなと覚悟を決めた。しかし、竹下はそれ以上の「追及」はせず、再び西田の方を向いて話題を変えてきた。

「さっきの話、明日勤務するなら係長から課長に報告しといてもらえますか?」

「おまえが直接した方がいいんじゃないのか?」

「否、今係長に説明しただけでも十分面倒だったんで、係長から課長にお願いします」

竹下はそう言うと軽く会釈した。

「俺はまあ構わんが……」

「それじゃ、決まりですね。そういうことでお願いします。お疲れ様でした。おやすみなさい」

「じゃあまた明日」

何もない風を装ったまま、西田はアパートの階段を降りていく竹下を玄関から出て見送った。


※※※※※※※


 翌12日、西田が出勤すると昨日同様、課長の方が先に出勤していた。珍しいこともあるなと思ったのも束の間、

「満島と北村、今日から端野の殺しの方に駆り出されると連絡があったぞ。いよいよ『北見』も尻に火が着いたらしい」

と沢井が「おはよう」の一声より先に声を掛けてきた。

「えええ? そいつはまた随分急ですね。今朝連絡があったんですか?」

西田は呆気にとられた。あり得ない話でもなかったが、前振りなしはいくらなんでも失礼じゃないかと思ったからだ。

「こっちにもファックスが来てたみたいだし、俺の携帯にも連絡が入った。大友さん直々だったから、やっぱり昨日の記事の件で、なんとしても早期解決が必要になったんじゃないか?」


 大友北見方面本部刑事部長から直接電話があったとなると、それなりにあちらも筋は通したのだろうと思い直したが、ただでさえ足りない人員から2人消えるとなると、影響がないと言えるほどの余裕はなかった。

「2人いきなり消えるとなると、さすがに問題無いですかね?」

課長に確認するというよりは訴える様な言い方になった。

「無いとは言えないが、現状ならなんとかなるだろ。刑事課の他の係や他課より応援してもらう手もある。足りないと思うのか?」

沢井に逆に問い返された西田は、

「いや、まあ課長がそういうのなら……」

と返すのが精一杯だった。上司がそういうのなら反論しても無意味だろう。カバンを自分の机に置き、周囲を軽く見回すと、強行犯係は全員既に出勤していた。昨日のこともあって、西田は念の為竹下に近づくと、

「俺からで本当にいいのか?」

と小声で確認した。それに竹下は小さく頷いた。それを受けて西田は沢井に、

「すいません、ちょっと話があるんですが、ここじゃなんですので隣の会議室で……」

とヒソヒソと提案した。課長はその理由がわからなかったのか、納得はしていない顔つきだったが、特に拒否することもなく、西田と共に会議室に向かった。


「なんだわざわざ? さっきの人員の件の蒸し返しか?」

会議室に入るなり、課長は西田に問いただした。

「いえ、それはどうでも良くて、昨日の道報の記事の件でちょっと……」

いきなりの展開に課長は、

「あの記事で何かあったのか?」

と予想していた以上に妙に食いついてきた。西田は戸惑ったが、

「あの記事について、竹下が道報の知り合いに問い合わせたそうなんですが……」

と切り出した。

「竹下!?」

課長は西田が想定していた以上に、やけに反応した。

「ええ、竹下の大学時代の先輩が道報に居るんで、色々記事が出た経緯について、昨日の休みを使って確認してくれたらしいんですが」

「どういうことだ、もっとちゃんと説明しろ!」


 西田は課長の剣幕にたじろぎながらも、昨日の北村と竹下から聞いた話を順にかなり詳しく話した。課長もそこまで聞くと、状況をしっかり把握出来たらしい。

「それにしても、どうして昨日の北村からの情報が入った時点で俺に言わなかった?」

状況を完全に把握するのが上司の仕事だとすれば、沢井が怒るのも理解出来た。

「すみません。まだ確信が持てなかったものでつい……」

西田は平謝りした。


「情報が正しいか正しくないかは問題じゃないんだ! 知っているかどうかが問題なんだ!」

沢井はそうは言ったが、すぐに首を振ると、

「否、それは今だから言えることかもしれん……」

と呟いたが、間を置かずに続ける。

「今更隠しても仕方ないから言うが、正直俺は記事が出た直後、ひょっとしたらというレベルだったが、竹下に疑念を抱いたんだ、実はな……。ここ最近の竹下の言動と、捜査本部の対応を考えるとな。勿論捜査本部首脳に悪意はなかったはずだが」

突然の告白に西田は面食らった。それに構わず沢井は語る。

「だから、西田が俺に話をしたところで、我慢出来ずに直接竹下に電話して問い質しただろう。もしそれやったら、結果として上司としての俺への竹下の信頼感はかなり壊れたに違いない。そう考えれば、西田が俺に黙っていたことは、結局俺にとっても良かったのかもしれん……」


 言われてみれば、記事が出た後の課長はやけに落ち着きがなくイライラしていたように見えた。課長は肝が座っているという程図太いタイプでもないが、主に北見方面本部が叩かれた記事に対して、あそこまで露骨に態度に出る程気の小さいタイプでもない。直属の部下がリークに関わっているという「恐れ」があったからこその、ああいう態度だったのだろう。


「自分も北村から話を聞いた後には、正直竹下の奴がリークしたのかと思って内心ヒヤヒヤしてたんですが、杞憂に終わって助かりました」

「西田が休日返上にしたのはそれが理由か……。とんだ思い違いだったな。それだったら今日も休みにして良かったんだぞ」

課長は先程までとは違って多少朗らかな笑顔になっていた。

「いや、昨日『出る』と言っちゃいましたからもういいですよ。ただ、竹下に結局見透かされたのはなんともバツが悪いですよ」

西田が少し顔を歪めると、

「余り気にするな。俺もそうだったんだからさ。それに、竹下が自分の口で直接俺に報告しなかったのは、もしかしたら俺も竹下を疑っていると思ったのかもしれんぞ」

と言い出した。


「さすがに昨日竹下はここに居なかったんですから、課長の様子を見ていた訳でもなく、それはないと思いますが? 昨日の夜、最初に電話掛けてきた時、自分か課長のどっちかに報告するつもりだったが、自分が本来今日休みだったので、自分にまず報告することにしたと言ってましたし。大体課長が疑っていたところで、俺に代理報告させる意味がわかりませんよ」

「そうかな? 勿論、本来は俺に直接報告せざるを得なかったんだから、気まずい覚悟はしていたかもしれないが、西田に代弁してもらえるなら、その方が良いと思っても全く不思議はないだろ? あいつは勘が鋭いところがあるから。自分で報告するとなると、一々疑いの目を向けた俺の質問に答えなくちゃならんだろ? 面倒に思ったんじゃないか? 西田に丸投げしとけば、それからは解放される」

「そんなもんですかね……。でも自分もまた竹下に疑いの目を向けていたんですから、それは理由にならないと思いますが……。いずれにしても、そうだとしたら自分は竹下に嵌められたってことになりますよ、面倒なことを押し付けられた訳で」

西田は思わず苦笑していた。


「まあ疑われてる奴本人が感じる面倒と、第三者が感じるそれは違うから、そうだとしても許してやれよ」

「ええ。俺もあいつを疑ってた訳ですから、罪滅ぼしということでチャラにします」

「それでいい。とにかくウチからのリークじゃなくて良かった。そして裏の大島の暗躍もわかったことだし」

この時ばかりは、課長の眼光は鋭くなった。

「大島が今回も出てきたとなると、米田の件も2代目伊坂の社長は少なくとも知っていたんですかねえ……」

「なんとも言えないところだな。万が一知っていたとすれば、米田の件で警察こっちに調べ回られることが、先代の問題とは言え、佐田の件に波及するのを恐れたのかもしれない。竹下の言う通り、米田の事件が佐田の件と何か関わっていたとすれば、先代の伊坂社長は確実に知っていたと言えるんじゃないか? 二代目がどうかは別にして」

「これからそっちも調べていかないと。今の状態じゃよくわからないままです」

「まずは明後日の捜索のことだけ考えよう。あっちもこっちも手を出していける状況じゃない」

そう諌めた沢井に、一言言おうとした西田の携帯が突然鳴った。

「こっちの話はいいから出ていいぞ」

課長から許可を貰ったので、西田がすぐに出ると北村からだった。


「西田さんすいません。こっちから昨晩遅くに『招集』掛かりまして……」

「いや、こっちは構わないが、おまえも本当なら今日休みだったのに大変だな」

西田は気遣った。

「それは全然構わないんですけど、そっちの捜査が中途半端なまま投げ出す形になって、本当申し訳ないです。やっぱり記事の件もあって、汚名返上のためにはこうでもしないとならないみたいで……」

北村が平謝りだったことに、西田は気の毒にすらなった。

「こっちは全然気にしてないから、おまえはそっちの事件を早く解決出来るように頑張ってくれ」

「勿論です。そちらの方も頑張ってください」

「ああ、やれることはやる。おそらくまた北村の力が必要になるだろうけど」

「もしそうなったら、またよろしくお願いします。あ、集合命令掛かったみたいです。そういうわけで、取り急ぎ失礼します」

「そうか、じゃあ」

そこまで言い終わると、北村は電話を既に切っていた。


 西田がやりとりを終えて電話をポケットに入れると、

「北村からだったみたいだな」

と沢井が聞いてきた。

「ええ。やっぱり北見方面本部はプレッシャー掛かってるみたいです」

「そりゃな、札幌の本部の方も殺人案件数件抱えてる最中だし、結構パニック気味みたいだ、道警全体が」

沢井の言う通り、札幌でも地味に単体の殺人事件が7月末になって立て続けに2件ほど起きていた。5月に稚内であった未解決殺人事件と7月に道南であった未解決殺人事件を含め、道警全体で5件の進行中の殺人案件を抱え、自分達の遠軽の案件も含めると6件、しかも喜多川の件でのスキャンダルも加わったとなると、確実に機能不全に陥りつつあったことは否定出来なかった。規模が大きい札幌の「本社」こと道警本部の刑事部も、遠軽には派遣してないとは言え、さすがに5件も殺人事件を同時に抱えることはそうはなく、派遣要員も限界がある。特に端野の連続強姦殺人は、市民に与える影響度を考慮して、既にかなりの派遣規模になっていたのだから、そこにこのスキャンダルで更に追い打ちとなると、手一杯になっていることは想像に難くない。


「仕方ないですね。ということは、こちらもしばらくは余程のことが起きない限り、自分達で何とかするしかないということでもあるわけですか……」

西田のある種の諦観に、沢井もまた、

「ということで、ある意味それを楽しむことになるぞ、これからしばらくは」

と、言い回しとは真逆の意味の覚悟の言葉を口にした。


※※※※※※※


 課長と小村が休んだ8月13日は、翌日の現場再捜索に備え、準備に一日費やした強行犯係の捜査員達。鑑識との打ち合わせも済ませ、夕方には準備万端整った。捜査へ英気を養うことも兼ね、吉村が小料理居酒屋「勇泉」で飲むことを提案した。西田としては札幌へ往復分の旅費も、心ならずも浮いたこともあり、奢ることに財布の心配もなかったので、それを喜んで受け入れた。そして西田、竹下、吉村、大場、黒須、澤田の6人で繰り出すことになった。


 前回同様、吉村が先陣を切って暖簾をくぐると、年の割に目鼻立ちの整った大将がこれまた前回同様、

「お、かなり久しぶりだなよっちゃん!」

と喜色満面で威勢のよい声をあげた。

「俺と大場だけなら、2週間前ぐらいにも来たじゃねえか!」

他のメンバーを招き入れつつ、やんわり訂正した吉村に、

「2週間も来ないんじゃ、十分久しぶりだろ?」

と少々不満な口ぶりだった。ただ、すぐに気を取り直し、

「さあさあ、他の皆さんも座った座った!」

と愛想を振りまき、奥のテーブルに一行を案内してくれた。


「取り敢えずビールでいいのかい?」

「係長、それでいいですか?」

吉村に尋ねられた西田は、全員を確認すると、

「特に異論もないみたいだから、それでお願いしますよ」

と大将に告げた。

「あいよ。じゃあついでに大瓶一本サービスね」


 今日は大将のカミさんかパートかわからないが、中年の女性が一人居て、その女が冷蔵庫からビールを7本つかみ出していた。西田は小さい振りで女性を指さし、小指を立てて吉村に確認すると、手を振って否定して、

「あれ近くのおばちゃんです。忙しい時に手伝ってる人。大将の奥さんは身体も弱いんで、手伝うのはかなり前に止めてるみたいです。俺が来始めた頃には既に見なかったけど、古くからの常連さんがそう言ってました。ああ、勿論カミさん以外にオンナは居ませんよ」

と西田に耳打した。


 その後は前回来た時に食べておいしかった品や、大将のお勧め、紋別産ズワイガニを堪能した。北海道であれば、毛ガニ、花咲ガニ、タラバガニがメインで、ズワイガニと来れば本州日本海側のイメージだったが、紋別のズワイを好む人も地元には居るという知識を大将から得て、それに十分納得出来る程の美味だった。ただ、最近は地場モノよりも、ロシア船による輸入モノが多いという話も聞いた。大将は地場モノを厳選して入れていると胸を張ってもいた。ただ、そう言った後、「実は味の差は俺にもよくわからん」とおどけて見せたのは、まさに大将の人柄が出ているように思えた。


「明日の現場捜索はあんまり暑くなりそうもなくて、とても助かりますよ」

宴もたけなわになり、竹下が仕事の話を振ってきた。少々浮かれ気分だった西田も、一瞬にしてその一言で現実に引き戻され、内心文句も言いたくなったが、まあそういうところが竹下の良さでもある。

「そうだな。ただ、あそこは森の中だから、気温が高くても案外ひんやりしてる」

と返すにとどめた。

「昼過ぎからでしたよね?」

続けて大場が開始時間を確認した。

「あちらさんがそう希望してる」

西田が今日、生田原に着いた寺川に電話で確認すると、そういう要求だったので、当初午前からのつもりだったが予定は変更になっていた。


「じゃあ明日は割とゆっくり出来るな。朝から忙しいよりはマシか。でもそうなると、初日で何かわからない限りは、最低でも2日はやらないと捜索は完了しないでしょ?」

吉村が出来上がって紅潮した顔を見せながら西田に問う。

「それはそうだ。取り敢えず木を切る時だけは、確実に地主に立ち会ってもらわないといけないから。それが終われば、許可取ってある以上その後の捜査に支障はない。場合によっては合計5日ぐらい現場に通うことになるかもしれんぞ。人数も掛けられないしな。それはそうと、酒はそんぐらいにしとけよ。二日酔いで仕事にならんなんてのは言い訳にならんからな」

西田は気が緩みがちな部下に釘を差した。


 そんな様子を見ていた大将が、

「明日大事な仕事みたいだな。どうだ、景気付けにこれで一杯やって締めたら?」

と言った。手には「越後紅梅」の一升瓶が握られていた。

「越後紅梅か。こりゃ希少な銘酒だね!」

西田は一気に上機嫌になった。

「しかも特撰大吟醸だぞ。年に限定500本だからそうそう手に入らん。旭川の問屋に入ったので特別に卸してもらった。値段は言いたくないが、3万だ3万! あんた方もこれはさすがに飲んだこと無いべ? 一杯ずつ分だけなら特別にタダでサービスしてやるよ!」

大将はそう言うと、一升瓶をテーブルに置き、棚から小箱を2つ丁重に取り出し、中から猪口ちょこを複数取り出した。

「何それ? いつものと違うね」

吉村が聞くと、

「聞いて驚くなよ。あの北大路魯山人の作った猪口だ!」

と大将は誇らしげに猪口の1つを掲げた。

「北大路魯山人? ああ、『美味しんぼ』の海原雄山みたいな人でしたっけ?」

大場が口を挟んだ。

「そうそう。美食家の頂点と言われる偉人だ。俺の料理人として修行してたとこの板長が、この人の信奉者でよ。その関係で俺も影響を受けた人なんだわ。美食家だけじゃなく、陶芸家としても評価受けてるんだけど、知ってるかい?」

「そっち方面に詳しくはないけど、聞いたことは結構あるね」

西田は大将から猪口を受け取りながら、目の前で回しつつ眺めた。

「俺もここ数年、魯山人の陶器を少しずつ集めてるんだ。どうだ、これで越後紅梅飲んだら、明日への力が湧くんじゃないべか?」

「そんなに大事にしてるもんで俺たちが飲んでもいいのかな?」

吉村が少々気後れしたような発言をしたが、大将は

「絶対に落として割るんじゃないぞ!」

と豪快に笑い飛ばした。


「じゃあ遠慮無く、これで飲ませてもらうとするか!」

西田はそう部下に促すと、大将も含めて、皆で「静かに」猪口を合わせた。そしてチョビチョビと銘酒を名残惜しそうに口にして、銘酒を心ゆくまで味わった。稀代の美食家が酒に合うように、信念を持って追求した上で自作した猪口で最高の酒を飲むことは、実際の酒の味云々以前に、雰囲気だけで十分酔いしれることが出来るものだった。そしてその一杯を最後に、酒を飲むのは打ち止めにして、締めの雑炊をかき込んだ6人は、明日に備えて帰宅した。


※※※※※※※


 8月14日月曜、いよいよ生田原の現場再捜索の日となった。天気も良く、予報通りの気温もそう高くない絶好の天候だった。捜索は寺島側の都合で午後からの予定だったが、午前10時頃、沢井課長は電話で寺島と最後の打ち合わせをした。寺島は今日伐採を手伝ってくれる、幼なじみの横山一平の家に13日より逗留していた。実家は寺川の父母が亡くなった後、誰も居住しなくなったため取り壊していたからだ。


「……じゃあこちらから迎えに行きますので。13時前にはそちらに着くと思います。よろしくお願いします」

沢井はそう言うと電話を切った。


「西田、昨日の時点で生田原の丸山の方には連絡しておいたんだよな?」

「勿論ですよ。駐在所まで自分と課長が行って、そこから横山さんの家まで先導してくれる手はずです。ただ、最終的な確認の為に、こっちを出る前には電話してくれと言われてますんで」

「わかった……。後、なんか坊さんも寺川さんに同行するらしいぞ」

「坊さん?」

「寺川さんところの菩提寺の住職の、ほら、うちの署の協議会員の弘安寺の松野住職。何でも、例のタコ部屋の犠牲者の慰霊式典で読経上げたのが、弘安寺の当時の住職だったって話だ。その縁で毎年慰霊式典のあった9月23日に、今の住職も供養してるんだが、明日の墓参りの件で話しているうちに、寺川さんが今日現場に行くというのを聞いて、付き合うことにしたらしい。米田の供養もしてくれるんだと」

西田はそれを聞いた瞬間、先日の身元不明の3遺体についての捜査資料を読んだ時のことを思い出した。あんな場所にあり、且つ慰霊碑でもある「辺境の墓標」の供養についても、きちんと「岡田一族」から引き継いでいたのだなと感心していた。


「今の松野住職は、当時慰霊式に出た弘安寺の住職とは直接の関係はないようです。慰霊式の出席者の名簿にある、弘安寺の住職名は岡田になってますから」

西田は課長に、さっと引き出しから取り出した冊子を掲げながら言った。

「ああ、それに載ってたか。でも血縁があるかどうかは、ちゃんと聞いてみないとわからんだろ? 苗字が違うのは、母方の親戚が継いでたりすることが絡んでいるかもしれない」

確かに課長の言っていることにも一理ある。

「それもそうですか……。でも折角ですから、冊子これ持っていきますよ。寺川さんの多分オヤジさんでしょうけど、その人も地主として出席してたらしいですから、何か聞いているかもしれない。ああ、そうだ、先日の奥田の爺さんから聞いた、昭和52年の事件か事案。あれで聴取した相手の地主も同じ寺川姓でしたから、寺川さんについでに聞くのも手ですね」

「慰霊式典に出た寺川と、そっちの寺川は同一人物じゃないのか?」

課長の言うことももっともだった。言うまでもなくその確率は高いはずだ。

「ええ、出席していたのはこの出席者のリスト上では洋介、聴取したのは松之介? だったはずです」

「今回来たのが大介だから、名前の感じから行くと、オヤジが洋介、爺さんが松之介っぽいな」

「まあ親子関係じゃなくて、それこそさっきの話じゃないですが、親戚かもしれないですし、そこら辺はなんとも言えないですねえ」

西田は自信無さげに首を傾げた。


「まあ、ここでガタガタ言うより、今日実際に寺川さんに聞いた方が早いな、よく考えたら。ただ、そっちの事件はもう既に時効だし、俺達が追ってる事件とは関係ないんだろ? 余り深入りするなよ。今日も捜索が昼過ぎからだから、あんまり時間がないし」

課長は西田に一旦話の幕引きを促した。西田もドツボに嵌る前にそれをありがたく受け入れることにした。

「とにかくこの冊子と例の事件の捜査資料、念の為、今日持っていくことにしますよ。そんなことを聞いている暇があればの話ですが」

西田はそう言うと、カバンにそれらを仕舞った。

「その塩梅はおまえに任せるが、さっき言ったことはくれぐれも忘れてくれるなよ」

課長は半ば呆れたような口ぶりだった。そして立ち上がると、

「さて、じゃあ今日の予定を最終確認しておくぞ!」

と全員に聞こえるように声を張り上げた。

「今日のこっちを出るのは正午。竹下以下強行犯係と鑑識の松沢、三浦の両名は現場直行。俺と西田は生田原駐在から横山の家に行き、寺川と横山、住職拾って現場に行く。わかったな?」

課長は強行犯のメンバーにそう告げた。


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