無事召喚!?
「あぁ。頼むよアヒル。」
その一言を発した瞬間彼には凄い衝撃と共に大きな変化が起こった。
それは視界や聴覚などの五感が全てシャットアウトし、思考だけが意識の存在を示している。
そうそれはまさに自分の頭の中にいる気分だ。
「どうゆうことだ。」
自らの発した声が自分の中で反響しているのがよくわかる。
そしてその意識の中に直接的にあのアヒルの声が伝わってくる。
「驚いたかい蒼斗くん?これは君の頭の中だよ!今から君をゲームの世界に召喚するにあたっていくつか契約をしなければならない事があるんだ。」
これから予想も出来ない何かが始まるとは思って構えていた蒼斗だが、あまりにも急な事態に混乱している。
「おい。アヒルおまえ何をした!!?」
「今から君の魂を僕たちの箱舟へと転移する。その為にも今僕は君の頭の中へ直接リンクしている。今は混乱するかも知れないけど、とりあえず僕の質問に答えてくれるかい?」
全ての五感をシャットアウトされてる状態なので今自分がどうしてるのかなどは全くわからない。ただわかるのはアヒルの声のみだ。
いくら考えてもなにも答えが出ない蒼斗はアヒルの声に従うしかなかった。
「では蒼斗くん。まずは僕の自己紹介をしよう。僕はメニュー。これからは君のパートナーでもあり君の一部になる存在だ。」
なにも喋らず黙ってる蒼斗。
そんな事はお構いなしに話を続けるメニュー。
「まぁ簡単に説明するとナビゲーションバーみたいな存在だよ。これから君をファンタジーの世界に召喚するんだから色々とわからない事も沢山あるでしょ?」
そんな事はどうでもよかった。今彼が心配なのはこれが現実かどうかである。
さすがに現実にしては有り得ない事だらけだ。こんな事態疑わないはずもない。
そんな事を考えながら沈黙していた蒼斗だが、メニューは悟っていた。
「蒼斗くん。何度も言わせないでくれ僕は君の頭に直接リンクしている。簡単に言えば君の脳内に干渉している。君の考えてる事は全て伝わってくる。」
はぁ。とため息をつくメニュー。
「なら早いとこ契約進めますか。今まさに君が体験してる外部からの脳内干渉システム。これを認めた上で僕と契約してもらえますか?」
『脳内干渉システム!?なんだそれ!?』
決して声に出すことなく頭の中で思っただけなのにメニューには伝わってる。
「だから今体験してるこれだよ。一応プライバシーのナンチャラってやつでこれに承認してくれないと召喚は出来ないのさ。」
少しふてくされ気味に訴えるメニューに蒼斗はやっと反応した。
「もし、これを承認しなかったら俺はどうなる?」
少し怯えながらも冷静に質問する。
「そんなのこのやりとりが全て無かった事にして記憶を削除するまでだけど?」
そんなの当たり前でしょと言わんばかりの口調である。
「そうか。チャンスは一度だけなのか。」
少し考え込む蒼斗。
「そうだね。簡単に言うと今承認しなければ今まで通りの人生。承認すれば新しい人生の幕開けだね。」
『そ、そんなの…承認するしかねぇだろぉー』
「よし!しょうに…」
「ありがとう蒼斗くん!!!これより君を新しい世界に召喚するよ!!!」
メニューの言葉と同時に激しい輝きによって視界は真っ白の輝きでいっぱいになった。
___箱庭第一の島アルカティア。
真っ白の輝きから一転、蒼斗の視界は真っ青の青空へと変わった。
そして少し強くも思える風の感覚。
よく見てみれば蒼斗は今なかなかと発展の進んだ近未来的な建物が密集している島の遥か上空を凄いスピードで落下していた。
本人は自分が落下している事に気付きながらも感動と喜びを隠しきれずにいた。
「うぉーーー!!?まぢかよ!?これが俺の夢みた世界なのか!?やべぇ夢じゃねぇーぞーーー!!」
目をキラキラさせ両手を広げて自由落下する蒼斗。
島の中心にある大きな城下町に着陸…墜落?まであと200mって所だろうか。それでも蒼斗の興奮は抑えきれなかった。
「さーて!俺のヒロインは何処だーーーっ!!!!?」
などと吠えながら街の一画に無事墜落…。
地面に穴が開くとか地面に突き刺さるとかそうゆう事は無かったが割とダイナミックに大きな砂埃を巻き起こしての召喚であった。
周囲にいた人々は彼が落下してきたのを少し驚いてはいたが、人々は蒼斗にとても冷ややかな視線を向け、すぐ立ち去ってゆく。
墜落の衝撃で少し気を失っていた蒼斗は意識が戻ったのか砂埃を払いながらゆっくりと立ち上がる。
そして辺りをキョロキョロと見回した。
しかし誰一人として蒼斗と目を合わせようとしない。
そのアウェイ感に耐えられず呟いた。
「あれ?もしかして、歓迎されてない!?」
「いや、そんなはずはないけど…」
急に頭の中に直接入ってくる声。
そうかそういやさっきメニューと契約したのか…。
「おい。アヒルどうなっている?」
少し気まずそうに答えるメニュー。
「い、いや、その、君の容姿が問題なのでは……?」
そう言われて慌てて目の前にある大きなガラス張りの店舗の反射で自分の容姿を確認する。
そこに映っていたのは上下スウェットそれも毛玉だらけ。それに穴の空いた靴下に便所サンダルで髭ボーボーの寝癖頭のダサいメガネのいつも通りの自分だった。
「なーんだよ。いつもの俺じゃねぇか。」
少しホッとする蒼斗。こんな街中にそんな格好でいたら普通おかしいと思う所だがどうやら彼はそんなのお構い無しの様子。だからメニューは敢えて突っ込まなかった。
「それよりさ、何処だよ俺のヒロイン!!」
目をキラキラさせている蒼斗に対し冷静なメニュー。
『それはともあれまずは、第一の島、アルカティアにようこそ蒼斗くん!君は無事に僕達の箱舟の世界へと召喚されたよ。よってこれから先、分からぬ事があれば僕に聞いてくれるといい!』
「あーそうだなぁ…。まず何をすればいい?」
自分で考える気0かよ。とは思いつつも初めなら仕方ないかと思い、細かく説明を始めるメニュー。
『まずは、僕の機能から説明しよう。僕の具体的な機能は3つある。一つ、君を中心とした半径500m以内のマップの表示。2つ、アイテムやスキルなどの管理。3つ、その他プレイヤーアシスト。である。』
ふむふむと珍しく真面目に聞いている。
「それってどうやって表示するんだ?」
そして珍しく真面目な質問。
『基本的にマップは常に表示しているよ!ほら、今マップを見ようとしてごらん。』
だからそのマップはどこにあるんだよ。なんて思った途端頭の中に直接映っていた。
「うぉーー。なんだこれ!??すげーー!!」
『僕はマップをデータ化させて君の脳内に直接送ってるのさ。それ以外の機能を使うにはいつものように僕を呼び出してくれれば可能だよ!』
「なるほどな。なんとなくはわかった。それでさ、この世界には魔物とか居るのか?」
あえて恐る恐る質問する蒼斗にメニューはだるそうに説明した。
『もちろん居るよ。そっか。本来ならもっと細かな説明や、希望を聞いてから召喚だったけど、あまりにも馬鹿だったから省略したんだっけ。』
「はぁ!?てめーぶっ殺すぞ!!」
青筋を立てて怒る蒼斗だが、端から見ればただ一人で怒ってる危ない奴にしか見えていない。
それもそのはずメニューは蒼斗の脳内干渉システムであり、そこに物体として存在していない。それに声も蒼斗以外には聞こえないからだ。
『蒼斗くん。前から言ってるけど、君の心の声は全て聞こえてる。つまりわざわざ君が声を出さなくとも僕には聞こえるシステムなのだが…それじゃ周りから見れば独り言だよ?』
冷静に忠告したつもりだったが、それが逆に不機嫌にさせたらしい。
「うっせーぇな。しるかそんなもん。」
言われもまだ声を出している蒼斗。
『じゃぁ本題に入るよ。まずここの世界にはいくつかの島がある。島と言っても海を渡れば外に出れる訳ではないんだけど、それは追々説明するとして、その島を冒険するファンタジーRPGみたいものだね!もちろん魔物も居るし、魔法もある。そしてストーリーを進めれば出会いもあるし、色々な島へと渡れる。だけど、一つ注意してもらいたいのはこれはゲームじゃない。つまり君の人生そのものだ。』
とここで一呼吸おく。
「どうゆう意味だ!?」
『簡単な事さ、これはゲームのようにストーリーが決まってる訳ではなく、君の身の振り次第で今後先が決まると言うことさ。つまりは魔物も居るし魔法もある世界で好きなように生活してもいいと言うスペシャルボーナスみたいなものだよ!』
「つまりは、俺がこの物語のストーリーを創れると言うのかっ!うぉーすげぇ。まぢやべぇ。」
浮かれる蒼斗の注意を促そうとわざとらしく咳払いをする。
『でもそれって今までと住んでた場所が変わるってただそれだけの事であって、君が勇者となって姫を守るって事が確約された訳ではないから注意して欲しい。だけど、それも君次第だよ。』
少し言いよどむ蒼斗。
「まぁでもヒロイン見つけなきゃ俺ココ来た意味ねぇし…」
『まぁ。そのための僕なのだけどね!』
落ち込む蒼斗にメニューは明るい声で今後の方針を告げる。
『君は勇者になりたい。それは本心かい?』
「あたりめーだろ!俺は勇者となって美しい姫と…」
ニヤニヤが止まらない蒼斗。
『だったらまずは武器が必要なのではないか?』
「おぉ!そうだよな!忘れてたぜ!でもどうすれば…」
『安心してくれ!ここは召喚記念として僕が君の望む武器を一つ差し上げようではないかっ!』
「本当か!?えーなんでもいいのか??」
落ち込んだりアガったり随分大荒れの感情の持ち主だなと思いつつも明るく振る舞うメニュー。
「実在するものでも実在しないものでも君が想像した物を創造して見せよう!」
少しドヤ気味のメニュー。決してそんなうまい事言った訳でもない。
「じゃあやっぱりアレかなぁ…」
少し気まずそうに武器を考える。
「よし!決めたぞアヒル!!」
脳内干渉しているメニューだが、彼の想像した武器を見て少し悩んだ。これは一体なんだ!?これが武器なのか!?
「おいどうしたアヒル!?早くそれを俺によこせっ!」
『こ、これは一体どんな武器なんだい?』
少し困ってるメニューに蒼斗は今世紀最大のにやけ顔をした。
「まぁ。黙って出しな!すぐ見せてやるからよ!」
そういって突然、蒼斗の目の前に黄金の輝きが生まれた。




